棚ぼたの釘崎
伏黒が任務に行くのをさんが見送ってて、私と虎杖はゴジョセンに言われた通り体づくりをしてた。から、まあみんなで伏黒からかいながら見送ってたんだけど。いってらっしゃ~いって子供でも見送るみたいにさんが手を振って伏黒を見送り続けて、伏黒の乗った車が完全に見えなくなった頃。虎杖が「あ」ポンって手をうち、さんが振り向いた。
「あ、そういえばせんせ。王国ホテルのスイーツビュッフェもう行った、ですか?」
「え、どうしたの、悠仁くん。一緒に行く?」
「伏黒にさんも人並みに甘いモン好きって聞いたことあって!今度バーゲンダッツでビュッフェするらしくて!さんもよく食べてるっしょ」
「すごい。どこでそんな情報知ったの?私全然知らなかった…」
「五条先生から聞いたっす!そこで見合いするらし「おい」あっ」
「おい」
「や、やっべ?」
「それ言ったらダメなヤツだろ。殺されっぞ」
「……そだっけ」
「マジで言ってたわよ。割と真面目な顔で。間違えた口が滑った、マジでこれに秘密ね、野薔薇にビュッフェ教えたかっただけだったんだよ、そういう映えすんの好きっしょ?って」
「さん!!一生のお願い!!聞かなかったことに!!」
「まぁゴジョセンにバレたら命ないわな」
「え、あ、うん、五条が見合い、五条が見合い…。見合いねぇ……」
「存在しなかった記憶にして!!さんお願い!!」
さんは虎杖の全力の懇願に目を向けることなく完全スルーして、一言。
「お赤飯炊かなきゃ」
「え?」
「二人とも今から暇でしょ。手伝って」
「え…」
*
「いい匂いがすると思ったら、。何、急に、赤飯炊いてるの。ハッ。もしかして妊娠でもした?悟の子」
「エッ」
「人聞きの悪いこと言わないで?傑。違うよ。五条の結婚祝いだよ」
「えっ。とうとう結婚するの?」
「するんじゃない?」
「んん?」
「今週末、五条、お見合いするんだって」
「へー。またか」
「え」
さんが夏油先生と話し始めたところ、私は炊飯器から赤飯をしゃもじで手のひらに着地させ一口盗んだ。あちちちち。虎杖は一生( ゚д゚)の顔で死んでろ。あ、うまい。おいしい。もちもちしてる。凄い。手伝ったおかずも楽しみ。さんって料理上手なんだなぁ。また今度頼んだら教えてくれるかな?
「……よくしてるの?」
「高専時代からひっきりなしだよ」
「やば」
「…傑は知ってたの?」
私、知らなかった。ってさんのショックを受けているような声が響いた。やっぱりさん、ゴジョセンのこと好きなんでしょ。…好き、…好きで赤飯炊くか…? 炊かねぇな…。
「なかまはずれ……」
「え、うん…。ごめん、悟に口止めされてたんだ。まあ、知っちゃったなら、もう隠す必要もないか。悟、ずっと断り続けてるよ」
「まーだお家に反抗してるのかな?相手の人はどうなんだろ?」
「相手は五条家様様って感じらしい。悟と結婚して子供産みたい猿ばっかだろうね」
「へえー。でも、もう五条もいい年なんだから、いい加減子孫残した方がいいのにね」
「…本気で言ってる?」
やべえ、こわ。さんもちょっと困惑した風に、お弁当箱の中の区分けが終わったのか、やっと赤飯を弁当箱に詰め始めた。私はさんにお茶碗を差し出した。一杯よそってくれた。やった♪ さんがそのへんに出してた黒ゴマをもらって振る。絶対おいしい。
「……はさ、悟に普段、なんて言われてる?」
「ブス」
「ゴメン私が悪かった。最近のことを思い出して」
「最近……?」
こちらに来た夏油先生と場所をかわる。私は箸と茶碗と虎杖を持ってテーブルの椅子に座り手を合わせた。いただきます。っもぐ。
いい香り。おいしい。もぐもぐもぐ。塩加減が絶妙。さんやっぱさすが。このご褒美もらえるなら喜んで手伝うわ。手伝ってよかった。虎杖が隣で物欲し気にこちらを眺めているが、お前の分は無い。食いたいならあの修羅場に自分から突っ込んでいけ。漢見せろ。私は知らん。
私がさん特製赤飯を味わっている間、さんは延々と唸っていた。
「………ごめん、本気で思い出せなかった。ガワだけでも優しいっぽい五条を、記憶が拒否ってるみたい」
えぇ……と思って向こうの二人を見たら、さんの表情がひどかった。顔が死んでる。マジでゴジョセン、何したの? …でもなぁ、私のスカート直で履いて生足見せてくるような人間だもんなマジでクソ最低。やっぱ擁護出来ないわ。ゴジョセンはヤバイ。
夏油先生はさんの隣で、よそってもらったのか、ちゃっかり赤飯を口に運んでる。
「…なんていうか、家柄が釣り合ってるからお見合いになるわけでしょ?それなのに何でなのかなぁ五条。実は五条の理想が高すぎるとかが敗因だったり、とか?まああの顔じゃそうもなるか。かわいそうに」
「部分部分完全同意するけど、も人のこと言えないよね」
「え、つらい。高望みし過ぎかなあ?」
「悟より良物件、この世に存在する?」
「それは難しいね」あっさり認めんの!?
「結婚すれば?」
「ウケる」
うわー、私にはわかる。夏油先生にも伝わったみたい。ありえないの意のウケる。あーあ。
ご飯食べるのを再開しようとしたら、凄い存在感があった。…向こうに、向こうから、呪霊みたいに、ゴジョセンが、が、うわ、やば、逃げた方がいい、虎杖。殺されるよあんた。
「ねぇ、黙って聞いてればさぁ……。まずは僕の見合いのこと誰に聞いたの。ねぇ。情報源は誰かなー?」
「私の地獄耳だよ♥」首傾げてにっこりハートつけんのあざとぉ!
「悠仁ー、隠すならもっと堂々とねー。呪力ブレッブレだよー」
「……っす、す、すいません。えと、その。わざとではない、っかったんですけど、」
「五条。悠仁くん怯えてるよ可哀そう。庇ったんだから騙されてあげてよ」
「もー。じゃー悠仁はいいよ。どーせそのうち話す予定だったし。僕も今年29になっちゃうからね」
で、問題は。とゴジョセンが続ける。
「僕の見合い聞いて、お赤飯炊いてんの、何」
「え、お祝い?成功のお祈り」
「普通ショック受けるとこじゃないの?なんで僕の見合いを祝って成功を祈ってんの」
「30までに結婚したほうが良くない?」
「そりゃしたいよ。お前と」うわっやば…!
「えっ…高専時代からずっとお見合いしてきた口でいわれても…それで何で、そう、結婚できてないの?」
夏油先生はキッチンの棚に腰を預け頭を抱え、
「お前のことが好きだから」
さんはドライにガサガサしていて、
「そっか…」
そんなさんを五条先生が後ろから抱き締めた。
「ちがーう。僕の求めてる反応と違ーう」
あのガサガサ音は多分、お弁当箱の赤飯に黒ゴマを振りかけてる音。…夏油先生ずっと食べてるけど、分かる、気持ちわかる。おいしいわよね。私ももうちょっと食べたい。けどあそこに突撃する勇気はない。名残惜しいけど諦めるかぁ。
「僕にも一口ちょうだい」「はい」「…ん、うまいじゃん」「無理しなくてもいいよ」「は?してない。普通にうまいよ。ねえ傑」「うん。私なんかこれ、おかわりだよ。努力したもんね、」「えへへ」「なにその反応。ふざけんな」
「ていうかさぁ、マジでずっと断って来てるよ。親がうるっさくてどうにもなんないだけ。僕は昔からずっと一筋なのにさ。お前が僕と親に紹介できるような関係になってくんないせいで、ずっと僕不愉快な思いしてんだよね」
はぁって溜息が聞こえてそっちを見た。あ、やっぱ伏黒じゃん。早かったな、おつー。
「…説得力皆無ですよ。五条先生。こないだホテル街歩いてましたよね、女の人と」
間。爆弾発言。
虎杖が隣でえぇ…と呟いた。
「恵。お前誰の味方なの」
「スイマセンさんです」
私は席を立ち上がった。ごちそうさまでした。お皿下げられないけど許してください。伏黒やっぱ度胸あんな。ちょっと見習お。私まだ、ゴジョセンがどこでキレるか分かんねーわ。表情変わんねーし。
「~~っ恵、すき!可愛い!おかえり!撫でさせて!」
「浮気じゃないからね。お前に負担かけないためのアレだかんね」
ゴジョセンの腕の中から出ようとさんがもがいている。ゴジョセンが必死にホールドしてるけど“アレ”ってなんだよ。絶対ロクでもねー意味だろ。
でも、キレてな~い?キレてな~い?セーフ?
「離して五条。これあげるから」
「それはもらう。でもここでも食べてく」
さんがゴジョセンに赤飯詰めた弁当持たして、はいはいって茶碗に赤飯よそってる。やっぱ好きじゃん。絶対好きでしょ。
…でも中身、ゴジョセンの見合いの成功を祈る赤飯。………好、…分かんないわ。
「恵。悠仁くんと野薔薇ちゃんも。まだあるけど、食べる?」
「食べるます」
「おかずもあげようね~」
***
「結局ゴジョセンの見合いってどうなったのかしら。伏黒知んないの」「…さんの、お赤飯持ってって潰したって自慢された。まあ良かっただろ、相手の人も。五条先生と結婚するより」「確かに」「赤飯弁当腐んなかったのかな。冷凍したんかな」「そうじゃね。または無限で時を止めたか。微生物が繁殖できなくて腐らなかった気がする」「便利かよ」
「あ、五条。王国ホテルのスイーツどうだった?」
私たちはハッと息を顰めて隠れた。え、何喋るんだろ。
「まあそんなに悪くなかったかな。懐石よりはマシ。行く?」
「うん。悠仁くんも一緒でいい?」
「……小遣いやるから一人で行かせて」
「まだ喧嘩してるの?」
「喧嘩なんかしてないよ。すると思う?僕28よ?15歳の生徒と喧嘩しないよ?」
「連れてってあげないんでしょ、全然説得力ない」
「分かったよ、も~~!!連れて行けばいいんでしょ!連れて行けば!その代わり夜は僕とデートだかんね!」
「えっ…嫌だよ。まあいいや、五条そんなに休み取れないでしょ」
「はい言質取りました~。休みは取れないから別の日にデートすげ替えるだけだよね~」
「どっか行きたいとこあるの?」
「これと言ってないけど。だから僕はと出掛けたいだけだって何回言ったら分かんの」
「ブスって言われた回数の方が多いからホントに分かんない、ごめん」
「あ゛~~~」
盗み聞きしてると、私伏黒虎杖プラス先生たちのニャインにメッセが来た。向こうにいるゴジョセンがこっちを見て突っ立ってんのは気のせいだと思いたい。
何日何時、1年全員強制集合♥ ~~って滅茶苦茶美味しそうじゃん!!この間のお見合いで食べたんだろうヤツの写真。なにこれ。絶対行く。やっばい。行くしかない。さんがいるからゴジョセン絶対奢ってくれるわ。めっっっちゃ楽しみ!ありがと五条先生!
「悠仁ー。野薔薇と恵も、おいでー。いーいー?強制集合だからね~!」
『俺マジで遠慮しときます。当日行かないんでよろしくお願いします。楽しんできてください』
伏黒のドライな文章がニャインに入った。
「私は行きたいから行きまーーす!」
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