激辛ラーメン食べる五条

「っか、ら、い!」
「お前が激辛ラーメン挑戦しよう、つったんだろー、が!」

 硝子、俺、傑、、っつー珍しい席順で、スープまで飲み干したらタダ!とかいう激辛ラーメン店へやってきている。俺とがヒイヒイ言ってて、硝子は普通に食ってる。傑ははふはふしながらも食ってる。要は、この席順はギブるだろう俺とへの気遣いらしい。腹立つんだけど。けど辛くてもう食いたくねーんだけど。食道から胃までアチーしイテエ。こんなん人間が食うもんじゃなくね?おかしくね?

「二人とも大丈夫?これなら辛くないから、ほらお食べ」

 はい、と傑に差し出された餃子を、がコクコク必死に頷きながら口を開け、あーん♥してもらってる、けど。お前、それ…。

「~~っ!?!」

 やっぱ、そうだよな。
 は顔を更に真っ赤にさせて、じわりと目に涙を溜めてうるうるし始めた。
 …それ、激辛餃子とかいうやつだったじゃん。お前ら最初に頼んだやつ覚えてねーの?鶏か? が、ついには丸まって呻き悶え、そんなを遠目に俺は、傑が謎にラー油を持って、手元のコップに何滴か注いだのを見た。……傑、そんな辛いモン好きだったっけ?
 後ろから聞こえ続けているズルズル音に反対隣の硝子を振り返ってみるが、硝子は我関せずとでも言うように、平気な顔して麺を啜ることを続けているし。…まあ硝子はな。

「え?そんなに辛かった?ごめんごめん」
「わざ、と、じゃなくて!?」
「ちょっとした悪戯、じゃない。本当に辛くないと思って。私にとっては辛くなかったから」

 二人の声に再度そちらを振り返るが、HAHAHAと傑が笑ってて、はわなわなしながら傑を睨みつけてた。傑そこ代われよ。の可愛い涙目上目遣い、絶景200度ビュー。
 クソ、と思いながらも、とりあえず俺は無視できないもんになってきてる己の口の痛みをどうにかすべく、目の前に置いていた自分の水を大量に口に流し込み更にピッチャーから水を注いでは飲みまくる。
 ……ふぅ、まだかれーけど、とりあえず一息ついて傑の方を再度見た。すると、やっと笑い終えた傑がの背中をポンポンやりながら、に水を差しだした。

「大丈夫?はい、口直し。よく口を漱げば大丈夫だよ」

 傑は、可愛いなぁ、とでも言うような顔でホッコリにやにやしてやがる、けど、…なあ傑、その水って、どっちの水だっけ?俺さっき、お前がが目瞑って悶えてる時にラー油入れてんの見たけど。どっち。
 は頭の先まで痺れてる、とでもいうような風に口をはくはくさせながら傑を睨みつける。

「やら、きっと、からひドリンクなんれしょ、」
「ただの水だよ。私がそんなことをすると思うの?」
「ああ」

 硝子がすかさず頷いた。自然と俺も首を縦に振っていた。俺もそう思う。
 しかし、傑は真剣な顔でに圧を出しているため、「…ホントにただのお水?」「当たり前さ」最終的にはが意を決したように水を受け取り、喉を通した。「……~~っ゛!」

 ……傑、お前、マジで……?

 硝子が席を立ち、を介抱しに彼女の隣へ移動していく。硝子のラーメンどうなってんのって気になって彼女の席を振り返ったが、そこに残されたラーメンは見事に底が見えていた。赤いスープのひと匙ですら見つからない。…ケロッと食い終わってんの、ヤバくね?味覚バカなの?おかしんじゃね?

 再度振り返り、学習能力皆無の、物の見事に騙されたが悶えているのを尻目に傑を見ると、俺は更に開いた口が塞がらなくなった。ニヤつきがMAXになっていて、辺りにお花飛んでるわぐらいに、ほんわか和んでいる、傑の顔があったからだ。
 けど俺は悟ってしまった――ニヤニヤ顔でお花を飛ばしつつもしっかり興奮してんじゃねーかっつータマヒュンレベルの趣味を。

「傑お前興奮してね…?」
「別に興奮はしていないけど、女の子のそういう顔が好きなんだよね」
「えっ…」
「うわ……」
「クズ」

 傑は、私の何がいけないの?とでも言うように逆に引いているような有様だ。常々アブノーマルだとは思ってたけど、ここまで? こわ。

「待って、なんで悟まで引いてるの?」
「俺そーいう趣味ねーよ」
「人生損してるなぁ…」

 してねーよ?
 傑と付き合うやつ、苦労しそうだな…。

 の泣き顔は興奮するし可愛いと思うけど、わざわざの口に辛いもん詰め込むかって言われると、詰め込まない。俺の突っ込んだらえずくだろうし多少苦しそうにしてるのはイイかもしんないけど、ガチでアッチやったり縛ったりゲロられる趣味は無い。マジで無い。
 すると、脇腹に、ひし、と何かがくっついてきた。だ。やわらか。何、どうしたの。滅茶苦茶ちけーんだけど。いつも見てるつむじが近すぎて、ふわふわしてる髪が俺の鼓動の速度まで上げてくる。何、どしたの。マジで何。これ腕回して抱き締めていいやつ? ドキドキしながら腕を肘から少し上にあげ、どうしよ、と少し目線をずらすと、向こうで硝子が頷いていた。…俺頷かれるようなこと言った?

「ごじょー…!」
「な、なに」
 バッと顔を上げたはうるうるの目で上目遣いをかましてきたので動悸がひでぇもんになってきた。わざとやってんの?可愛すぎだろふざけんな。
「完全同意…傑もやばいんだね…硝子が傑もクズっていってる理由よくわかった…」

 待てよ、どこまで同意してんの。硝子が睨んできてないから超前半だけ?もしかして声に出てた?俺何思ってたっけ?が可愛いって?
 ダメだ脇腹にくっついてるが柔らかいし近いしでアタマ回んねぇ、思い出せない。こういう時は五条に頼ることにする…五条優しいかも…?なんて言ってんのを、硝子が必死に考え直せと説得している。…もしかして傑がこいつのことをいじめまくれば相対的にコイツにとって俺はすごく優しい存在になる……?

 うわ、冴えてるわ。さすが俺。

「傑。コイツの事もっといじめていーよ」
「えっ…」
「クズ」
「は?そしたら俺の方が優しくなんじゃん」
「ならないよ…?」

 駄目だこいつら、行こ。と硝子が冷ややかな目で俺と傑を一瞥してから、五条が優しいと思ったのは幻想だった…?と放心しているの腕を引いて暖簾をくぐっていった。幻想じゃないんだけど。ひどくない?
 硝子は外で一服すんだろ。店には俺と傑が食いかけのラーメンと共に取り残された。

 俺の前には、三口も進んでいない激辛ラーメンがある。しばらく睨み合い、どうにか無くなんねえかなと願ってみても一向に減らない激辛ラーメンが。隣では傑がズルズル麺を啜り始めた。
 ハァ。物質の選別できるようになんねーと。出来りゃこんなモン一気に食い終わんのに。口に無限張っても胃はイテーだろうし、どうすっかな。…けど食わねーとカッコわりーし…、はー。
 傑に続き、意を決して俺も啜った。が、辛い。ク、クソ……!
 耐えていると、空になってた俺のコップに水が注がれ、ヤツが俺の方へ寄越してきた。が。

「いい。いひゃねえ」
「いらないって?悟、辛いの苦手だろ?」
「お前、のに、ラー油いれてたじゃん」
「やっぱり見てたんだ。悟も止めなかったじゃないか」
「まさかに追撃するとは思わねーだろ。俺はお前みてーな趣味ねーんだよ。激ヤバ趣味のAVもさぁ、もうちょいマシなとこ置けよ」
に似てる女優のを貸そうと思ってわざと出しておいたんだけど、悟が気付かないのは意外だったな」
「……どれがソフトだったわけ」
「私たち、ズッ友だね」
「クッソ…」

 別にそういうプレイに興味があるからじゃ無い。純粋に、似の女優に興味があるだけだ。……純粋ってなんだっけ。
 とにかく、残り、どうすっかな。はー。と顔を下げると、俺の手元のラーメンが傑の手によって引き摺られていき、別の食いかけラーメンが寄越されてきた。

「はい、交換。の食べかけ、食べてあげなよ。好きだろ?」
「お前好きな子のリコーダーしゃぶる系だろ。マジねーわ」
「まさか。そんなこと言うんなら、悟の食べてあげないよ」

 俺は口を閉じた。もしそういうことをするとしても、分からないようにやるかなって聞こえたのは空耳っつーことにしといてやる。チクショー。
 手元のラーメン、のが俺より食い進んでるのも癪に障る。もうあとちょっとじゃん。アイツ頑張ったんだな。あ゛ー。いつか選別できるようになったらリベンジしてやるからな、全員覚えてろよ。