壁ドンする五条

 高専。任務から戻って来ると、角の自販機、一番上の列に手を伸ばしてるが居た。背伸びしてる。ウケる。自販機とかもうウン十年見上げてない気がするなぁ、僕。見下ろす勢いだわ。
 驚く顔が見たいからアイマスクをずり下げながら、こそこそ彼女に近づいて、後ろから腕を伸ばした。ポチリ。

「っわ。……五条」

 びくりと彼女が肩を揺らして、手を構えた姿勢のまま半身振り返った。「…ありがと」カッッッワ。目まっる。その手首をぐわしっと掴む。ほっそ。折れそ。ガコン、と飲み物が出てきた音がした。僕は無視して話しかける。

「オマエさ、もうちょい鍛えたほうがよくない?細すぎ」
「五条と比べないで欲しいかな」
「こんなほっそい手首、僕片手で折れるんだけど」
「触らなくても折れる人が何を…」

 彼女が呆れたように僕と目を合わせてくる。殺人的な上目遣いやめてくんない? 髪もふわふわ揺れてて触りたくなる。は~、つむじに顔埋めてスーハーしたら疲労ぶっ飛ぶだろうな。していいかな。そんでそのままブチ犯したい。今日も僕頑張ったよね。は手首を軽く揺らして離してとアピールしているが離すわけはない。頼りない肩に背中も薄っすいし全体的にちっちゃい癖に胸はきちんと主張してて次に見えてんのは丸い尻。

「お、折らないでよ?」
「ん?折らないよ」

 ふいに彼女がアホな事を言った。折ったら抱き締めあえないじゃん。折るわけないだろ何言ってんだ。彼女の背中を自販機に軽く押し付ける。

「えっ。何?離して」
「抱き締めて。宇宙の果てまで」
「……歌を聞けばいいの?」
「いやまあ、歌ってもいいけど?惚れ直すよ?」
「いやぁ……」

 彼女はあっちこっちへ目を泳がせながら、横へじりじりカニ歩きを始めた。オマエがそういう発想になるように軽く押さえてんのに。やっぱ十年前から知能変わってないんじゃね?知恵遅れか?バカすぎ。僕わざとそうしてんだけど。オマエのそういう素直な発想好きだよ、僕。
 彼女の背中が自販機から離れて、自販機が数台並んでいる横の端、デッドスペースに入った。待ってました。ここはこのために作られた場所としか考えられない。彼女の頭を手で守りながら全力で壁ドンする。

「ハイ捕まえた♥」

 マジでドンって音が鳴って、彼女の背中が壁にくっついた。衝撃に一瞬瞑った目を彼女が、しばらくするとそろりと目を開けて僕を見上げる。ハイ死んだ。五条悟、悩殺されました。
 もういい。今日の任務全部許した。「――っん、んんん!!」気づいたら口を寄せていた。柔らかいプルプルの唇が僕の口と重なってる。五条、って呼んでるんだろうけど聞こえなーい。その隙間から舌を滑り込ませた。抱き締めてくんないお前が悪ーい。誰か近づいて来てる足音がするけどこれまた気にしない。

 引っ込んだ彼女の舌に吸い付いて、裏をぐりぐりしてやったり表面を優しく舐めたり堪能する。ぬるぬる触れ合う粘膜と、ピチャピチャ鳴るヤラシい音、あー、堪んないね。そういえば喉乾いてるんでしょ、潤してあげなきゃね。唾液をそのまま彼女の口に流し込む。彼女は僕の胸を叩き始めた。違うのそうじゃないの。抱き締めてって言ったじゃん。片手で彼女の手をそれとなく誘導してみると、彼女は素直に僕の背中に腕を回してくれた。背中に縋り付いて、引き剥がそうとでもしてるのかな、服を下に引っ張られている。体幹がしっかりしてる男に効くわけないだろ。力いっぱい頑張ってるから凄いときめくけど。僕めっちゃ抱き締められてんじゃん、今。
 もしかしなくともこれ、凄い熱烈キッスしてる図に見えるんじゃない? 悟くんの帰還を心から待ってくれてた彼女と誰がみてるかも分からない場所でベロチュー。さっき近づいて来てた誰かはさっき飛んで戻って行った。興奮してきちゃう。あと何人か通りかかんないかな。
 …まあ大分くぐもった苦しそうなの声が聞こえてきてるし、僕もちょっとだけ満足したこともないから一旦口を離してやる。彼女は喉を動かしてゴクリと飲みこむと、ハァハァ息を上げて、僕を抱き締めていた手を離し下を向いて口の端を拭った。
 キスしたままだと、うまく唾が飲み込めないみたい。キス下手すぎ。マジでいつになったら慣れんの?もう何回かしてるじゃん。あと、5分でいいからもっかいキスしよ。次上向いたら口塞ご。
 僕もの後頭部に添えていた手を離して、両手を彼女の頭の横について彼女を見下ろす。

「っは、ぁ、…っご、じょう、」
「ん-?」
「外でするの、やめて…」
「外じゃなきゃいいの」
「ちがう」

 彼女が僕を睨みつける。そんな潤んだ目で睨みつけたって可愛いしかないよ。分かってんの?分かっててやってる?何であれさ、

「ホント学習しないよね。上向いたらさ、」
「ん!~~っ、」

 キスされるに決まってんのに。はー。可愛い。いつどうやって犯してやろうか最近ずっとそれしか考えられてない。腕が伸びて来て邪魔してくるから、隙間ないくらいにくっついて抱き締めてしまう。柔らかい。十年前に抱いた時より腰のクビレが加速してる。イイ女になったよね、。ここからもっと僕好みに開発して育てて僕がいなきゃ生きていけないようにしたい。
 はー、抱きたい。セックスしたい。そろそろ限界。何百回何千回と思い返して抜いてる記憶が焼き切れそうでつらい。十年前にコイツの処女奪ったこと。
 呪いが絡んでるから、解決したと同時にの記憶はすっぽ抜けちゃってそのまま。だから本人はまだ自分のこと処女と思ってんだろうな。28で処女とかマジヤバイだろ。実際違うけど。まあ僕がずーっと狙ってる他の男たちを裏で邪魔してきてんだからセックスできるわけも付き合えるわけもないよね残念でした。お前に他の男の突っ込ませるとかありえねーから。

 そう、だから。なんつーか、こう、さ。いい加減タイムリミットはヤバイ。28よ。今年29よ僕ら?

 ずっと、実は二回目だけど彼女の中では初めて、っていうのは思いが通じ合ってから、…百歩譲ってが僕の思いを理解してくれたら、と思ってたけど。…だって多分、そうじゃないうちに抱いちゃったら、は一生僕が本気だって受け取ってくれなくなる。
 …って思ってたから今なんだけど。まー認めたくないけどドーモこのまま伝わることはなさそうだから、そろそろ方針変えるべきじゃん? この僕の国宝級の顔面で迫りまくってセクハラで済まされ続けてんだから、このままじゃ一生無理でしょ絶対。犯しちゃっていいんじゃない?ぶち犯してメロメロにすればちょっとは状況が好転するんじゃない?少なくとも雄としては見られるようになるんじゃない?一人の男として見てほしいんだけど。

 ハ~、な~んで今まで深刻に考えてこなかったんだろ。考えても分かんないしが可愛すぎて悶えてたら終わるからだろうな。結局風邪の時だってしんどそうではあったから口移しだけで終わっちゃったんだよねえ。僕のバカ。
 だからもう少し真剣に思いつめよう。まぁなんとかなるでしょ~と思ってきたけどどうにもなってないよ僕。にそういう対象に見られてないことは分かってる。意味が分かんない。もう意味もプライドも意地も倫理もなにくそどうでもいい。僕は三十路までにと一緒になりたい。子供も何人も欲しいから毎年腹ボテセックスしたとしても時間が有限すぎ。今の調子では絶対に僕は後悔する。ぶっちゃけ今でもタイムスリップしたら学生時代の自分をタコ殴りにして半殺しにする。けどあの頃の俺を評価したい点もきちんとある。

 着付け琴茶生け花マナーあらゆる五条家に必要な何でもかんでもぜ~~んぶ教養叩き込んだところ。そこ過去の僕最高。最高に偉い。お前ほんと最高。も身に着けたのに、何でそれが僕んちの花嫁修業って頭になんねーのか謎。ボランティアじゃねーんだぞ。いや確かにね?夜蛾先生丸め込んで高専のオプションとしてに薦めてもらったけど?あんときの僕は今ほど忙しくなかったからパンフ作るのだって超本気出したし。『タダ!一般の大学生はこうやって単位を取って卒業するんだ!ライブ感が味わえる!』ってチョー映えるの作ったし。は見事騙されてノリノリで全単位取得してた。実は全部五条家関係の人を俺が顎で使って俺の金でやってた。親に知られないようにするのに苦労した記憶がある。は全部知らない。

 全ての準備が整ってるのに何、なんなの、この体たらく。あれ?過去の僕じゃなくて今の僕が問題だったりする? おかしいな、僕最強になった筈なのに?僕たち最強じゃないの?ねえ傑?足りないのは傑の協力か?泣いて縋って土下座でもしてみるか?するわけねーだろ僕にだってプライドってもんがある。プライドなんて何のタシにもならない。僕はとにかく今すぐにでもをモノにしたいんだから素直に傑に相談するべきじゃね?

 そんな僕って魅力ないかな。を喜ばせるために研究を兼ねつつ技術が鈍らないよう他の女抱いてるとどいつもこいつもメロメロなのに、なんでだけ振り向かないの。この世界おかしくない?こんな可愛いものを産んだことには世界に感謝しかないけど。もう一息、僕のこと好きになって欲しい。

「……ご、じょぅ………」

 きゅう、が変な声を出して落ちてった。支えたけど、彼女の胸は縮こまってるし、赤い顔通り越して顔色、……悪っる。やっちゃった。

「あーーごめんごめん」
「いむ、しつ…」
「うん。行くから目閉じてて。ごめん悪かった」

 キス下手すぎ。酸欠みたいでデロデロになってしまったを姫抱きにして医務室に向かっていく。彼女が僕の胸にコテンと頭を預けてくれた。あっ死ぬ。キュン死にさせないで。つか馬鹿正直に医務室いくとかある?なくね?ない。そうだ、うち帰ろ。それだ。思い立ったが吉日。僕は今日を抱く。

「ごじょう……ゆらさないで…」

 だって僕を見上げて訴えるは涙目ではぁはぁ息を荒げてる。ムリ。有罪。おっき不可避。責任取って犯されて。よし決定。おうち帰ろ。