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そして日東学院に降り立った私、日東学院の学校制服を着ている。えっ聞いてない。確認を怠った私が悪かった?でもどう考えたって先生側になると思うじゃない。だってこれじゃ完全に囮じゃないですか。私は日東学院を許さない。最近の流行にノって制服が存在しているらしい。着たい人は着てねらしい。確かに毎日私服で行かせられるよりは楽だけど楽だけど楽だけどそうじゃない。
なんでどうしてこうなった。しかしなにがどうなったって帝塚さんがやれって言ったらやらなきゃいけないんだよ確認するだけ無駄だもん。だから昨日要約すると徹夜を命じられたから半分くらい徹夜したもん。
家に帰る暇ないなと踏んだ私は予めドリンクサーバーでコーヒーを買ってきておいてから永久に感じられるほどの時間ひたすらにオフィスで資料を見て目が疲れた苦しみを感じるってでろでろな気分で見終わってご褒美コーヒーきめてカフェインでなんとか立ち上がろうと思ったけどそこから記憶がないということは意識が飛んでいたらしく起きた時にタバコ臭いジャケットが肩にかかっていてちょっと嬉しくはなった佐々山ありがとうけど時間見てわああああって仮眠室のシャワーを借りてドタバタする羽目になったしブラック企業もとい国家なの!?
ッぜえぜえ、疲れた。いずれにせよ体内時計か気力か天才だからなのか、とにかく勤務時間30分前に自動的に目覚めた私は天才だと思った。
やめて、現実逃避したって制服を着ているという現実から逃げられないなんて認めたくない。なんでよ。もう2ピー歳なのにこんなのってない。まあそこまで遡らなくても結構最近まで学生だった身分だけれどだからってだからってだからってこんなの絶対おかしいよ。
あまりに非道なので何故私が制服を着なければならないのかについて解説させてほしい。
今朝、シャワーを浴び終わってオフィスに戻ったら帝塚さんがまず手渡してきたのが制服だったんだ、ホロじゃないの。信じられない。
私服でいいじゃないですかと意見したら和久が手配してたのよと一蹴された。え?和久さん絶対楽しんでらっしゃいませんか?私に制服を着せて一体何が楽しいって言うんですか?なんで私の人権は無視されるの?私のハートは始まる前からボロボロです。
ついでにこの学校、執行官を校内に入れることを拒否したので、私しか校内は歩けないらしく。だってまだ完全に事件なのかはあやふやだから。まあ絶対事件だと思うけど。とにかく潜在犯が校舎を歩くのやめて欲しいとの話だったらしいんだけど、いやそもそも私監視官だし業務外労働なんじゃないの、とにかく粘った和久さんだか帝塚さんだかのおかげで一名のみ敷地内に入ることを認めてくれたらしい。そう、敷地内。校舎に入らないでねでも一名だけ敷地内に居るのは認めてあげてもいいよって、そっちの方が逆に執行官が自由だよ、一般的に考えたらまずくない…? 帝塚さんは全てあなたの責任とするわとか言ってきたもん……要約すると自由にやりなさいって言うことだとは思うんだけどひどくない…? でその付き添い執行官は何ができるかというと、ホロコスで敷地内をパトロールするくらいなら…らしい。それってやっぱり執行官は私の隣に居た方が、学校側としてもまだ安心度が高くない…? 何考えてるのかよく分かんない…。
いいなぁ征陸さんお花に水とかやるんだろうか。いいなぁ…どんなお花が植わってるのかなうふふ楽しみ私も花壇を見に行かなくちゃ! なんて思考を明後日の方向に飛ばしていた覚えがあるのに、着替えてきなさいと帝塚さんに圧力をかけられ、トイレに籠った私は死んだ顔で着替えた。死んだ顔のまま備品室に寄ってスタンガンとソーイングセットと布も拝借した。なんか普通に危険を感じたので自衛対策しなければならないと思った。
それから悲しい気持ちで一係に戻ったら最悪にも内藤と佐々山が出勤してきていて目撃された。内藤がなめまわすように私を見てぼそりと“いいっスね…”と感嘆詞をもらしたので私は身の危険を感じた。ので佐々山のかげに隠れた。ら、“めくってくれと言わんばかりのスカートじゃねえか?”とふざけた顔で手をわきわきされながら言われたので一係執行官に私の味方はいないことが分かった。知ってた…。かなしい。
「頼りにしているわ」
だから行きしの車内で何度帝塚さんに怒りたいと思う心を諌め続たか分からない。さっきの二人は帝塚さんの一睨みで恐ろしいほど真剣なフリをして業務に戻っていた。いずれにせよ私がこんな目にあっているのは元はと言えば事件を引き起こしている犯人であるのでその人にパンチをお見舞いすることにしようと思う。ついでに車内ではブレザーの裏にポケットを作るのに忙しかったのでそれどころじゃなかった。車が揺れて針が私の指に刺さるたび犯人を殴るカウント数が増えていくのみだった。そういうことを考えるとやっぱり私服よりは楽かもしれなかったけど私が言いたいことはそういうことじゃない。
学校の裏門から入って、一目のつかない場所に私をさっさと降ろした帝塚さんはそのままさっさと行ってしまったし、そのうちに到着してきた護送車から降りてきた征陸さんは、私を見ると目を点にしてお腹を押えながらさっさとコミッサ太郎ホロコスをまとっていた。慣れないと言って四苦八苦していたが、腹を痛めそうなほどに笑っているのを堪えているのが私には分かった。これ幸いとホロコスの中で大笑いしているんだろうかった。ぐ、ぐ、と思った。
***
「編入生の禾生壌宗です。これからよろしくお願いしますね」
むしゃくしゃしたのでやった。ちらほらと同じ学部の人に声をかけた。後悔はしていない。え?半徹のノリ?そうかもしれない。にしても凄い好みの顔がいい子が居て吃驚した。勿論声はかけていない。あれ誰だったっけ?
事情を知っている学校側には、偽名を使う旨、説明と断りを入れています。だからOKです、オーケーなんですおっけーです、いや、名前の由来は教えてないです。一般市民も潜在犯もそのへんの人間が絶対に知りえることのない、厚生省高官共や刑事課のメンツしか知りえないトップシークレットの名前を名乗ってやったぞ私は。偽名を使うのは常識だろう、一般人の私の名前なんてハッカーでもいたら直ぐに知れてしまうだろうに。だから本当は帝塚さんの名前でもよかったけど諦めたんだ。…でも些か特徴的な名前すぎましたかね。お願いだから詮索しないで。
というのにしかしこの決断は間違いだった。だってみんな禾生さん禾生さんって話しかけてくる。その度にSAN値が削れていくのである。私はあんなに腹に怪物を飼ってない。こうして私は初日から色々と迷走しているスタートを切ってしまったのであった。ぐす。
普通に結構危険な役回りだと思うの、もの悲しい。お前なら大丈夫だってみんな言うけどどのあたりが大丈夫なのか教えてほしい。ブレザーに内ポケットを作ってスタンガン入れてるから大丈夫とか言われるのかもしれない。でも!それは!私が!自衛するしか!ないような!状況を!先輩たちが作り上げるせいですよ! ついでに監視官デバイスは禾生さんの胸の谷間部分に収納されている。いらない情報だったか。
そういえば帰り際、敷地内を彷徨って、え?迷子?やめて。いいの辿り着いたから。で、非常に大きい敷地が使われているとにかく広い花壇に寄ってみたんだけど色とりどりの花が咲いていて色合いが綺麗だった。ホロなんだろうか、または実習の一環できちんと植えられているのか。童心に帰り、花壇のフチを歩いて遊んでいたら楽しくなって、スキップしたら足踏み外して盛大に転んで膝すりむいた。泣きたくなった。
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