ゲームする五条
「また勝ったー!!」
五条弱いね!なんてキラキラした目でウッキウキ子供顔負けの純粋さで無邪気に俺の隣でコントローラー握ってるバカ女。え、俺本気出してないけど? 本気出してないけど? そんな相手に勝って嬉しい? 嬉しいよなお子ちゃまだもんな。マジで集中なんて出来るわけねーだろ。だってラブボだぜ? ここ。ラブホ。バリッバリのラブホ。
遡ること数時間前、補助監督が宿を取り忘れてたミスが発覚した。何県か跨いだ先、つまり多少遠方だ。任務中にケータイが鳴ってその旨を告げられた時は携帯をグシャッとやりそうになった代わりに「あ゛?」と声には出つつ呪霊を一瞬で無きものにしていた。夜蛾センに蹴り出されて俺の任務の見学という名の金魚の糞をしていたのポカンとした表情を今でも覚えている。
街に繰り出すも、俺らに祝日なんてあるようでねーような学生だからとほんの少しはあるような――一般人はゴールデンウィークとかいう大型連休を過ごしているらしい――今日この頃。飲食店に入るのにも苦労する始末で、勿論どこもかしこもホテルはいっばい。ポケットマネーで取るかと思ったけど、そもそも部屋が空いてないんじゃどうしようもない。うちの権力使ってどうにかすんのは簡単だけど、どうすっかなと白目を剥きかけた俺に一言、「ここ泊まらない? 楽しそう!」。
「お前この建物が何か知ってんの?」
「ラブホってやつでしょ?」
とりあえず空室が無いかだけ見てみようよ。グイグイ腕を引っ張られこんなとこで一人にしても入れ食いだろうしさっきからナンパ野郎がチラチラ見てきていなくもないので渋々について行くと、彼女を眺めていた男たちが物凄い顔になった。ざまあみろ。「あっほら空いてる!最後の一室だ良かった~!私入ったことないんだよね!今度硝子と行こうって話してたの!お風呂が大きくて、光って、ジャグジー出て、しかもお風呂でテレビ見れてベッドが大きくて物凄い転がれてカラオケもあってゲーム機があるんでしょ!?大画面で映画も見れて、それでそれで」と目を輝かせるは行こうよ行こうよと無邪気な瞳で部屋のボタンを押した。マジで舐めてんのかふざけんな。ツイてんのかツイてないのか無人ロビーじゃんココ。
うきうき直行するを、部屋入った瞬間壁ドンして「ここが何するとこが分かってんの?」「あれでしょ、セから始まる4文字」「知ってんのかよ。……なら俺とお前は?男と女だけど?いいの?こんなとこ俺と入っちゃって」「何も問題ないでしょ?五条だもん」。
待って、それどういう意味。
俺の腕の下をくぐって見事に逃亡し、靴を脱ぎ部屋に上がった彼女が一言。
「私の顔嫌いだから欲情しないよ」
はっ倒すぞと思った。俺は乱暴に靴を脱ぎ散らかしをベッドに放り投げようと「わーーっすごいゲーム機いっぱいある!!!」トラクエもファンタジーファイナルも揃ってるー!!五条どっちが好き?ファンファイに決まってんだろ。そんな気がしてた!!
かーらーの、マリガーをやってるっつーわけ。なんでこーなってんの。点っっっで理解できねーんだけど。
「ねえ、もっかい言うけど、お前ここが何するとこか知ってんの?」
「だから、あれでしょ。せっ……」
「クス。俺に犯されてもいいってこと?」
「え?」
「俺のちん「わ」をお前に突っ込んでいいのかって聞いてんだよ」
「え……。五条私に欲情しなくない? っあ、」
「……別に。するけど」
「えっ……そうなの?」
宇宙猫みたいな顔して聞き直してくんな。するよ? バリクソするよ? なんなら今してるんだけど? お前がゲームにアウアウ言ってる今の声が喘ぎ声にしか聞こえてないし画面内に落ちてるバナナの皮もなんか卑猥なモンに見える幻覚見てるからマジでやめた方がいいよ。「あっやだ甲羅投げないで! ひ!」喘ぐんじゃねえよ。「ねえ五条っあ、ちょ、死に過ぎじゃない? 大丈夫?」全然大丈夫じゃねーから。
は俺がコントローラーなんか放り出して彼女を凝視しているのに気づいていない。横顔はきっちりテレビ画面を見つめている。あって言ってビクリと肩が震えて眉尻を下げる。マジでいい加減にしろよ。滅茶苦茶犯したい。なんならもう脳内で何回犯したと思ってんだよブチ犯すぞ。どう言ったらイイ感じにそういうカンジになれんだろ。
「……普通に男だから勃つつってんだよ生理現象にはさすがの俺も抗えねーわけ」
「あっ、あっ! そうなんだ男性って大変だね!! あ~~!!」
揃ってレインポーなロードの宇宙に落ちた。もーいい勝手に走ってろ。魂抜けてっけど。俺はリアルに忙しい。
「っは? ごじょ、」
のコントローラーを奪い取って顔をこちらへ無理やり向ける。指がうずまる頬が柔らかで胸の辺りが温かくなって情緒が壊れかける。むすっとした顔で何?って睨んでくるのも可愛いけど、もっと笑えよ。好き、付き合って、お前の全部俺にちょーだい、これからもずっとお前の隣にいんの俺だし、どこの誰にも余所見すんな。だからお前今から俺の彼女な、って言ったらどうなんのかな。「五条?」段々とぱちぱち瞬きしてアホなヨウムかなんかみたいに首傾げてきてんの、脈無し過ぎてヤベーだろ。このシチュエーションで心臓早鐘うたねー女なんかいんの? 新人類すぎね?
「……お前、ドキドキとかしねぇの?」
「え、」
少し顔を近付けて目を覗き込むと、の瞳孔がカッて開いて、頬に少し赤みが指していく。え? なに? 言えば自覚する系? え?
「し、してるよ? いつも。その、五条の前だと」
「え?」
「……次何言われるんだろって。どういじめられるのかな、って。さっきも折角一位だったのにコントローラー取り上げるし。それなのに五条顔はカッコイイから困るんだよ!」
お風呂入ってくる!って、固まってたらしい俺を振り払ってが逃げて行った。
――顔はカッコイイ。あいつ俺の顔カッコイイと思ってんの?
――今初めて親に心の底から感謝したわ。この顔の造形で良かった。いやまあこの顔に生まれいでたの俺だけどまあサンキュー。
顔はカッコイイ。
はあ~~も~~ヤダ。傑。硝子。助けて。悪くなくない? 悪くなくなくない? なんで付き合えてないの? 俺もう分かんねーんだけど。
風呂上がりのを犯さない自信がなかったのでとりあえず傑に電話したが開口一番今忙しいんだけどだった上に、「ヤればいいと思うけど……なんでヤらないの? 実は不能なんじゃないか? 心配した方が良い?」と鼻で笑われクソ腹が立ったので一方的に電話を切った。クソが。なんか最近塩対応過ぎね? 犯さない理由探してんのに犯すの推奨してくんじゃねえよ。そのへんのセフレとはちげーんだよ。ただでさえ好きって分かられてねーのに、今ヤったら最後、は絶対今後俺を受け入れてくれなくなる。ポッケにサイズ合ってるゴム入ってるけど一個しかないしマジで無理。クソが。
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