プリンにケチつける五条

 夜、談話室。が傑の任務の金魚のフンした帰りに、二人でプリンを買いに寄ったらしい。ふぅん、と硝子と席についた。にプリンを、傑にスプーンを渡される。
 蓋を開け、底までスプーンで貫いて一口食した俺は固まった。正しくは食す直前視界に映った瞬間に固まったが仕方ないから口に入れた。思っていた通りの衝撃が俺を襲う。

「なにこれ」
「え? プリン」
「嘘つくな。これはプリンじゃねえだろ」
「え、プリンだよ」
「違う」
「悟がまた何か言ってるな……」

 傑が呆れたように俺を鼻で笑ってからプリンみてえなものを食った。

「結構いけるね」
「うまいうまい」

 みんなおかしくなっちまった!

 プリンは硬めがいい、柔らかめがいい、生クリーム多めがいい、バニラビーンズがあった方がいい、賛否両論あるだろう。でも、カラメルがないのはプリンじゃない。それだけは有り有りの有り以外ありえない。常識だろ。そもそも俺にプリンっつーもんを教えたの傑じゃん。俺お前と部屋でプーチンプリン食ったのが人生初プリンだったんだけど何なんだよカラメル無しのプリンはプリンって言わねぇだろこの卵と牛乳が混ざり合い調和してやがるみたいな舌触りなめらかクリーム感も悪くはねぇけど傑が俺に教えたプリンはこうじゃない!

「お前ら何絶賛してんの。こんなんプリンになりそこなったやつじゃん。卵液マイルドに焼いたやつだろ」
「砂糖も入ってるよ。カラメルがあると甘すぎるじゃん」
「殺す」
「プリンの好みが合わなくて友人を殺す五条悟? ダサすぎないか」
「殺す。お前は俺にプーチンプリン教えた責任取れ。カラメルの初志貫徹しろ」
「意味分かんない五条こわ……」
「こんなんプリンになりそこなった卵液焼いたヤツだ改名しろ」

 目をかっぴらいて睨みつけても、硝子と傑とはプリンもどきをぱくぱく食べながら五条ヤベー。そんなにプーチンプリン好きだったのかな。いらないならちょうだいってが伸ばしてきた手を取って普通に握った。

「意味が分からない」
「今からお前プリン屋連れてく。本物のプリン知って。今度からそこの買って来い」
「スーパー行くの? プーチンプリン買う?」
「んなわけねーだろ。あれから俺も大人になってんの。マイルドに卵液焼いたやつの底にちょっと焦げたカラメルが入ってて上から下カラメルの具合で味が違くて色もグラデーションみたくなっててもっとうめえやつに決まってんだろバカ女」
「ウワやだ無理絶対行かない。絶対高い」
「そんなこと言わないで。いってらっしゃい。私はカラメルがあってもなくてもいいよ」
「私はビターなやつ」
「お前らはその卵液焼いたやつでも食ってろ」
「ていうか五条離して私プリン食べれない!」

 が手に持ってる、スプーンぶっ刺さってる卵液焼いたやつの食べかけ、を片手で奪い取って硝子に渡そうとしたら「かえして!!! 私は食べてるの!」涙目で体当たりされた。「あ!」それからは至近距離でひな鳥みたいに口を開ける。
 ……体柔らかかった。手ェ握ってる力強すぎて手の骨折れるとかねーよな? 念のための手を握っている力を少し緩める。すると間髪入れずにが手を離そうとしたから握った。ふざけんな。しかも何でお前俺に餌付けされんの慣れてきてんの頭おかしいだろ口の中見せてんじゃねぇよ。意味分かんねえ。
 赤い舌に目が離せなくなっちまいそうで、口を閉じさせるために俺はプリンもどきに刺さってるスプーンを抜き取り掬いに運んでやる。「ん」……素直に食った。お前それでいいワケ??? ……大人しくもぐもぐしてんの普通に可愛いな。…………クソ。
 小動物みたいな感じ、握ってる手まで急に愛しくなってきて、バレないように強く握り直さないようにしないととか変なところまで気になってきやがった。

「かわいいね」
「本命童貞」
「悟もまあ……うん、可愛いと思うよ」

 うるせえ死ね。
 照れる気持ちを誤魔化すように、彼女が口を閉じているのに次なるプリンもどきを掬って口元に持ってき早くしろと無言の圧で急かす。急いで喉を動かしたが素直にまた口を開けるから「全部入れてやるから口開けてろ。閉じたら鼻に突っ込むぞ」「んん!?」俺はスプーンをプリンもどきとの口に何度も高速移動させた。なんか唸ってるけど聞こえない聞こえない。

「またイジメて……」
「でもプリンって塩入ってるんじゃない? 鼻に入っても詰まるだけでそこまで痛くないかもな」
「やってみる?」
「夏油がか?」

 空になったプリンもどきの瓶を机に置くと二人が睨み合っていた。正しくは傑は笑顔で硝子は真顔の圧。何お前等喧嘩してんの?
 俺は手の届くとこに置いてあった机拭く布巾での口をゴシゴシ拭いてやる。「んんん゛!!」握っている手を離すタイミングは完全に見失っている。なんの縛りプレイ? 普通に非合理的かつ動きにくいのにそわそわ落ち着かなくて悪くない気分で離したくないとか終わってんだろ。だからもうプリンとかどうでもいいけど。だって傑と二人でプリン屋寄って来たとか腹立つし。俺とは行ったことねーじゃん。

「プリン。買い行く」
「早く行けよ」
「いってらっしゃい」
「いってらっしゃい……」

 お前は俺と行くんだけど。
 離して欲しいなあしてる手を逆に強く握りしめ俺は勝手に歩き出した。が諦めて後ろをついてくるのは知ってる。



「えっなにこれ……おいしい……」

 五条に無理矢理引き摺られて行った先のお店のプリンはなんか凄いプリンだ。食べてるとこも凄い。ホテルの上層階、イートイン??? からは綺麗な夜景が見える。なんかプリンだけ食べて帰るのダメなやつじゃない?

「お会計考えたくない」
「払う気あんの?」
「……五条がいきなり連れてくるからお財布ないもん。チョコのも食べようかは、迷ってる、のに」

 くっ……。五条お金貸してって言いたい。言いづらいこの雰囲気。
 五条が店員さんを見ると、店員さんがこちらへやってきた。何この無言の会話。怖いんだけど。なんかもうチョコプリンも食べたいけど食べたら直ぐに帰りたい。でももうちょっと足を休めたい。
 あれから教室出たら、さらりと手を恋人繋ぎされて吃驚して五条の顔と手を分かりやすく五度見したのに、五条は気にせずにスタスタ歩いていってしまうので、私は足が縺れないようにするのに必死だったのだ。補助監督たちの部屋をバーン!て開けた五条は車出してと一言言ってた。気が触れてると思った。でも俺様何様五条様のその一言で車でてくるんだから五条家ってやっぱりやばいんだなってことを再認識した。帰りはタクシーで帰ろうねお会計は私が持つからねって言えるような大人になりたい。ふざけるな。大人になっても五条と一緒にいるとか考えたくない。これからあと何回いじめられるんだろう? 510万回くらい? 速く逃れなければ。ていうか五条足が長すぎる自覚をもっと持って欲しい毎回毎回。私、足ちぎれる。今だって座っててもかなり見上げる五条の身長は気が狂ってる身長おかしい。ムカついてたらスッと音もなく目の前の机にプリンが現れた。

「……これもカラメル入ってる」
「味違うけどまあまあいけんぜ」

 五条のまあまあって何? なんでもかんでもまあまあってつける病気にかかってるんだな。それなら仕方ない。私は五条と違うので私にとってこのプリンは、とても・おいしい。



 あれからはいじめられることもなく、大分普通にとても・おいしいプリンを振る舞われてゆっくりして帰った。よく分かんないけど機嫌良さそうだった五条はちゃんと二人に「何されるか分かんねーから」なんて言いながらもお土産のプリンを買っていってくれたし、帰りはタクシーだった。五条すごい(経済力が)!