五条と相合傘させられる
「お疲れサマンサー!」
任務、無事に呪霊を祓い終え帳に触れると、目の前に現れたのは傘を差している五条だった。
なんでいるの?
ぽかーんとしていると、「濡れるよ」と五条に抱き寄せられた。なるほど?
ワンチャン!の期待を込めて傘の取っ手に手を伸ばす。「え、持たなくていいよ。身長考えなよ。僕の頭傘から突き出ちゃうよ? あ、もしかして手、繋ぎたかった? それは今度晴れの日のデートでしよ」捲し立てられたし全然違った。全然私に傘をくれるとかの意じゃなかったしテンション高すぎどうしたの。
「僕の任務場所も近かったからさ~! 来ちゃった♡ このまま相合傘デートして帰ろ」
ああ。確かにそうだった気がする、五条の任務場所近かったかも。まあこんなに早くに任務が終わることも五条は中々ないだろうし、ここに五条がいる訳にも、彼がハイテンションなのにも納得した。でも一番の問題はそこじゃない。
――この雨の中、傘を持ってきてくれたわけでもなければ、そもそも五条、補助監督を帰した説ある。極めつけにはこの雨の中デートする? って何??? まずデートしない。あと五条に傘は必要ないとはいえ、大柄にも大柄すぎる五条と一つの傘に入るなんて無理も無理。
私の話を聞かずどこへ向かっているんだか分からないけど、どうせ五条の革靴には雨粒一つついて……いる!? 濡れたアスファルトに靴が落ちるチャプチャプとした音もしな、……している!?
「っどうしたの五条、呪力使い切っちゃったの?」
「え? 全然」
「じゃあ熱ある? 大丈夫??」
「え、何、心配してくれてんの可愛いけど全然元気だよ僕?」
「じゃ、じゃあ、なんで、無限、その、……濡れてるの」
「え。だって不自然でしょ。濡れてなかったら」
?????
「ワケ分かんないって顔してんね。ウケる」
「ウケない。分かんないから」
分かんな過ぎて歩みが止まって雨粒が空から落ちてきた。ワッてなったら五条がすかさず一歩戻って来て私の手を取り、自身の腕に組ませようとしている。
「ほらほら入って、。置いてくよ」
「えっ、え、や、ね、ねえなんで? やだ入らない」
「お前、女のコと二人で歩いてる僕を群衆の目線で殺したいわけ?」
かなり頑張って抵抗したけど駄目だった、負けた。無駄な抵抗だった。傘に入る入らないは言うまでもない。五条の馬鹿力に勝てず、観念して五条が傘を持っている手にされるがまま腕を回す。どう考えても当たってるんだけど、斜め上に見上げる五条はいつも通り♪な顔をして普通に歩き出すから、わざとなのかなんなのか分からない。ていうか、
「……どこ行くの?」
「どこでもいーよ。行きたいとこある?」
「うん。まずそこのコンビニで傘買っていい?」
「なんでだよ」こわい。
「……じゃあ分かった、傘は買わないからお願い」
「ムリ。信用できない」
「ほんとに。傘買ってきたら怒っていいから。絶対買わないから」
「バーカ僕も一緒に入店しまーす」
「うっざ……」
でもいいもんね。コンビニに入れてもらえればこっちのものだ。五条が特段お店を予約しているとかそういうのじゃないなら、私にだって考えがある。このデート紛いの街歩きを早急に切り上げさせる算段が。
五条が後ろで傘を丁寧にたたむのを待ってから、私はアイス売り場に直行した。
「え、なんでアイス買うのわざわざ」
「五条も糖分補給必要だろうし、一緒に食べようと思って。食べない?」
「今度食べよ。今日はゆっくり帰りたいから却下。糖分補給ならチョコとか乾物なんかでいいよ」
「やだ。早く帰ろ。雨でいつもよりは気温低いからアイスは持ち帰りやすいよ多分。乾物は湿気るだろうけどね」
「勝ち誇った顔して言うな。しかも前半と後半矛盾してんだけど。間違いなく前半が本音だろ」
「傘買うお金浮いたし五条に糖分補給してもらいたいのも本音だから大丈夫。ていうか口調怖い。五条先生」
「……」
箱に入ってないタイプの、上がオープンなタイプのアイスボックスから、五条が好きそうな期間限定!で凄く甘そう!なパビコを持ち上げようとする私の手と、その私の手を押さえつける五条の手の間で、物凄い物理の力が戦っている。
口調が怖いと私に言われた五条は、不機嫌な自身を落ち着かせるためか、フゥーと息を吐いてから半笑いの顔に戻り口を開く。なおずっと馬鹿力が発動している。
負けそう!
「はわかってないねえ。相合傘のムードっつーモンがあるでしょうよ。双方片手にアイス持って食べながらじゃゆったり出来ないだろ?」
「ふうん。自分は濡れない中濡れる私を眺めるいじめが出来ないんだ?」
「違うから。さっき濡れるようにしてんの見たよね? 僕と相合傘したくて自分の右肩濡らしてまでお前濡れないようにしてんだよ見て?」
「じゃあパビコやめてバーゲンダッツにする。おいしいコーンのが出てるんだって。帰り半分こしながら帰ろ? 一人が片手に持って交互に食べればゆったり出来るよ」
どういう理論だよ。五条の呆れ顔が語っている。私も滅茶苦茶を言っている自覚はある。でもアイス食べてお腹冷えたとか言ったら五条飛んで帰ってくれるか置いて行ってくれるだろうし。
五条はムッとして考えているようだ。五条の駄々っ子が発動するまでは私だってゴネ続ける。温かく雨の当たらない車で帰りたかったのに。バーゲンダッツくらい買ってくれないと割に合わない。または今すぐ補助監督を呼び出して私を車に入れて欲しい。または無限で高専まで飛んで欲しい。
「……ん」
……あ、頷くんだ。「僕傘さすのに忙しいから餌付けてね」五条がバーゲンダッツをひとつ、レジに持って行ってくれた。
……バーゲンダッツ餌付けで譲歩する五条悟、思ったより安いのかも。いっぱい買ったら付きまとうのやめてくれるかな。
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