信じてもらえない五条
「?お前普通にスタイルいいじゃん」
「えっっっ………」
*
「硝子、私死ぬほどヤバイ!?太った!?太ましいを超越しちゃったかな!?反転術式で何とかしてよお!短足治らない!?クビレなんか無いし硝子のおっぱいちょうだい!うわーーん!!」
ガララと教室の扉が開くと、が半泣きで激突してきた。窓辺で一服していた私の胸に飛びついて来たわけだが。引き剥がした。髪に着火して燃えるぞ。灰も落ちる。
「どうしたの、。そんなに泣きそうになって」
「っぐす、ごじょ、ごじょうに、スタイルいいって、言われた」
「え?」
「スタイルいいって、言われた」
嘘だろ。どういう意味だ。五条。
夏油と顔を見合わせる。夏油も座ったまま硬直していた。どんどん表情が悩ましいものへと変わって行く。分かる。
「今から走りに行こう、痩せなきゃ、五条に変なこと言わせちゃうくらい、やばいとは思ってなかった…」
「夏油、行ってやれよ」
「そうだね、をスタイルがいいなんて素直に口に出すとは…素直…いや……悟だぞ…?あの悟…」
べそをかいてるを慰めながら、九休さんばりに考え込み頭を捻っている夏油を見ていたが、そのうちに、ポク、ポク、ポク、チーン!と言わんばかりに夏油は目を見開き、いつも通りの胡散臭い笑顔に戻った。
が隣でごくりと生唾を飲み込み、夏油の言葉を待っている。
「うん。悟はムキムキ女が好きなのかもしれないね。走り込んだらムキムキになっちゃうよ?悟の好みになりたいの?」
「えっ、五条、おっぱいついてて女らしい子が好きじゃなかった?それで、それでだから私は太ってるを通り越してピザっていうことだよ多分?」
「安心して、が太ってたら硝子はZカップだよ」
の目線が私の胸に動いたのを察して夏油の方へ足を延ばす。
「それはお前の雄っぱいじゃないのか」
「いやん」
ぐわしっ、と、夏油のバインバインの胸を鷲掴んだが、見た目通りデカいな。いいクッションにはなりそうか、…いや、ちょっと硬すぎるな。
え、ええっ、ええ。距離感バグ。
いつまでも傑の胸を揉んでいる硝子に、されるがままの傑。筋肉でも解してるの?マッサージ?そんなに触り心地いいの?私も触りたい。
硝子の隣、傑の周りへ行き、そろりと傑をうかがって片手を伸ばしてみる。と、硝子に手首を掴まれコンニチワさせられた。わあ硬い。とても、大きい。硝子とどちらが大きいかと言われると、硝子の目分量の方が大きい気はする。硝子の胸元を見ていたら、またサッと硝子に逃げられた。ひどい。
まあ、とにかく、とりあえず。一つだけ言えることがある。
「硝子と傑、どっちが大きいかは分からないけど、私より硝子の方が大きいのは一目瞭然で、ということは、すなわち私は誰よりも小さい男だった……?」
「近う寄れ。私が診断してやろう」
硝子がいきなり距離を詰めて圧を出してきた。美人が圧を出すと怖い。アンニュイな顔なのに凄い圧がある。「信用してよ。医者の卵だよ」やばい。硝子医者向いてると思う。
どうしようと固まっていると、直ぐに私の胸元には硝子の手が伸びて来て、むにゅ、と。握られた。さすが女子、痛くないがハッキリと揉む力加減を熟知している。
「へー結構あんじゃん」
「ひぇ!」
「くびれもほら、きゅってしてる。なあ夏油」
「ああ。だから走り込んだらムキムキになっちゃうよ。悟の好みになりたいなら付き合うけど…折角いいウエストしてるんだから、やめておいたら?勿体ないよ」
「んっ、やだ、さわさわしないで硝子!で傑!私は五条の好みになりたいわけじゃないんだけど!せめて努力ができる!スタイルくらいは!マシになりたいの!」
「皮肉か?この腰」
「ひゃあ!」
っん、やめ、やだぁ、もまないで!
なんか、教室の、扉、開けていいのコレ。
いい尻してんじゃん
私もそう思うよ
傑まで、ん、やめて硝子もう終わり!触るなら傑のおっぱいにしてよぉ、
えー?男にだってセクハラだよ
今私にしてない!?さわさわしないで、ひぇ!
ッピシャン。
扉壊すかと思った。ぐらい扉を開けると、既に容疑者全員の手が離れており、誰がどこを触っていたのか分からなかった。グラサン外して凝視しても分かんない。混ざりまくってんだけど要は二人とも滅茶苦茶に触ったってことだな?
「あ、悟。ってスタイルいいよな?」
「何でそんな真顔なんだよ。いいよ。ねえ今皆で何してたの」
「ゴリラ女が好きってことかい?それともそれは素?」
「は?俺ゴリラじゃねーよ?ゴリラと交尾しねーよ?てか答えろよ」
ねえ、俺も同じとこ触る権利あるよな?触ってよくない?絶対揉んでたし触ってたよな?ふざけんなよ俺もまだ触ったことねぇんだぞ。
刮目したままに近寄るが、は硝子の後ろに隠れやがった。
「何で隠れんの。出てこいよ。俺にも触らせろ」
「えっ……」
「…ねえ悟、さっきの話の続きだけど、好みの女性の体型は?もしかして、私?」
「は???続きって、傑は確かにゴリラだけど、いや、なんの話してんの???」
「じゃ胸は理想に足りないんだろうけど、それ以外は井上和花よりメリハリがあるし、」
「…いやだから、そいつは普通にスタイル悪くなくない?何、みんなして」
を指さして言うと、静まり返ってしまった。三人ともかたまった顔でありえないとでも言うように俺を凝視している。
いや、俺なんかおかしいこと言った?言ってなくない?傑はの体を褒めてたはずだし、硝子も尻、褒めてなかったっけ。
「いや、マジで何?」
「…五条、医務室行くか?」
具合は、と硝子がの手を取ってこちらへ伸ばしてきた。俺の顔周りを彷徨ってる指先にかがんでやると、ビビったが肩を震わせた。涙目上目遣いやめろ。ドキッとすんだろ。けどなんでそんな怯えてんの?取って食やしねーっつーの。
ぴと、と硝子に押されたの手が、俺の額に張り付いた。
「……熱は無さそう…、でも、ありそう…手が叩き落されない…」
「お前俺を何だと思ってんの?」
「いじめてくるこわいひと」
「あ゛?」
こわい、とが手を引っ込めた。額が冷たくなったように感じる。釈然としない。
「硝子…五条のこと診察してよ。絶対大丈夫じゃないよ。手振り払わないのだって異常だし、私なんて五条の半分も身長ないのに変なこと言うし、」
「割り算もできねーの?1m未満とか小人かよ」
「小さすぎて気を使われるレベルってことだよね……」
「は?思ったこと言ってるだけなんだけど」
にお願いされた硝子が、微妙な顔で俺を見ている。いつもみたいな顔じゃない。何その顔、どういう感情?
「五条、本当に大丈夫か?」
「マジで何?はっきり言ってよ。硝子も傑もさ」
「いや、を褒める五条が気色悪くて」
「うん。本当に大丈夫?悟」
を睨みつけてしまった俺は悪くないだろう。お前俺をどういう扱いしてんだよ。
腕を組んでさも威圧的にを上から見下し言葉を紡ぐ。
「何?ドチビクソブスブタピザとでも言えば満足だった?」
「うん!良かった、びっくりした!」
間髪入れず、満面の笑みのに言われて思わず彼女の頭を鷲掴んだ。
「ドMなの???」
「いたたたたたい!」
「ほら痛いの好きデショ喜べよドMなちゃん」
「いたい、いたい、ごめんなさい!」
「良かったよ、本当に…。悟が私のこと好みだったらどうしようかと…」
傑がおよよと泣いてるけど、なんか気色悪いこと言ってんな。何で俺がのスタイル褒めただけでこんなことになってるわけ。
ポン、と硝子が俺の背中に手をやってきた。何その哀れんでるっぽい冷ややかな視線。ひどくない?傑まで肩ポンポンすんのやめろよ。なんで?ねえなんで?フツーに事実を口に出しただけで、なんでここまでこき下ろされてんの?信じてくれてなかったの?は?あと何この解決しましたみたいな空気。俺大事なとこ全然解決してないんだけど。目の前の彼女に迷わず手を伸ばした。だってまだ触ってない。
「ひぇ!」
の腰を掴んだ感想は。
「…思ったよりはクビレて無い」
「~~きらい!最低!」
「自信あんなら脱いで確かめさせてみりゃいーじゃん」
「えっ……」
やだぁ、ふぇえ、ぴえぇ、なんて聞こえてくんのは無視する。だって傑と硝子には触らせてたじゃん絶対。まあ胸より先にウエストにしてやるよ。胸は硝子のがあるしケツも多分硝子のがある。よって両手で腰を掴んでみた。
――思ったよりも、質量が無い。要は細いし薄い。ちゃんと臓器詰まってる?大丈夫?
マジでやべえ。手の収まりがいい。俺のために作られた腰じゃん。滅茶苦茶細いのなにこれ俺はどうしたらいいの? 脱がしたい。
彼女のスカートのホックを外し、ファスナーに手をかける。ふいに後ろへ物凄い力で引っ張られた。
「…悟。合意のもと、先生のいないところでやろうな」
全然気が付かなかった。いつの間に。
夜蛾センが掴んでいた俺の首襟を離したので、キョロキョロ周りを見ると、硝子と傑は席についていて「センセー五条君が最低です」「合意じゃありません。強姦未遂です」なんて俺を出汁にしてきていた。ふざけんな。
「は!?俺悪くねーよ。お前らだって触ってたじゃん」
コイツ、と目の前のを指さして、そのまま見ると、彼女は真っ赤な顔をしてスカートのホックを留めていた。
え、何それ、可愛いんだけど。ドキドキで壊れそう。
「先生、俺と具合悪いんで保健室行くわ――ッテェ!!」
指導食った。何で俺だけなんだよ!
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