笑いを堪える夏油

「ねえ傑。ごめん変な話していい?」

 あまりに必死な形相だったので、「どうしたの。そんなこと気にする仲じゃないだろ?私で良ければ何でも聞くよ」出来る限りマイルドな言葉を選んで彼女を受け止めようとした。けれど。

「五条が、あの、その。………そう。そういえばいつから五条って私のことをブスって罵倒しなくなったんだっけ…?」
「大人の階段さ~とる~♪ってあたりからじゃない?」
「ごめん全然いつか分かんないかなそれ。知りたくもないかな…」
の中で悟がクソからクズになったあたりだと思うよ」
「なるほどねよく分かった」

 が手を打ってそのまま沈思し始めた。悟もやっとついに、何かモーションかけたのかな。
 本当には鈍感の天才で――10年前からずっと思っていたけど。何で気が付かないのか謎にも程があった。明らかに悟はの事を好いている。からこそまるで小学生のような暴言や嫌がらせを繰り返していた。どこからどう見てもガキすぎると、硝子と呆れていたものだ。

「それで、どうしたの。私に相談したいのはそんなことじゃないんじゃない?」
「そう。それで、その。あの…。いや、えっと……」

 珍しいな、割とバカ正直というかバカながここまで言い淀むなんて。まあ素直なのは良いことだよ。悟も最近大分素直になったというかテキトーになったというか、あんなのが呪術界の御三家の一つのトップなんて本当にこの世界は大丈夫なんだろうか、というくらいふざけている。まあいつも通りってことだな。
 ふと、が意を決した、と言うように些か赤い頬で私を見ていた。いつも悟にしてる顔だ。やっぱ聞くのを止めておいてもよかったかもしれない。

「――セクハラが。五条のセクハラがひどいんだけどどうしたらいい?」
「は」


 ぶはっと堪えようとしたけど多分駄目だった。とにかくこの場を離れよう。あんまり目の前で笑っても可哀相だろう。まあ絶対堪えられてないけど。既に大分腹筋が痛い。「傑笑ってない?」「笑ってない笑ってない気のせいだよ」「いや顔芸してるみたいになってるよ?ねえ傑笑ってるよね?」「セク、ハラ、」悟が、セク、ハラ。腹が痛い。絶対最後までしてる以外の選択肢あるかな?いや、分かんないけど絶対ないだろ、セクハラ。悟が。セクハラ。今日は硝子と飲みに行こう。うるさい大衆居酒屋にしよう。付き合ってるのか付き合ってないのか、いつ付き合い始めるのか賭けるしかない。私に何も言ってこないなんていじらしいじゃないか悟。お兄ちゃんはいつだってアドバイスしてあげるつもりだったのに。およよ。

「本当にごめん。急用を思い出した。その話は色んな人にするといいと思うよ。特に硝子とか冥さんとか七海とか灰原とか。じゃあまたね」
「え、ちょ、傑、ひど、傑~~~!?」