さて、盗った魚を人間の夕飯にしようと捌いたまではいい。しかし、生で食べるにはいまいち寄生虫等が怖いので、焼いたのだが。…焼き加減はいまいちだ。が、消し炭にはなっていないので食えると思う。
「慎也さん、料理得意じゃなかったんですね」
ひょこりと俺の隣から顔を出し、フライパンを覗き込んだ彼女に確信を突かれた。ああそうだ、そうだとも。残念ながら俺に料理センス特に味付けが無いのは周知の事実だ。なので、今回は焼いただけである。塩を振るのもやめておいた。大丈夫だ、問題ない。
「…安心してくれ、米なら炊ける」
「そんな気はしてましたけど、意外です」
「…どこで推測した」
「…だって、慎也さんは私に甘いので、もしオートサーバーよりおいしいご飯が作れるなら、作ってくれたような気がしました」
「そうだな。作れないから他のところで甘やかしてるつもりだが。足りなかったか」
「…足りてますけど足りません」
可愛いことを言ってくるに向き合い、彼女を引き寄せ抱き締めると、そのままくっついていてくれるのでたまらない。癒しだ。しかし今日はまたも足をつつかれてしまった。主張が激しい。
「クァー」
「何だ。邪魔すんな」
「クァアアア」
「何。残念ながらお前がどうしたっては俺の方を愛している、諦めろ」
「…クァー……」
が身を捩り離れようとしたので阻止するも、「慎也さん」彼女に咎められては逆らえない。腕を離すとがしゃがみこみ、クァーに向かって腕を広げた。俺もされたことないのに。いや、よくされてる。
「クァーちゃん、いらっしゃい」
とぼとぼと、クァーが彼女の腕の中に入って行った。がクァーを抱き上げ俺に背を向け、クァーが彼女の首裏から俺のことを悲し気に見つめている。…どういうことだ。
「慎也さんとも、仲良くしたいんだと思います」
「どこがどのように」
「んー…、仲間に入れて欲しかったんじゃないかと思うんですけど」
「ハァ?」
あまりにつぶらな瞳だったので勝手に手が伸びてしまい。頭を撫でてやると、クァーが気持ちよさそうに目を細めている。…子供かよ。…子供だろう、そうだな、俺が大人げ無かったよ。
「喜んでるんじゃないですか?」
「なんで分かるんだよ。…嫌がってはいない」
「可愛いですね」
「俺は」
がゆっくりと俺を振り向いた。何とも言えない顔をしている。可愛い。
「…可愛いって言われたいんですか?」
「愛情不足で干上がりそうだ」
「…慎也さん、今日、…恥ずかしくないですか?」
「…多分、深刻なんだと思う」
適当に小っ恥ずかしいことを言っている自覚はあるが、…まあ言わなきゃ伝わらないのでいいだろう。クァーのせいで、今日は彼女との時間が少ないのだ。クァーは地上に降ろされ、に頭を撫でられている。もう少し優先してくれてもいいのではないだろうか。いや、大人げが無い。哀しい。
「…クァーちゃん、ごめんなさい。旦那さんが拗ねました」
「え」
「…え、ってなんですか」
「いや、待、っいや、何でもない」
が俺を振り向いた。熱くなってしまってきた顔を腕で覆うも、の顔まで赤く染まって来たので、多分バレている。やめろ移る移ったのかやめてくれ。暑苦しかったのか、クァーが向こうに避難していったのが視界の隅に見えた。なんだあいつ空気読めんのかよ。
「プ、プロポーズしてくれませんでしたか」
「…微妙になあなあにされた覚えもあって、な」
顔を逸らし合っている。合わせられたもんじゃない。嬉しさだけが胸を支配しているが、…あー。
「……好きだ」
「…好きじゃなきゃ一緒に居ません」
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