Extra 9  あれから彼女が学校へ来ることは無かった。先生方に尋ねれば休学だと仰られたので、もしかしてと思い、ギノを誘って近くの矯正施設を訪ねても、そんな人は居ない、と言われてしまった。行ける限りの収容所、どこを訪ねても回答は同じだった。同じ日からぱったりと消えた人物と何かあったんだろうと思うのは当たり前のことだ、もしかしたらその前に次々と休学になっていた女子生徒たちとも関係があるのかもしれない。面会がしたい、と彼女たちの名前も伝え回っていたら、とある矯正施設や隔離施設で存在については是と返されたが、ただの同級生だという関係性しか持たない俺は、誰に話を聞くことも出来なかった。

 数ヶ月後に復学してきた彼女らに話を聞いてみたが何も答えてもらえず、壌宗の名前を出したらそんな人は知らない、とだけ言われてしまった。その様子に偽りはなさそうだった。

 もしかして彼女はあの時怪我を負っていて、入院でもしているのだろうか、とも思ったが、どれだけ待っても彼女が復学してくることは無かった。

 壌宗だけがどこにも居なかった。

 ふわふわと地に足がついていない気持ちで過ごしていたら、何をそんなに執着しているんだ、とギノに問い詰められ、自分でも確りとは分からなくて戸惑った。それでももう一度だけ会って、無事を確かめたかった。あの翌日、彼女と話したというギノは、“元気そうだったが。あとお前にありがとうと伝えてくれと言っていた”と教えてくれたが、自分の目で確かめたかった。

 彼女は結構アホくさいところがあって、俺が天然で彼女の名前を呼んでいるのだと本気で信じている風だった。俺だってそこまでじゃない。少しからかってみたかった、というのは思い返せば彼女のことが気になっていたからだろう。校庭からわざわざ自習室に行ってみたのは、彼女の姿が見えたからだ。話してみたかったからだ。
 たった数日の関わりだった、なのに何故なんだろう。でも、獲物を待っていたと伏し目がちの瞳は綺麗だと思った。たまにドジをやっているところは可愛いと思った。思わぬ反撃に出たあとでさっと引いていくところは卑怯だと思った。
 連絡先の一つでも聞き出せていたら。だが、俺の記憶の中の彼女は適当に言葉を濁して逃げていくばっかりだ。どうしたら捕まえられたのだろう。彼女はもう、俺の手の届くところに居ないんだ。
 …今更だ、気付くのが遅すぎちまった。だが、あやふやな事の顛末に、綺麗さっぱり忘れることはできそうにない。今回の騒動の真相はなんだったのだろう。俺はちゃんと彼女を守れたんだろうか。