五条が電話してくる
着信音に目が開くのと、心臓が嫌な音を立て始めるのは同時だった。慌てて手に取った画面には五条と表示されている。スライドして直ぐ電話を取った。
「五条?」
「やっほー。声聞きたかったから電話しちゃった」
元気そう。緊張感のかけらもない。でも非常事態になったとして五条が真面目になるかと言ったらおそらくノーなので念のため確認したい。でもクソほどどうでもいい理由言われたような気もする。
「……何もないんだよね? 緊急じゃないよね?」
「え? うん。僕が大変な目になるわけなくない?」
ムカつく。
「そういう時はニャインにする約束じゃん!!!」
「いやお前がニャイン出なかったんだよ。僕折角任務終わって風呂も入って時間出来たからお前の声聞きたいなと思ったのにお前また通信切って寝てたでしょ」
「ちょっと待って今通知見るから」
ネット通信入れたらスマホかたまった。
緊急以外の連絡はニャインでかけてね、って私は皆にお願いしている。五条も例外ではない。つまり普通の着信音が鳴ったらそれは何かが誰かがとてつもなくヤバイ状況であって緊急以外の何物でもないということである。だから焦って飛び起きたのにクソ五条。
五条が機内モードじゃないだけ責任感あるよね~こうやって電話したら出てくれるもん!大好きだよ!なんて気味の悪いことを言ってくるのが嫌でも聞こえる(大声だから)。
割といい子を買ったので直ぐに賢くまた動き始めたスマホが言うには通知3桁。え? こわ。私寝てただけじゃん。何回かけてんの? 暇なの?
「ね??? 僕かけたよね、何回も。お前が出なかったんだよ」
「寝てただけだよ悪気ないもん。ねえ五条お願いだから平時に番号に電話しないで。心臓凍りつく。何かあったのかって心臓止まるみたいな私の気持ち考えて欲しいかな……」
「えっそれって僕のこと心配ってことだよね? 僕のこと好きじゃん」
そんなわけあるか。
ツーツー。ムカつくから通話終了した。吊り橋効果みたいなこと言ってるんじゃないよ。
直ぐににゃんにゃんにゃん・にゃんにゃんにゃん・にゃんにゃんにゃん・にゃんにゃんにゃんと猫の鳴き声が音階を奏でるニャイン通話がかかってきたけど、腹立ちすぎて出たくない。二度寝してやる。クソ五条ホントもうやだ。
ガン無視しているとコールが切れた。携帯の着信音が鳴る。ビクっとしてしまった私は悪くないだろう。至極真面目だがこちらを急かしてくる、というか条件反射で吃驚して焦って驚いてはらはらする着信音が鳴る。ホラ吹き小僧を思い出す。絶対大丈夫でしょって思えても、絶対なんてどこにもない。もしこの電話をとらないで、この数秒で五条に何かが起きてて……と思ってしまうと、いやでも電話を取ってしまう。ちくしょーすぎる。私は電話を切って五条にニャインをかけ直した。
「……五条」
「ねー? 僕からのニャイン取ってくれないじゃん。だから僕しょうがなく番号にかけてるんだよ」
「……はあ。いいよ、もう。繋いだまま寝る」
「えーじゃあお前の寝息おかずにして抜こっかな。ほらお前もパンツ脱いで。でも僕優しいから、このままテレセするか僕と健全にお話するか選ばせてあげてもいいよ」
いきなりすぎる。そんなに私と話したいの? 全体的に頭おかしい以外の感想が出ないんだけど。無言でいると、「そんなにテレセが良かった? しょうがないな~」五条がなんか言ってる。「ミュートしてたら今度分かってるよね。僕がどうだったか聞くからね」もうやだこいつ。分かったよミュートしないで寝てればいいんでしょ? そしたら文句出ない気がする。
「おやすみ……」
「精々寝る努力してな。さ、パンツ脱いで……ってまあさっきから全裸だったんだけどね。実は。今ねー、悟選手、扱き始めましたー。あー、きもちい。に聞かれてるってだけでもう勃ってきちゃった♡ 上下にしこしこして、カウパー手に広げて……っふぅ♡ 亀頭手のひらでこすこすするのも、っあ♡ 気持ちいいんだよ♡ お前よくやってくれるよね♡ あー……エッロい手つきで僕のチンコ愛でるお前思い出したらビンビンになってきた♡ のおまんこにぶっ刺したいってガッチガチに反り返ってるチンコ寂しそう泣いちゃいそうだよ♡ まあ確かに泣いてんね、我慢汁出てるし。精子も出るもんな。これがぴえんって感じ?」
ダメだ五条、早くなんとかしないと……。
私はスマホにイヤホンをさして嫌々片耳を入れながら部屋を出て、そそくさ速足でみっつ向こうの部屋のドアをノックした。
「すぐる、すぐるー……」
「どうしたの?」
開かれたドアから顔を出してくれた傑はいつも通り少し身を屈めてる。やさしみを感じる。
「傑……五条が虐める」
「またかい?」
私は傑にもうちょっと屈んでという動作をして、傑の片耳にイヤホンを差し込んだ。
「ッハァハァ♡ 傑じゃん。ビデオ通話にして脱がして実況してよ。お前なら特別にの乳くらい転がしてもいーよ」
ポカンと口を開けた傑が呆れた顔でおいでと手招きをして私を部屋に入れてくれる。優しい。好きになりそう。
イヤホンしてると五条がハァハァ言ってる声が近すぎて嫌すぎるしちょっとゾクゾクくるから私は勢いよくスマホからイヤホンを引き抜いた。部屋の真ん中で五条の発情している声が傑の部屋に広がっていく。シュールすぎる。完全に……の顔だった傑は私の隣にやってくると急にニコリと笑顔になった。
「テレセしてるの? 」
「してない、勝手に始められた感じ」
「顔真っ赤で、可愛いね。……もじもじして、もしかして、もう濡れてたり、とか?」
撤回する。傑も傑だ。全然好きにならない。五条よりはマシだし五条が関わらなきゃ人としては傑は好きでも好きにならない。こんなのが呪術界一のモテ男とかなんか間違ってる。みんな本当の傑を知らないんだ。親しくならないと本性を現さない外面が良い傑。
「ノってんじゃないよ傑。やだもうみんな嫌い。このことは硝子に言いつける」
「、ビデオにしてこっち向いて、あ、ありがと傑。あとの顔映して、はあ、っは、見て、、僕の見える?」
「久しぶりに見たな、悟の勃起物」
「いやん♡ いいから早くの顔映してくんない? 股でもいーけど」
「顔でしょ」
「……」
駄目だこの二人。最低だ。クズだ。最低。もうスマホなんてどうでもいいや、傑が持っててくれたら私は安眠できるね、それじゃ。
「ごめんごめん、行かないで。ちゃんと悟の自慰、見てあげなよ。可哀相だよ、痛いくらいに勃ち上がってるんだ、慰めてあげないの?」
う~ん、クズ。傑は五条より筋肉馬鹿なので、ドアノブを掴んでる腕を掴まれてしまえば抵抗は無駄も無駄。
「どうして逃げようとするの? もしかして、悟のオナニー聞いてるだけでシたくなっちゃうから? 慰めてあげようか」
「いらないよ……」
「え、発情しちゃうのは否定しないのかい」
「してるワケがなくない?」
「本当に?」
うん……。スマホから聞こえてくる五条の声はどんどん耐えるようなものへと変わっていっている。
「あー、も、出そ、、こっち向いて。顔みして、ありがと傑♡ やっほー♡」
傑にぐいっと腕を引かれ体を向き直されるとスマホの画面が嫌でも目に入った。もー、めっちゃそれじゃん。傑はノリノリでニコニコそれを私に見せている。画面には五条の五条が映し出されている……。ホントにヤってたの……。改めて見ると大きすぎて引くレベルな気がする。股間についてるの邪魔そう。他の人の見たことないから詳しくは分かんないけど……。
「ん、っは、あ゛、も、出る。出したい。ビューってお前の顔に、出していい?」
「好きにすれば……」
「イ、っ、~~っあ゛♡♡ っはぁ♡♡ ぁ、っく♡」
うわ、画面真っ白……。
「傑見て、五条の色……」
「スクショでも取っておいたら? 悟の色」
「いらないかな……。あ、でも、髪の色と一緒だったりするのかな」
「ははは」
「ねえお前ら情緒とかねーの?」
息を切らしながらもすっかり冷めた五条の声が聞こえる。ついでに私の眠気も冷めたよ。もうほんと嫌。まあ早々無いだろうしとりあえずスクショはするけど。五条帰ってきたら髪と見比べてみよ。ねえ、と傑が私に距離を寄せた。
「これがいつもの中に注がれてるんだよ。奥にビュービュー叩きつけられてるんでしょ?」
「ひ、」
「もっと言って傑」
五条がカメラを拭いたのか、五条の顔が映し出された。あっやっぱり色似てるかも? 傑のせいでなんか五条の髪にすら身の毛がよだってきて嫌なんだけど。
「どろって重たいこれ、子宮に出されるだけで気持ちいいんだよね? そういう顔してるよ」
どういう顔だよ。
「顔を赤くして、物欲しそうな顔で膝をすり寄せて……。潤んだ目で見上げないでくれ」
してないよ。
「ヤベまた勃ってきた」
「。悟が居なくて寂しいとき、私のも注いであげようか。男は愛がなくてもセックスできるよ。ついでには可愛いし。友人として好ましく思ってるから、余裕でセックスできるよ、私はね。悟とは違う男のことも知っておいて損はないんじゃない?」
傑は無駄にキメ顔をしている。でもホイホイ女性に触る傑の手は一切伸びてこないので悪ノリしてるだけだと思うし悪ノリじゃなかったら困る。まあ五条が止めてくれるだろうけど。傑もそんな顔をしている。
「傑さ~、スんのは全然いいんだけど中出ししたら殺すから。ゴムしてね」
え。
「と、めて、くれないの?」
「え、傑ならよくない?」
沈黙。
私は思ったよりあっさりな五条にぽかんと口を開けることしかできない。なんでそんなこというの。視界の向こうでは傑が口元を引きつらせているのがうっすら分かった。
「悟、泣かしたね」
「え?」
傑がそこで通話を切って、スマホを私に返してくれる。
「悟のことが好きなんでしょ?」
「え……どこが?」
「じゃあなんで泣いてるの?」
泣いてない。はず。多分。希望的観測。現実はぽたぽた流れていくのでなんかおかしい。違う、びっくりしてるだけ。
五条と傑は二人で最強だ。つまり、呪術界は、五条と傑で出来ている。世界も。
「私、五条のものだと思ってた」
「……は悟のものだって自覚があるの?」
例えば。傑とそういうことをしないと出れない領域とかに入れられたらね、まあそれは出来るし。他人レベルの男性なら私は相手を殺して領域を出るけど。だから傑なら極論を言えば全然オーケー。
なんで普段から五条としてるかについては五条が勝手にしてくるからであって、でもまあそういうことだから私は五条のもののひとつである、って。だから、僕のだからやめてとか、なんか、言うんじゃないかって思ってた。
「実質世界は五条と傑、二人のものみたいなものだから。……でも、傑にも抱かれていいって、そんなの、」
五条が他の人とどうにかなるのは気にならない。別に、五条が私に傑と寝てもいいよっていうのは、きっとそういうことかもしれない。思えば、五条と傑、どちらかに属さないといけないことだってないのだ。
でもちょっとくらいどうとか、いやまあ無いっていえば無いけど。釈然としない気分だ。ほんの少しも思われていなかったような。人の事好き勝手にするくせに。やっぱり五条にとって女ってそういう扱いなんだ。
手の中でうるさいスマホの電源を落とす。もう知らない。
「は、自分が悟だけのものじゃなかった、っていうのがショックだったんだ」
「待って? それじゃ私が五条のものになりたがってるみたいに聞こえる」
「うん」
「ありえないかな???」
「じゃあなんで泣いてるの」
「びっくりしたから!」
「開き直ったね」
そういうことじゃないんだけど……ていうか気付かないといけないところから始まるのか……昔の悟も相当だけど今のも相当だよ……恋愛情緒小学生なのか……? まあ悟がの倫理壊したところがあるから何とも言えないところだけど……。ていうか悟うるさいな私にまでかけてくるなよ……。
なんか傑が失礼なことをぶつぶつ言いながらスマホの電源を落としている。
「……あのさ、悟だって一人の女性を愛してるだけの、ただの一人の男なんだよ。それは分かってあげないと」
「えっ……五条好きな人いたの???」
「悟は昔からずっとしか見てないけど……。頭大丈夫?」
「傑の方が頭大丈夫じゃなくない? 好きな人に他の男に抱かれてオッケー! って言う???」
「それは言わないけど……それは間違いなく悟がおかしいんだけど……。それでも、悟はずっとのことが好きなんだよ」
傑がなんか言い聞かせてくる。好きな人に他の男に抱かれてオッケーっていうのがおかしいなら、五条が他の女を抱こうがしょうがないと思ってる私もおかしい???
しょうがないんであってオッケー!じゃないんでしょ?悟のアレはウェルカムぐらいあったよ。
わかる。やっぱり五条おかしくない?
だから悟がおかしいのは今に始まったことじゃないから置いておきな。悟はが好きなんだよ何回説明したらいいんだい。
「そ、それは、私でないべきだもん」
「なら、悟がどこぞの猿のものになっちゃってもいいんだね」
「その人が私や傑にとって猿だったとしても、五条にとっては違うのかもしれないよ」
「そうだよ。だから、君がどう思っていても悟にとってはが唯一無二の女の子なんだ」
論破された気がする。
……すき、って。嘘でしょ。好きな子虐める?虐めなくない?
「うわ、その顔悟に見せてやりたいよ」
「やだ。ていうか、他の人としてもいいよっていう人はまずやだ。五条が五条じゃなかったら、私が五条の好みの顔だったら、一緒にいたかもは、分かんないけど」
「そのあたりは悟が悪いから擁護しないよ、安心して」
もしも五条が本当に私を好きだったとして、五条よく顔が好みじゃないどころか嫌いな人を好きになるね? 普通に五条理解できないポイントが上がりしかしない。まあ五条が私を好きとかそんなわけはないと思うのでアレだけど。五条理解できないポイントは常に高いからそっちもまあ、うん。
「落ち着いた?」
「えっと……うん……多分……?」
「良かったよ。それじゃあね。悟とよく話し合うんだよ」
そう言って傑は私を部屋から出した。
悟とよく話し合う? 何を?
思考停止したまま自室に戻ってベッドにダイブして、でもとりあえず私は考えた。考えたけど大事なのは事実でしょ? 五条もよく言ってるじゃん大切なのは結果だよ。とりあえず今日の事実何?って考えたらさ。
傑に何か色々言われたけど、五条が私にひどいことしたのだけが事実な気がするんだけど?
コレ全然気のせいじゃないよね? 腹立ってきた。なんか謎に普通に傷ついた自分がいるのにも腹が立ってきた。
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