犬派の伏黒
「じゃ、今日はこれから僕の任務、見学ね」
「いや、あの、ちょっと待ってください」
「なに?突っ込み禁止だから」
いや、いや、……さすがの俺でも突っ込まずにはいられない、と、いう、か。
「先生何でミイラ男?」
「突っ込み禁止って言ったよね悠仁」
先生何でミイラ男――ホント、それな。ここまでのは俺だって初めて見てる。
顎から頭の先まで包帯が雑にグルグル巻いてあり、その上からアイマスクなんて、している。どっからどう見ても100%不審者。職質、待ったなし。
「…今日の任務、場所は?」
「銀座。お前ら好きでしょ、東京」
「私今日サボる。ボイコット。ストライキ」
「野薔薇ダメでしょ~サボりはよくないよ。任務終わったらシースー連れてってあげるから頑張んなさい、ね」
「今日だけはいらないわ。マジ無理。だって先生の周り歩きたくないもの。私には無理。どういう趣味してんの?」
残念ながら釘崎の言う事は正しい。考えられる可能性は。
「…先生、ついに目が六個になったとか」
「いや三つめの目でさえ開いてないから。特に怪我したとかでもないよ。心配してくれてありがと恵」
「いえ心配でなく正直言って引いてま――おい虎杖!!」
「えい」
「アッーーー!!!」
い、い、虎杖ーーっ!!お前マジで怖い者なしかよ?!好奇心のままに動きすぎだろ!その鋼鉄の心臓はちょい分けてくれてもいい!ってか!!
「ね、ね、ねこーーっ!!?」
しくしく…わざとらしく五条先生が崩れ落ちた。俺は虎杖が取り払った、先生の頭をぐるぐる巻きにしていた包帯を奪い取り、再度巻こうと先生の隣にしゃがむ。何故ならだって、こんなんが世に出たら暴動が起きる。先生、顔面偏差値だけは妙に、本当に妙に高いからな。…ってあれ、ケツの後ろもちょっと膨らみがある気がする。いや、かなり。何か入ってる。財布とかじゃないな。なんだこれ?
「んっ、恵、お前ねぇ」
俺は何も聞いてない。つい手を伸ばしてしまった数秒前の自分を殴りたい。「スミマセン」俺は超、無。死んだ顔で謝罪を口にした。出てきてしまった先生の、しっぽ、はスルリと手から抜けて、腕に絡み付いてきている。
「ギャッ!」
しかし次の瞬間には釘崎が、むんずと掴んでいた。…毛が逆立ってる。
「やめ♥マジでやめようね野薔薇」
「もふもふじゃん!」
「やめやめやめくすぐったいって悠仁!悠仁!コラ!!!」
「いってぇ!!」
お前ら獣の尻尾で遊ぶなんて言語道断。もう少し勉強した方がいい。殺されるぞ。虎杖には指導が入ってた。拳骨の。
しかし…。釘崎のテンションが目に見えて上がってるし、先生が微妙にヘンな声を出し始めたのが聞こえる。ああ。このままではまずい。俺は犬派なので微塵も興味が湧かないが、まずいことは分かる。なぜならば。
こんなのさんが見たら目を輝かせるに決まってるし先生もノリノリになるに決まってる。夏油先生が見たら先生の機嫌的に問題だ。家入さんが見たら先生が解剖される気がするし、伊地知さんが見たら伊地知さんが後でビンタされる。七海さんは見ても大人の対応をしてくれるだろうが、灰原さんはやばい。きっと虎杖と同じ挙動をするに違いない。極めつけには、もし五条先生に慣れてない他の人たちが見たら…。高専は大変なことになるだろう。少なくとも、裏で売られている五条先生のブロマイドのSSRにでもなって桁外れな値段はつく、確実に。ツーショとかも絶対やばいことになる。そういう事が起きる。そして、さんがまた五条遊んでるよ…なんて言って五条先生がイラっとするまでがセットだ。要は誰かが荒れる。とにかくヤベエものにはフタを。
俺は気を取り直して、ピコピコ動いている、先生の、猫の方の耳に、包帯を巻き直そうと手を伸ばした。
「っあぁん♥ソコ触ったらダメん♥」
「やめろ気持ち悪いです」
「怖いわ恵ちゃん…もっと優しく抱いてちょうだい――ぎえっ捻らないの!優しくって言ったでしょーが!」
「スイマセン」
つい手に怒りが。反対の猫耳にそろーっと手を伸ばした虎杖が、ふわふわの耳に触って、「おぉーっ……!」…懲りずにまた遊んでやがる。「悪くないわね。悪くないわよ」釘崎が俺を押し退けて参加しだした。滅茶苦茶捏ね繰り回して遊んでやがる。…お前ら。「野薔薇、やめなさい!」フシャー!した先生は、やっと無限を張ったみたいだ。最初からそうしろよ。アンタ遊んでただろ。
どちらにしろ尻尾は仕舞って猫耳は隠した方がいい。俺はいそいそ包帯を巻き始めた。が、包帯が勝手にひっついた。あ、はい。それでぐちゃぐちゃになるんすね。もう適当でいいな。
「センセこれ本物なん?」
「なんかねぇ、から移っちゃった。呪いの一種」
「へー。さんも今こんな感じってこと?」
「そーいうこと。でも、あーんな見た目のあいつは全人類欲情させるからモチのロンお休み。任務も無し。だって考えてごらん?呪霊相手にだってエロ同人みたいになるよ?エロ同人みたいに」
えっさん知ってんのか…。つかさんから移ったって、…呪いって移るのか?初耳なんだが…。任務も無しって、そんなの許されるわけ無くないか、あの人超つえーし……即ち誰かが犠牲になってる。
「…誰が任務変わってるんですか?」
「え?僕だけど」
化物かよ…。
まだ見えてる目元をちらっと見てみてもクマ一つないんだが。この人はおかしい。…ホントどうなってるんですか?
「いやぁ、元気バリバリよ、僕。前より元気そうだと思わない?」
微塵も疲れを感じさせない五条先生、どころか、…確かに。さっきまで遊んでたのからも分かる。ちょっと機嫌が良いのが災いして増してテキトーになってるような気はする、そういや……。
普段から感情的な面をぶつけてくる人じゃない、けど…なんつーか。
「言われてみればいつもよりテキトーかも」
「そうね。ま、機嫌は良さそうじゃない?」
「そうでしょ。僕のコンディション最高なんだよ。って二人ともそれ褒めてんの?まあいいや、機嫌が良いから大目に見てあげる。だから聞け。まずさぁ…、帰ったらが夕飯作ってくれてるんだよね。いい匂いがするわけよ。湯船も張ってあって極楽でさぁ。でも天国はそこからでね?の手料理が美味しすぎて僕もう死んでもいいと思うと、なんと、最後はデザートまでセットなんだよね。毎晩僕が一番好きなものが出てくんの。もー何僕をどうしたいのって感じだよね、ホンット毎晩超回復。最高。僕もうアイツ呪術師やめさせよっかな。寿退社ってやつ?一生僕ん家で飼、ゴホン、僕ん家から出さない」
「いやいやいや困ります」俺と伊地知さんが。
「僕が全部あいつの任務こなしてんだから問題ないでしょ。その僕がに癒やしてもらってる方が負担が軽いんだから誰も否定できないって。全員得しかしてないな。やっぱ凄いね、呪術界安泰だ」
「いやセンセ待って」
虎杖、お前最近そんな顔多くないか。虎杖はSTOP麻薬みたいに、手を力の限り掲げて話をとめた。
「さんセンセの家に匿ってるってこと???朝から晩まで一緒??一緒住んでる…?」
「え?そこは大体いつも通りよ?」
「いつもどおり……」
ああ。虎杖が( ゚д゚)この顔で固まってしまった。
にしても、ちょいちょいさんが先生のマンションに入り浸ってることは知ってたが…。五条先生が勝手に連れ込んでるのかもしれない、けどまあ、あの人もあの人できっと流されて、まあいっか~とか思ってんだろう。二人して適当すぎんだよ。俺はお似合いだと思う。言ってはやんねー。
「ま、そのうち解けるよ。に呪いかけた呪霊、残念ながらが完璧に祓っちゃったらしいんだよねぇ。最後の最後に置土産だってさ。ほんっと残念だなぁ…。傑に取り込んでもらえば一生この生活が送れたと思うと……はぁ…なんであの子あんなに強くなっちゃったのかな…一生僕が守ってあげるのに…」
うわぁ…。お幸せに。
釘崎の、ゴジョセンきも…猫ルックの加点、上回るわ…最高に底辺……という呟きが響いていった。
→
←