ねこじょーさとにゃんモフる

「イテテ、引っ掻かないで、分かったから」

 私は今とてつもない誘惑と戦っている。硝子と傑に呼ばれたから医務室に行くと、傑の腕を引っ掻いて目の前にジャンプして診察台に降りたのは。おすまし顔でちょこん、いや、もふっと、いやどっしりと座っているのは。

「……ネコッ!!!!!」
「既視感あるだろ」
「すごいある」
「そのまさかだよ」
「そんなことある?」
「ある。オオアリ。遺伝子五条。ウケる」

 白い長毛の、ふわっふわの、ねこちゃん。くりっくりの青い瞳、ピンクのお鼻、……だめだかわいすぎる!

「どうしてこんなことに?」
「任務でちょっとね」

 傑は全身傷だらけで前髪も荒れてる。大変そう。

「硝子に見てもらった後に、とりあえずと会わせる前にご飯をあげようと思って自室に抱えて帰ったんだけど、うちのにゃんこちゃんと喧嘩しちゃってね。がもらってあげて」

 大変そう。もらって、もらっていいの? もら、中身五条だけど。中身五条。でも。
 きらきらの瞳で真っ直ぐ私を見詰めてくる五条猫に、目線を合わせようと私も腰をかがめる。
 真正面からおめめをのぞくときらっきらだし首回りも全部がもふっもふだし可愛すぎる。六眼オーラが凄いから中身は絶対五条だ。オーラというか六眼のネコ。最強の猫。やばい。にゃんにゃん。にゃんにゃんにゃん。可愛さも最強。ダメだ中身五条なのに、可愛すぎて耐えられない!!

「だっこ、だっ、だっこ、だっこさせてください……」

 フシャー! されるかな、ニャア゛ー! って咬まれちゃうかな。どきどきしながら腕を広げてみると、五条はとててと腕の中に入ってきてくれた。「大人しいじゃないか……」待って死ねる。待って。やばい。

「ぐ~るぐるぐるぐるぐる」

 スリイ、グリグリグリと私におでこを力いっぱい擦りつけてきた五条が転がってお腹を見せた。うねうねしている。誘ってる。もふもふのお腹の毛にふっさふさのしっぽ。これは絶対誘ってる。お腹もふもふしていいの? 吸っていいの? ネコ吸いしていい? ありがとう。する!!!!!

「ねこじょ…ぉおぅうぅうああああ!!もふもふ!ふわふわ!モフモフ!かわいいぃ~~~」

 すーはー顔をうずめる。ゲシゲシ後ろ足肉球キック!で拒否られている。ぷにぷに肉球。おてて可愛いね。爪を出さないところに情けを感じる。無限使わないところに情けを感じる。ありがとう五条、もふもふかわいいね。五条、猫生謳歌できそうだね。やっぱりねこちゃんって可愛いね。五条でもかわいく思えるね。ねこじょー可愛いね。さとにゃん可愛いね。でもすっごい拒否だね。ごめんね。

「……やだ?」

 ぶんぶんと思い切り首を左右に振られた。可愛い。可愛い。かわいい。

「すぐる~~どうしよう~~」
「可愛すぎて有罪だろ? にゃんこちゃん。ちなみにお腹をいいようにされると後ろ足が出ちゃうのは本能だから、許してあげてね。悪気はないんだよ」
「ううぅ、かわいいよぉ……むり、むりだよ~~中身が五条って分かってるのに、分かってるのに……っねこじょー。さとにゃん……かわいい、かわいい……」
「ぐるんっ」

 お腹を埋めて顔面でモフモフしてたら、くねくねして腹筋使って上体あげた五条に額をくっつけられた。可愛すぎる。すぅう~~と猫を吸う。
 はあぁあ~~と顔を離して息を吐く。ネコ吸いって最高だにゃん。

「分かってやってんだろ」
「悟も喜んでるよ――イテっ」

 硝子が五条の脇腹をつつき、傑も参加したら猫パンチくらってる。五条……。傑にも手加減してあげて。

「にしてもいつ治るだろうな。夏油と乙骨くらいしか特級裁けないだろ? 仕事爆増じゃん?」
「いつも迷惑かけてるのを今こそ返すときだね傑と憂太くん。全部私に任せ――いたたたたい!」

 五条の前足が伸びて来て、猫の爪が激しく身に食い込んだ。痛い! そして牙向かないで! 怖い! でっかい黒目コワカワイイ!

「フシャーッ!!」
「大反対だな」
「しょうがないでしょ五条ねこちゃんなんだから今、いた、いたい!」
「僕が! なんのために! お前の昇級潰してると思ってんだ!!!!!」

 猫じゃない。

「…うわっ

 猫じゃなくなった。五条悟(人)に戻ってしまった。しかも全裸だ。反応が遅れてしまった。

、もらってあげな」
「いらない」
「そんなこと言わずにさ」
「……」

 あぐらをかいて台の上に座っている五条。青い目、太い首、埋もれてる鎖骨、胸筋、ガチガチに割れてるシックスパック、えっちな筋。見慣れている五条の全裸、その中心のモノを昼間から明るい部屋で晒しているのに五条は隠すそぶりも無い。「そんなに凝視しなくても夜にまたじーっくり見せてあげるから。あんまり見ると勃っちゃうから」ね? じゃなくて。滅茶苦茶人間だけど神経が人間じゃない。

「僕のチンコに穴開けるつもり???」
「猫に戻って欲しい」
「チンコ見て言うセリフ?」
「隠して?」
「なんで?」

 硝子からタオルケット、傑から上着、が同時に投げられた。ヒョイヒョイと受け取った五条は「ズボンねーの」「私の履きたいの?」「は? 死にたいの?」「ちょっとした冗談じゃないか。早く上着を着なさい」「着せて」「バブなのか? 君はもう猫じゃないんだよ」「猫に服着せると面白いよね。着てるとこだけみすぼらしくなんの」なんか喧嘩になりそうなので、五条の手から傑の上着を取って袖を入れてあげる。

「なあ。サイズ測っていい?」
「え?」
「いいけど」
「え?」

 何の? とは私も傑も言えてない。硝子は五条の股間を指差している。片手にはいつの間にかメジャーを持っている。傑と硝子を唖然として見てるけど、え、ホントに測んの? 「よろしく」いやなんで私に渡すの?

あとでフルの数値も出しといて。膨張率計算しよーぜ」
「人類びっくりのデータ出るよ?」
「硝子暇なの?」
「気持ちが暇」
「硝子……」

 傑が珍しく頭を抱えている。分かる。硝子クマが凄いので多分何日かまともに寝てないのかもしれない。徹夜の人の世迷言として聞かなかったことにしてあげよう。純粋な探求心から来る知識欲とか言ってはいけない。多分そうなんだけど。多分そうなんだけど違う。私は測らない。傑にメジャーを回した。

「よろしく」
「嫌だよ」

 拒否られた。
 とにかく五条に上着を着せてあげて、前のジッパーをしめないから一番上までしめてやる。もう顔出さなくていいよ。

「測んなら早くして。あとズボンちょうだい」
「ノーパンで履くの?」
「悪い?」
「いいんじゃないかな……」

 五条が上着のジッパーを下げてすぽんっと顔を出す。顔はいい。
 傑と硝子は、タオルケットのかかっている五条の股間部を眺めている。傑はげっそりしている。分かる。

「さとにゃんに戻って欲しいよぉ……」

 咽び泣き始めたら傑に背中をぽんぽんされた。さとにゃん可愛かったよね。ね。あんなに可愛かったのにね。悲しいね。猫同盟結ぼ。