恋愛タイプ診断する五条
共有スペースのテレビを流し見ている。クソくだらねえ街頭インタビュー。異性の好みについて。昼時のチャンネルはくだらなすぎて逆に凄い。
向こうからは傑が台所でなんか切ってる音がしてくる。俺がここに来た理由だ。いい匂いがしたから足が伸びちまったわけ。目の前の席では先客だったがずっと、ご丁寧にブックカバーまでつけた本を読んでいた。過去形なのは、ずる、とが腕まで伸ばして机の上にダレて突っ伏したからだ。
「傑ママ~、おなかすいたよお」
「はいはいもうちょっと待ってね」
…凄え言い草。突っ込みどころ満載なんだけど。
「…つかお前手伝わねーの?」
「…戦力外通告された」
「プッ、ダッサ」
「うざ」
は顔を机につけて突っ伏したままだ。俺は好奇心から、彼女の手元で開かれたままの本を覗き込んだ。…へえ、星占い。星座。相性診断。本を彼女の手から、するりと奪ってやる。
「あ、ちょっと!」
ページを捲ると、あーはいはい、あなたはこういうタイプ♥ 選択肢選ぶやつね。チャートっつーの? 流行ってるよなこーういうの。ピュア、小悪魔、真面目、イケイケツンデレエトセトラ。つかコイツこーいうの興味あったんだ。とりあえず1ページ戻って。
「俺、射手座。お前は?」
「ぎょーざ」
「え、何、傑そんな手、込んだもん作ってんの?レンチンじゃないよね?」
「作ってないよ」
「ピザ」
「知ってる?クアトロフォルマッジってやつにハチミツかけんの。結構いける」
「作ってないよ」
「モナリザ」
「はいアウト。で、何座?」
足音に振り向くと、硝子が立っていた。が隣の椅子を引く。
「私、蠍座」
「私は水瓶座ー」
「ウケる。硝子と傑相性悪いって。で、傑は餃子とピザどっち作ってんの?」
「ごめんね悟、私が作っているのはどちらでもないんだよ」
「何作ってんの?」
「の星座と一緒。内緒ってやつさ」
「キモ」
「悟はそんなにご飯がいらないとみえる」思わず振り返った。笑顔の圧が凄い。
「ごめん」
「うん。全く。硝子、手伝ってくれるかい?一品増やした方がいいと思う」
「しゃあねえな。働かざる者食うべからずだ」
「視線が痛い」
「コイツ戦力外。俺はサボり」
「…、頑張れ、色んな意味で」
やっぱり料理できた方がいいよね…と呟いたが、スンとした顔で硝子に手を振った。俺はページを一枚捲り、本を机の上に置く。しゃーねーから二人でやろ。
「これやろうぜ。あなたは口が悪いですか。はい。自分に色気があると思いますか。いいえ。あなたは好きな相手に見つめられると目を逸らしてしまいますか。……どう?」
「え?」
「お前になりきってやってる」
「は。待って。私は口悪くない。やり直し」
「ナメてんの。ありえないっしょ。お前口悪いよ。色気も無い。しかもどっちにしろ色気が無いで行きつく先、口が悪くない選択した時と一緒なんだからお前はどう足掻いてもこうっしょ」
「うるさいわかった私が五条になってやる。あなたは口が悪い、色気は「あるだろ」…認めない!次!目を逸らしてしまう、グラサンだから分からない、無い!」
「俺逸らしちゃうよ」
「……えぇ」
「え、俺素直だし。目で追いは多分するけど」
普通に見つめられたら恥ずかしくない? は信じられないというような顔で次の質問へ移った。
「好きな子を虐めてしまうほうですか、」
「いいえ」
「嘘つけ」
「あ?」向こうからヤジが飛んできた。
「…外見の小さな変化に気が付くほうですか」
「うん」
「…嘘じゃん。嘘だよ。このままいくと五条はピュアタイプかウブタイプになる。無理。ありえない。やめる。やめる!テレビ見よう、テレビ!」
「恋愛テーマの街頭インタビュー、クッソくだらなくね?」
「五条私と一緒にもっとくだらないことしてたよ」
「は?うざ」
テレビのインタビューと一緒に、ああでもないこうでもない、イエス、ノー。好きな人と目が合うと微笑んじゃうイエスとか、仲良くなるために名前で呼ぶイエスとか、おい。もしかして俺めっちゃ嫌われてる? 俺お前に正反対のことされてる気がすんだけど。の挙動は大体把握できたけど心的ショックがデカいんだけど。
「もうすぐできるよー」
傑。その声かけはヤバイ。マジでママになってる。傑ママ。MAX腹減って来た。いい匂いが胃袋にダイレクトアタックしてくる。
向こうで傑と硝子が、なんか話しながら料理している音がずっと聞こえてきていた。にしても何で二人ともクソめんどくせえ料理なんかしてんだろ。カップラーメンでよくね? 俺は何でも出来ちゃうから料理も出来ちゃうけど、二人も出来たんだ。ちょっと意外だな。
戦力外らしいは食い入るようにテレビ見てるけど。…気になるやつでもいんのかな。テレビの中では芸能人が、最後の質問です、とか言ってボードを出していた。
「隣にいる人は恋愛対象ですか」
「は?ウケる。ありえねーにも程がある。お前対象外。バリバリ無理」
「うん。私も無理」
「あ゛?」
「すぐるママたすけて」が席を立ってった。
「呼んだ?ご飯できたよ」
「わーい!」
「悟怖っ。さとちゃんの分もあるから怖い顔やめなさい」
「キモい。きもすぎる」
「ほんとだ悟パパこわ~い、、、ったぁ!!拳骨反対!」
「誰がパパだって?」
傑に続いて、取り皿を持って戻って来たに怒りの拳骨を落としてから、俺も料理を運ぶかと席を立つ。俺は傑と結婚してねーよ。
「あ~よしよし可哀相にね~」
「傑ママ…!」
箸やらスプーンやら出してる硝子が、向こうの二人のやりとりを引き気味の顔で眺めてる。振り向けば、傑がの頭をよちよち撫でてた。俺だってまだ一回も撫でたことねーのに。クソ、傑のヤツ。腹立つな。
「あいつら何してんの」
「赤ちゃんプレイじゃね」
俺は残されてた大皿を持って、硝子と向こうに戻って行く。てか何、ウマそうなんだけど。傑料理上手くね?何?やば。
「可哀相だろう?私と同い年でしかもは女の子なのに消し炭作っちゃったんだから。そんなを虐めるのはやめてあげようよ」
「そんなひでぇの?」
「…夏油も好きな子を虐めるタイプだな」
「え、今更かい」
「えっ…傑私のこと、好き…?」
「ごめんね。はっきりと否定しておくよ。友人として好ましく思ってるとは言わせて」
「わぁい!」
「さ、食べよう」
いただきます、と手を合わせる皆に俺だけ取り残されている。傑がのこと好きだったらどうしよ、と一瞬でも想像しちまった。頭が真っ白になってた。……やっぱ俺、のこと気になってんのかな。
は自分の取り皿に料理を取って、わくわく箸を伸ばして口に運んでいる。…うまそうに食うじゃん。ほっぺに手をあてたがそれを咀嚼して飲み込んで、「おいしい!」傑ににっこりしてんのに胃がムカムカしてくるくらいはある。「五条も早く食べなよ。冷めちゃうよ。おいしいよ」真っ直ぐ微笑まれて胸がそわついて喉が鳴るまである。が眩しくてついつい視線は逸れた。
ほら俺やっぱ逸らしちゃうわ。グラサンあって良かった。隣に座ってる傑が、ふっと笑って肘で小突いてくんのが鬱陶しい。誤魔化すように手を合わせて飯を食らう。
「うま」
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