五条と空中散歩する
初めての四人での任務終わり、と言っても、私はも見学してこいと先生に蹴り出され、硝子守ってろって役目の戦力外であったが。なにやら、硝子がちょっと実験したいから私もついてくとか言い出したらしく、こうなったワケだが。
残念な頭の私には良く分からないが無事にデータが取れたらしい硝子、任務が始まる前から好き勝手の五条が呪霊を弱らせたらパーンと弾けて飛んできちゃった液体から硝子を守って私の制服は犠牲になった。それでも生きてた呪霊を傑が適当にタコ殴りにしてから取り込んでいた。傑、ウッてなってたから、今度甘いお菓子かなんかでも差し入れてあげよう。ウッてなってた。硝子と二人で五条を盗み見したけど傑の様子に気付いてなかった。アレに気が付かない五条やばいなと思った。五条と傑、二人は仲良しなんじゃなかったんだろうか。そんなこんなで建物を出たワケだが。
外は土砂降りになっていた。大通りまで歩かなきゃならない地獄加減、どうしてくれよう。大体、補助監督が迎えに来てくれるのに、五条のせいで。五条のせいで!五条が補助監督を置いてけぼりにするから!!! 勿論私たちは誰も傘なんて持ってない。硝子は鮮やかな手法でいとも容易く超自然的に当たり前と言わんばかりに傑の制服の前を開けて「えっち」「あ゛?女濡らすんじゃねーよ」「はいはい」お邪魔していた。硝子は何も気にしていないと思う、普通に携帯を開き補助監督と通話を始めた。ありがとう。でも何でこの人たち、こんなに距離感がバグってるの?おかしくない?近くない?
ウワァと若干引きつつ私もお邪魔しようとしたら「定員オーバーだから悟の胸でも借りなよ」ハブられたので、私は仕方なしに、ずんずん前に歩いて回り、足早に先頭を歩いて行く。
ここで問題なのである。何故、どうして、追いついて来て私を抜かした五条が私の目の前に仁王立ちに立ち塞がり制服の上着の生脱ぎを披露してその制服を私に突き出したのか。ちなみに五条は術式を発動しているみたいで、雨に綺麗に嫌われている。突き出されている彼の制服にも、剥き出しになった彼のシャツにも、雨粒ひとつ染み込んでいかない。凄い。
「これ着ろ」
「なんで?平気。借りるくらいなら自分の着るし」
「は?捨てろよそれ。汚ねーじゃん」
「うん、あとで洗う。だから今はこのままシャツでいい」
「チッ。どうでもいいから着ろつってんだよ聞こえねえのか」
「こわ…」
どうしようもない。圧があって通らせてもらえそうにもない。どうしよ…と思いながら後ろから二人が追いついてくるのを待つ。
「悟、そんな言い方じゃ伝わらないよ」
「ほんとにな」
「何が。別にいいだろ」
何か言い合っている間にも、五条以外の人間は全員濡れていくのである。気付いて五条。そこ退いて五条。普通に寒い。震え出しそう。いいな硝子、傑は犠牲になってるけどムキム筋肉ンだから大丈夫だろう。でも前髪が顔に張り付いて凄い邪魔そうだ。切らないのかな。目が合った。
「、クイズしない?」
「え、あ、うん。なあに?」
「の下着の色あててあげるよ。ピンク」
「は?」
バチコンとウインクされた。えっ、え、なんで、え?
「………えっ、なん、なんで!?」
「予想外に可愛い反応でびっくりだな。悟は優しいだろう?」
顔に熱が上がっていって、恥ずかしくて俯いて必死に胸元を隠したらウワッ透けてる信じられない!誰か早く言ってよ! 顔を上げたら硝子が傑のジャケットの内側からニヤニヤ私の胸元を凝視しているのが分かった。ひどくない!?
「~~っもうやだ!」
「有難く悟の上着、借りたら?ははは」
「やだ!見たことに変わりはないじゃん!もうやだ皆きらい!!」
「いや今回は五条悪くないだろ」
「言い方は問題だったけどね。悟、通らせて。私たちは濡れるから先行ってるよ」
「えっなんでそんなアッサリ通す、」
二人に続こうとしたら通せんぼされた。右に避けると寄られて左に避けると寄られる。避けあいみたいにサッサッとステップを踏みあっている状態になってしまった。何で!?五条暇なの!?二人は通したくせに。通したくせに!
「…ていうか五条だって濡れるじゃん!?早く行こうよ退いて!」
「え?俺無下限で全ッ然濡れないけど」
「っそうだった濡れてなかった、裏切者!いいから私も通して!私は濡れるの!」
「そんなに濡れたくないなら、俺の無下限、入れたげよっか?」
えっ何その提案。えっ。ていうか無下限って入れるの?
「………入れるの?」
「まぁ。俺がお前に触ってればフツーに」
ちょっと触ってみって五条に促されて一歩彼に近寄ると、バサッと肩から制服をかけられた。そのまま手を彼の腕にかけるように誘導されて、直ぐに足が地面から浮く。
「っひ、足つかない」
「うん。手、離すなよ。解けるから」
「…ちょ、ちょっと怖い」
「くっつくなよ鬱陶しいな」
「離れるなって言ったじゃん!」
「くっつけとは言ってない」
「じゃあ無下限解いて!」
「濡れるけどいいの?この土砂降りの中?お前それでいいの?俺の制服クリーニングして返せんの?」
「そこまで解けとは言ってないけどごめんなさい」
「別に怒ってないし。もうちょい落ち着けよ。折角だから空中散歩でもしてく?」
「やだ!普通に!普通に歩っぎゃ――!!!」
見えない階段でもあるの?ってくらい、五条は軽快に空間を駆け上がって行く。怖すぎて抱っこちゃんの如く五条にしっかり抱き着いても怖いものは怖い無理死ぬ。あっ傑と硝子だ、もうあんなにミジンコみたいに、あっ補助監督と合流してる、傘さしてもらってる!あっこっち見た!なんか呑気に手降ってない!?
「お前ビビりだよな」
「ちが、ふつ、ふつう、五条、五条もう降ろして、こわい゛っ」
「ダッサ舌噛んだだろお前今」
舌噛んだ泣きそう。空中散歩はお呼びじゃないの!私はただ補助監督と車に合流したかっただけなのに!ホントに雨に濡れないし!人がゴミのようだ!って感じで!凄いけど!怖いの!降ろして!
五条はヒーヒー笑いながら、ビルと目が合ってしまうような地上何百メーター?まで私を連れて行ったかと思えば、急激に降下を始めた。ていうか落ちてる。ちょ、落ちる速度早くない?臓器がヒュってしてる、浮いてる、死ぬ、死ぬ、やめ、ねえ無下限って何、五条って何、帰ったら詳しく聞こう。涙出て来た。五条に抱き着く以外に道は無い。怖すぎる、助けて誰か。
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