抱きしめられる伏黒
「めっっっぐみ~~!!!」
「――うわっっ!!」
任務帰りのさんのおかえりタックルは全力だ。ヨロっとしながら受け止めるが、ぎゅうぎゅう抱きしめてくれるのには少し嬉しくなる。昔と同じだ。…けど。
先生に目撃されると嫌がらせされるんだよな。僕一回もそんなことされたことないんだけどとか何とか本気めに半ギレになるから怖い。
「おかえり恵~!!会いたかったよぉ~~」
「…あんま俺以外のやつに抱きつかないほうがいいと思いますけど」
「うんうん、恵にしかしてないよ」
いや先生にしてやれよ。照れ臭くて言ったらツッコム羽目になった。
「さん!」
「野薔薇ちゃん!おかえりー」
「うぇ~い!」
「いぇーい!」
我先にと声を上げた釘崎に、さんが俺から離れ腕を広げた。二人とも抱き合っている。
確かに、確かにな。さんは自分から抱きついてはいない。女同士だし、まあ先生もスルーしてくれるだろう。けど、……さん。
「いぇーい!」
「うぇ~い!」
「とらづえくんもおかえり~」
「イタドリって読むっす」
「イケドリ」
「イタドリユウジ」
「イタドリ有事」
「なんか響き違う…」
ダメなやつ。バレたら殺されるやつ。虎杖が。
虎杖は完全にアウトっすよ。確実に俺も巻き込まれる。五条先生はさんの存在を察知する能力が異常に優れているので――まぁ呪力見えてるから当たり前なんだろうけど、とにかくさんを引き離さないとヤバイ。気づいたら背後にいる、それが五条先生だ。こんなとこ見られたら大変なことになる。虎杖と俺と伊地知さんが。
「お疲れサマンサ~」
ほら来た。虎杖死んだな。墓は立ててやる。
「五条。みんな無事だよ」
「そりゃ僕の生徒だもん。おかえり恵、野薔薇、悠仁。はいこれお土産ね」
先生は俺に土産の袋を持たせると、虎杖の首根っこを掴んで凄まじい勢いで引き剥がした。虎杖は?とまるで分かっていない顔をしている。あいつマジで図太いな。さすが宿儺に耐えられるだけあるわ。やっぱおかしいんじゃねーの?俺滅茶苦茶怖えーんだけど。絶対先生笑ってねーよ。
「悠仁、あとでお話ね」
「?うぃっす」
まあ、先生は虎杖とか俺らに直接怒ってるわけじゃないだろうけど、まあ、さん、お大事に。俺にできることは何もない。すいません。後で当然のように被害受けるんで許してください。一番いいのはさんが今先生の機嫌を取ることなんで、先生が虎杖を投げ捨ててから広げたその腕の中にどうぞ今すぐ飛び込んでってください。それだけで俺と伊地知さんの苦労が減るんでマジで頼みます。
「」
「うん?五条もおかえり」
「ん」
「…なに?」
さんは先生を訝しげに眺め、一歩後退った。ダメだ分かってねぇ!今ならまだ間に合うんでお願いしますから機嫌取ってください!
しかしどれだけ祈ってもテレパシーは受信されないので、五条先生の後ろでさんに向かってジェスチャーしてみる方向に切り替えたが、しかし通じない。「何その変な踊り」うるせえこっちは必死なんだよ!今度秘密の暗号とかボディランゲージとか考えた方がいいなこれ!クソ、対策不足だったか。
「僕も帰ってきたんだけど」
「え、うん。だから何?おかえり」
「うん。ハグ」
「は?するわけないでしょ」
何の罠?アーーーーー。この状態の五条先生に冷たい対応ができるさんは本当凄いと思うけどそうじゃない。さんはじりじり後退っていく。先生がじりじり詰めていく。さんの顔色が段々悪くなってきた。今頃ヤバイことを察したらしい。
「さ、さ、さよなら!皆!助けて!」
「捕まえてごらんなさ~いって?待って~♥」
逃げていくさんを、先生がキャッキャウフフと追いかけて行った。一生やってろ。
土産は俺と伊地知さんで分ける。虎杖、テメエは駄目だ。釘崎に恋人の常識についてでも教えてもらえ。特に嫉妬深い相手の場合についてだ。まああの二人付き合ってすらないけど。
→
←