先生」

 2100年、、昼休み、中庭、晴れ。

「こんにちは。面倒くさい子さん」
「狡噛です。一年です。いい加減覚えてください」

 今日も同じベンチでパンを頬張ってらっしゃる先生が、今まで話していた男子生徒の退去を促して、隣の席を空けてくれた。

「今日は何の用ですか?分からないことでもあった?」

 人が良い。とうに気付いているだろうに、…さっきの男子だって。…そういう素振りが諦められないと、分からないのだろうか。

「…茶葉もらったんでお裾分けしたかったんです」
「まあ。けれどお返しが思いつきませんから、要りませんよ」

 母さんが、良いところの茶葉をもらった、と騒いでいたから、少し欲しい、と分けてもらった。何日も俺のリュックに詰め込まれたままだったそれを差し出す。

「じゃあ気持ちだけでも受け取ってください」

 母さんの追及をかわすのが大変だったのに、受け取ってはもらえない。

「君、好きな子を作りなさい」
「目の前にいらしてます」
「好きな先生と言われるのは嬉しいわ」
「そうですけど違います」
「人の好物を前に、先生を試すなんて悪い子ですね、狡噛君。こないだのレポート、よくできていましたよ」
「そういう意味でもいいです。もらってください。この件に関して、見返りは求めません。本当です」

 微妙な顔をして嫌味を言っていたのから一転、先生は目をぱちくりさせて、やっとそれを受け取ってくれた。

「ありがとう」

 口角が上がって、目許も、彼女の表情がふわりと緩まった。どきりとして、バレたくなくて、折角また話せる機会だったというのに、俺は校舎へ踵を返した。