02 

 あっ。あっ。あれは、五条さん……!
 野薔薇ちゃんさんを張ろうとマルキューにでも行こうかな、と渋谷をうろついていたところ。

 今日は一人なんですか。夏油さんはどうしたんですか。あ、ドラマの撮影かも。
 私は黙って五条さんをストーキングする。一体どこへ…?

 すると彼は程なくして高級眼鏡屋さんへ入って行った。こ、こんなところに高級眼鏡店が…。私は人混みに溶け込みながら、待ち合わせのふりをしてその場にとどまる。って五条さん直ぐ出てきちゃった。ん、んん?こっちへ近づいてきている。

「何でそのまま追いかけてこないの。待ってたのに」
「えっ……」
「僕の新しいサングラス選んでくれない?」

 えっえっえっ。五条さんに手を繋がれ、引き摺られるように眼鏡ショップへ足を踏み入れた。ひぃっ緊張する。店員さんたちがやばい。五条さんお得意様?知らなかった。
 私、ドレスコードとか大丈夫だろうか。今度から自分の服装にも気を付けよう。今日はアンパンを齧っているところじゃなくて良かったっちゃ良かったけど、な、何でこんなことに。

 五条さんはサングラスコーナーで、「どれがいいかな」サングラスを見ていく。ふと彼はスクエアのサングラスを手に取って、今かけてる丸いフレームのと、かけかえた。「どう、似合う?」高級店、て、店内、店内、撮影禁止…?

「と、とって、いいですか…」
「どーぞ」

 カシャ。尊い。尊すぎる。
 カバンから出したガチ勢なカメラに、店員さんたちがドン引きしているオーラを感じ取っているが構うものか。童は満足じゃ。
 手で顔を覆って余韻に浸っていると、触れられて顔を覗き込まれた。言わずもがな、私の手に触れている、大きくて節々がしっかりしている、男らしい指は、五条さんのもので。「お前もかけてみせてよ」カシャ。「あ、今撮ったでしょ。許可してないよ」駄目なヤツ。駄目なヤツ。駄目なヤツ。これ絶対彼女目線から撮れたやつだ。ごめんなさい私この写真で世界滅ぼしちゃうかもしれない。「俺がお前にだけ見せる顔はさ、撮んないでよ。売ったら分かってるよね?」世界幸せに、幸せに、幸せに出来ない。五条さんは、色んな女の人に、こう言っているだろうに、写真が出回らないあたり、やばい。みんな多分、ガチ恋。みんな多分、色んな人に言っているのを分かりながら、この顔に負けている。絶対そう。
 五条さんがずっと見詰めてくるから、どうにか頷くと、す、っとサングラスを耳にかけられた。間接キスならぬ関節サングラス。五条さんの青い瞳から目が反らせない。視界がサングラスで陰っても、推しは依然と輝いている。

「んー、メガネかけても可愛いけど、ない方が好きだな、ちゃん」
「ありがとうございます。メガネかけて過ごします。視界がちょっと暗くなっていいかもですサングラス。これいくらで――っひえ」値段の桁おかしい。
「欲しいの?僕はこっちのが似合うと思うけど」
「やっ、もう、やめてください、かけません、こわい、」
「うん。かけなくていいよ。だってかけてると、触りにくいからさ」

 五条さんの裸眼に見詰めらていると、髪を掬われて耳にかけられた。えぐい。えぐい、死ぬ、過呼吸になりそう。その目に吸い込まれて天地が分からなくなりそう。

「それで、このサングラスどうしよっか」
「かっ、か、買わせてください。凄く似合ってたので」
「財布扱いしてねーよ。あ、これくださーい。彼女が似合ってるって言ってくれたんで。――いい、ちゃん。もう一回確認するけど、一枚目の写真で世間を賑わせてよ?二枚目撮ったやつは僕らだけの秘密だよ。売っちゃだめだからね」

 はい。頷いた。いい子って頭を撫でられた。ど、ど、どうしたら。これは、これは、存在しない記憶?目から鼻から耳から感覚から全てから破壊される。うう、苦しい。全部いい。

 「どう、似合う?」 

 最高でした。