帰宅。
 恋のお悩みですか。言ってくる人工知能ホロアバターをあしらう。

 近頃、を見るとむしゃくしゃしてしまうのだ。
 恋のお悩みですか。違う。
 苛ついているわけではないが、彼女が他の人間と話しているのを見ると、正直言ってイラつく。ずっと利用されている形なのも心底むかつく。
 恋のお悩みと言わずなんだというんですか。うるさい。
 …なんで。俺に対しての好意ではなかった、と微妙に分かって寂しくなってしまったんだろうか。そうだなそうに違いない。そんなわけあるかよ。ふざけんな。…ハァ。恋のお悩みですよ。アバターの電源を切る。

 いずれにせよ、ギノは今も昔も女の影が見えないどころか、知ってる限りでは、おの字すらも無い。なら、遊ばれる心配も無いし、良いのではないだろうか。
 は人当たりも性格も良いし佐々山に向ける笑顔も可愛いし毎日コツコツやってくるんだ連絡もマメだろう良いパン屋も知ってるみたいだし。
 しかし。ギノは全くそういう風にアイツを見ていない、どころか、このままでは絶対気付かないだろう。ここは友人として、ギノの人生に潤いをやるフォローをするべきではないだろうか。
 …潤い。
 …潤いな。

 パンには水が必要だろう。
 彼女のパンを食う俺にも潤いが必要だ。
 ギノに潤いを独占された場合、俺が干上がる可能性が高い。
 彼女は水であるか否かについて調査を行う必要がある。
 もし水だったら、皆で平等に分け合うのが望ましいだろう。
 佐々山は、日頃の行いから、除外されてしかるべきだ。
 よって、彼女を二等分にすればいいのではないだろうか。

 不可能だ。

 俺は何を考えているんだ。ハァ。何か考えていないと落ち着かなくてしょうがない。

 ――やめだ。精神衛生上良くない。本人に聞くに限る。何を。

 分からない。

 …もういいか、本人を前にして、勝手に出てくるだろう言葉に任せよう。決めた。明日、をひっつかまえて尋問する。

 よし、結論は出た。
 悩むのは精神衛生上、また色相にも良くない。もう寝よう。夢の中まで探さないでくれ。