嫉妬する、次の休み空いてるか?」
「へ、あ、あー……ごめん、花表と昏田連れて外出が…」

 想いが通じ合ってしばらく、といってもあまり変わり映えしたいことはない。…俺も彼女に気兼ねなく手を伸ばせるようになったのは大きいが。ああ、あと俺が一方的に彼女を名前で呼ぶようになったな。…彼女は変わらず俺のことを名字で呼ぶが。にしても、そういえばどこかに行ったことがないな、と予定を聞いてみたらそんな返答をされたんだ。まあ仕方ないか、とその時の俺はとりあえず諦めたのだ。

 しかし翌日、出勤してきた花表と昏田に話を聞けば、先月に予定を取り付けて楽しみにしていたらしく。おかげさまで色相がちょっとだけどクリアになりましたとそれを見せてきた花表に俺は固まっていた。…先月? 俺も来月に予約を取り付けなきゃいけないのか、と渋い気持ちで昼休み、食堂で待ち合わせて食事を終えてから――といっても食事中は仕事の話ばかりしていたな。とにかく昼食を摂りおえた今、彼女の休日を頂く再チャレンジを始めようと思う。よく分からないが、とりあえず近いところから順番に聞いていけばいいだろ。

「今度の休みは、予定あるのか?」
「ごめん、青柳ちゃんと街に…」
「その次の休みは?」
「…天利と外出」
「…その次は」
「……帝塚さんとシンポジウムに」
「……お前、いつ空いてるんだ」
「ええと……多分来月中旬くらいなら」
「…ちゃんと休んでるのか?」
「うん、大丈夫、とても元気」
「なあ、…それまでの休みの予定、全部聞いてもいいか」
「……狡噛くんは言えるの?」
「ああ――」

 一通り言い終えると、あーとかうーとか視線を彷徨わせている彼女に、「言いたくないなら構わない」言葉を切れば、「……絶対怒らないで聞いてよ」「……怒るようなことがあるのか…」「いや、無いとは思う、けど」「…分かったよ、怒らない。そもそもお前の予定だ、俺に口を出す権利は無い」
 端末でスケジュールを開いた彼女が息を吸い込んだ。

「青柳ちゃんとご飯、天利と散策、帝塚さんとシンポジウム、佐々山とラーメン屋「っはあ!?」、昏田とライブ「おい!」、神月とプレゼント選び「……」、真流さんと公園で植物採集「待て!」、和久さん家にお邪魔、その次が今空いてる!怒らないって言ったのに!狡噛くん!」
「…怒っては無い!待て、だけどなんだ、佐々山とラーメン屋!?まさか二人きりじゃないだろうな」
「基本二人だけど、当日他の人が飛び入り参加してくるのも多いよ。たまに行ってるの、佐々山のガス抜き。ラーメンおいしいし」
「駄目だもう行くな、行くなら俺も行く」
「佐々山に聞いてみないと、佐々山だって気分転換で出かけるんだから」
「…お前、俺のことは考えてくれないのか」
「…佐々山に相談してみるね」
「嫌だ、なんだってそんなに面倒見てるんだ」
「…別に楽しいし、嫌だって言われてもちょっと困る」
「初めて知ったよ。和久さん家に訪問とかまで、お前いろんな奴と遊びまわってるくせに、俺にはそんな誘い一言も無かっただろ」
「宜野座くんだって誘ったことないよ」
「ギノのことはいい。どうして俺は誘わなかったんだ」
「…なんか誘いにくかったの!それに今だってまだ配属されて半年も経ってないのに、それ以前とか、そんな新人誘う勇気ないよ…」
「誘って欲しかった」
「…どうしたの狡噛くん?改まって誘うのに勇気がいったっていうのもあるけど、それくらいだよ。何で拗ねてるの」
「……拗ねてない」
「ごめんね、来月中旬でいい?」
「……」
「ごめんってば、しょうがないでしょ既に予定があるんだから」

 強い瞳で俺を諭す彼女のいう事は分かる。あいつらが彼女をそういう風に見ていないことも分かる。彼女も内藤との予定を入れてないあたり、きちんと理解しているんだろう。だが感情が納得するかは別だ。

「……今度からはもう少し俺との時間も考えてほしい」

 ぐ、と口を噤んでいる俺に、彼女が突然手を打って言葉を落とした。

「そうだ、じゃあ今日、退勤後から時間あるよ。どっか行きたいなら行こうよ」
「……別に、どこかに行きたいわけじゃない、一緒に居たいだけだ。お前の行きたいところはなんかないのか」
「っえ、と、えっと、…じゃあ私、千鳥ヶ淵の桜のライトアップがちょっと見たいかも」
「わかった、今日は一係だったな?定時に上がって迎えに行く」
「わ、わかった」

 休憩終わるぞ、と彼女の手を引いて立ち上がらせて、休憩室を後にした。