五条に看病される

「うわ、大分派手に苦しんでるねぇ」
「誰の、せいだと…」
の体づくりが出来てないせいかな♡」
「うっざ……」

 絶対、昨日、五条が雨の中無理矢理徒歩で高専まで相合傘させて帰ることを私に強要したからなのに! まあ自覚があるからお見舞いに来てくれたんだろうけどひどすぎる。

「ま、これで勘弁してよ」

 物腰こそ柔らかくなったけど五条は結局十年前と何も変わらない。何一つ変わらない。病人が部屋の鍵閉めて苦しんでるのを謎に乗り込んできてにやにや私を眺めてるところまで何一つ変わってない。ヤバすぎる。「なんか失礼なこと考えてない?」夜蛾先生はもうちょっとちゃんと指導した方が良かったと思う。絶対先生のせいじゃない。五条家のせいが大部分な気がする。いや、本人の問題かな。うん……。

「あげないよ?いいのー?」いつの間にか目の前にほーらほーらとされていたのはバーゲンダッツのミニカップだった。
「やだ!いる!」
「はいイイお返事~」

 頭を優しく撫でられた後、背中を支えられて起き上がった。別に支えてくれなくたって起きれるよ。なんか赤ちゃん扱いされてるような気がする。大変遺憾の意。まあ病人だから今日はいっか。
 五条はぱかっとぺりっとそれを開け、一口目を私にくれた。そのままカップもくれたから、くれるの? と思って受け取って、ぼーっと五条の顔を見ていた。すると、彼はコンビニの袋から水やらゼリーやらプリンやらスポドリやら何やら何まで取り出した後、私の額に冷えビタを張ってくれた。えっっっ。いつの間にかちょっとばかりの気遣いや後先を考えるという言葉が彼の辞書には刻まれたらしい。幼稚園五条から小学生五条くらいには進化したのかもしれない。やだ、感動しちゃいそう。
 そんな五条は私を真っ直ぐ見て嬉しそうに口を開けた。アイマスクの上からでもにっこりしてるのが分かったけど、五条がマスクをずり下げた。にっこり、凄い楽しそうな顔をしている。嫌な予感しかしない。……やっぱり幼稚園五条かも。

「あーん♡」
「……えぇ」
「覚えてないの? 学生ん時にさ、僕に黙ってバーゲン食わされてたじゃん。あーんで」
「違う。あの時は五条が無理矢理くれたの。おいしかった」
「嘘つけ。お前口開けて待ってたよ」
「存在しない記憶」
「記憶を捏造すんな。いいからあーんして。任務帰りに冷えビタとバーゲンダッツとその他諸々調達して速達してあげた僕へのご褒美はないの?」きゅるん、きゃぴるん、と捨てられた犬の顔をしている、けども。
「……別に、頼んでないもん」
「はぁ~~???」

 と言った口にバーゲンダッツを爆撃した。大きな一匙、大きな一口。

「あ~~。の愛が籠ってて人生で食べたバーゲンダッツの中で一番おいしい♡」
「どっちかっていうと速達してくれた五条の愛が五条に返って行っただけじゃないの…?バーゲンダッツは呪力か?」
「あり得るな」
「あり得ないよ?」
「バーゲンダッツが僕の愛っていうのはホントだよ? ハイ、もう一回あーん♡」
「やだもうあげない全部ちょうだい」
「やだカップ貸して、あーんしてあげる」
「いらない――ぐ、っくぅ、馬鹿力!」

 馬鹿力五条再来。病人に全く手加減なんかせず、彼は私が自分の口に運ぼうとしていた一口を自分の口へと力づくで持って行った。ついでにバーゲンダッツが私の手から奪われていった。女が男の筋肉に勝てるわけないでしょ、滅茶苦茶ムカつく。バーゲンダッツ自分で食べるから返してお願いします、何でもはしない。

「ごじょ、――ん、」おいしい。
「っ自分で食べ――ん……」おいしい。
「っごじょ――んん!?」温かい上に柔らかかった。何か言おうとするたびにバーゲンダッツを貰っていた口は突然五条の唇を貰ってた。はぁ!?

「ん、んん!!?」
「んー?」
「~~~っ!!」

 ムリムリムリよくわかんない。こういう意味わかんないセクハラ増えすぎてて吃驚する。つらい。普通に考えて、いち呪術師が五条に逆らえるわけもない。だから私は大人しくしている。五条についてのお尋ねなら間違いない傑に相談したのに、ニッコリ笑顔で笑い堪えられたっていうか堪えられてなかったしあれ完全に笑ってたくせに、直ぐに傑はどこかに逃げてって、そのへんで大爆笑してた。傑はデリカシーがあるようでない。五条と大親友なのお似合いだ。
 硝子には何か、言うの恥ずかしくて言えてないし真面目にドン引きされそうでいつもアーとかウーとかしか言えなかったから諦めた。私たち親友のはずなのに。でも双方知ってる男に手を出されてるとかあんまり言えないと思う。なんていうか、五条は五条家の五条様であって俺様何様五条様だからしょうがないと思う。うん。それは昔から知ってた。顔が麗しくて無理矢理気味であれどバイオレンスじゃないところが救いということにしておこう。知りたくなかったそんなこと。
 黙って唇を押しあてられていたけど、そろそろ酸欠だから五条様離れて欲しいし、バーゲンダッツが溶ける。「っね、ごじょ、~~っ」抗議しようと開いた口には、熱い五条の舌が入って来てもうどうにもならなくなった。風邪移るとか考えないの? やっぱり五条頭悪くない? けど死ぬほど色気をまとっている、いやらしい顔と、五条の吐息が熱すぎて、私も頭の熱さのままに思考を放り出すことにする。されるがまま、求められるままに応じてやる。柔らかく舌を噛むのは勘弁して欲しい。
 五条は私の舌をべろべろ舐めまくって遊んだり絡めたり吸ったり滅茶苦茶したあと、やっと顔を離してくれた。私は既に無駄な抵抗を完全に諦め息も絶え絶えだ。なんで? どうしてこんなことに。

「ん。糖分補給完了。オマエほんと甘いよね」
「っねえ、五条……、頭おかしい……」

 五条を睨みつけても、目の前の端正な顔をした男は舌なめずりをして物欲しそうにしていた。え、まだするの? 続くかんじ? 無理だよやめて殺す気なの? 私は病人なんだけど。
 怯える私から視線を逸らした五条はバーゲンダッツを見て「あー」と非難の声をあげる。

「ほらもうアイス溶けちゃったじゃんのせいだよ。口移しであげようね」
「意味わかんない、五条のせいだし、いらない、遠慮しとく。風邪うつるよ、止めた方がいい」
「遠慮すんなよ」

 僕に風邪なんか移るわけないでしょ心配いらないよ♡とあやしい笑顔で覆いかぶさって来る五条を止める術を、私は10年経っても知らないし、この男は10年経って色々と悪化した。マジでクズ五条。お願いだから別の玩具人間を見つけて欲しい。