昨日から延々と部屋に引きこもって絵を描いていた。寝て起きてまた描いて、ついに筆を置いた。一息ついて写真を撮って、リビングの扉を開ける。
「出来ましたよ」
「そうか」
「写真なら見れますか」
鳩が豆鉄砲を食らったみたいな顔をされた。失礼な。仕方ないじゃないか、この絵は日の目を見ることもないだろうし。まあ、廃棄区画にはいつも通り持っていくが。あ。不味い、その旨伝え忘れているかもしれない。
「…見ていいのか?」
「見てくれないんですか」
デジカメをヒモさんのパソコンに勝手に接続し操作する。デジタルでは色相が濁らないということらしい。変な絵具もあったものだ。
「お前、捜査資料とかも入ってるんだぞ」
「見たってわかりませんよそんなもの」
画像データをひらく。
「また、この色か」
「他に何を使うんですか」
「他の色、普通の絵具」
「…一般の絵具じゃ、この色は出ませんよ。さて、私はすごいので、いつも通り完成と同時に絵具を使い切りました。しかもきっかり予定通り一週間で、です。けどとりあえずお風呂に入ります、あと腹が減っては戦ができませんから、狡噛さん、私今日は一番が食べたい」
「はいはい」
「っていうか褒めてはくれないんですか」
「あーすごいすごい、えらいなー」
「棒読みじゃないですか。全然嬉しくない」
*
「おまわりさん、今から行きますからね。あと、これ持って行きますね、ごめんなさい」
「っな、はあ!?もしかしていつも持ってってたのか、何故言わなかった!」
「だからごめんなさいって言ってるじゃないですか、言い忘れてたんです悪かったですよ」
額に入れて目隠しをかけた作品をリュックにしまい込む。そんな私を見ておまわりさんが吠えている。
「お前、捜査の前提が変わってくるんだぞ、…他に隠してることは無いな?」
「隠してることは無いです。伝え忘れと言ってください。とにかく、私は普段通りにしますから」
「…絶対道中で出すなよ」
「はいはい大丈夫ですよ、じゃあ予定通り行ってきますね」
いい天気でよかった。バスに乗ったり歩いたり、道端には綺麗な花が咲いている。あの花は何だって言うんだったか。そのうちに廃棄区画に辿り着いたが、おまわりさんはちゃんと来ているんだろうか。私がどのようにどうやってここへ向かうのかは全て伝えたし、おまわりさんも分かった任せろと言っていたが、おまわりさん側がどうするのか、どこにいるのかなど全然何も聞いていないので全くよく分からない。まあ、特に長生きしたい願望も無いからいいか。最近は楽しくなくもなかったしいい納め時じゃないか、命の。なんて、危険な目に遭ったとしても、あの人はきっとどうにかしてくれるだろう。絵具が空から降ってきたわーいと生きてしまっていたが、こんなところに来るのは本来推奨されないことだ。おまわりさんにそんな所業がバレてしまった今、私も真実を知るときなのかもしれない。私の絵で誰かの色相を濁らせ続けるのもよくないから、分かってよかったのだ。一体、誰が何故、私に絵具を与えているのだろう。
「新しい絵が完成しましたよ。見て下さい、凄いでしょう」
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10 (7/7)
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