茹で卵 ★★

「待て待て待て賢者さん。ちょっと話し合おう。そのボタンから手ェ離してくれないか?」
「え?」

 ピ。

「あ」

 ブォンッ。

「ハァ~……やっぱりな……」

 賢者さんの世界にはこういう機械があったらしい。誰に作らせたのか知らないが、電子レンジというものが火を噴いた。まーた直してもらわなきゃなんねえ。メカニズムをなんとなく聞いた時点で嫌な予感はしていた。
 レンジを開けると、やはり中には殻付きのままの双子鳥の卵が入れられてやがった。バスケットに無かったと思ったよ……。物体の水分をどうにかこうにかして温めるらしい機械。そこに殻付きのままの卵を入れたらどうなるか? 水分が内側から殻にぶつかって逃げ場を失くし――こうなるのは自明の理ってもんだ。この水分の失われひどく凝固した白身。可哀相になってくる。

「賢者さん。料理には頭も必要ってもんだよ」
「私が馬鹿みたいに言いますね……?」
「卵爆発させる奴は、間違いなくそうかな」
「ネロの好感度が激低~!! でも心配しないで! おいしくアレンジしますから」

 可哀相なことになっている卵を、賢者さんは取り出そうとしてあちあち言っているから、仕方なく出してやって。俺も昔は熱いものを触るのは苦手だった気がする。どうするんだ?と視線を合わせて言外に聞いてやれば、「ネロ、ここに」どうもまな板の上に置いて欲しいらしい。お望みのまま置いてみたら、賢者さんは包丁を手に更に破壊を進め始めた。

「お夕飯にミモザサラダ作ってください。そこに乗せたら間違いないです」
「……ソウダナ。もらっとくよ」

 これは食材への愛、料理人へのリスペクト、確かな味覚、しかし残念な料理の腕を持った、料理が好きな賢者さんとの物語である。

ネロが仲間になった!