眠い。昨日あの後直ぐに寝たので早朝に目覚めてしまった。ヒモゴリラめ。稀にこの時間に起きたら私は散歩に行くのだと決まっているのに、ヒモさんは寝ている。

「ヒモさん、私散歩に行きますよ」
「…ん」

 起きない。ヒモさんはやっぱり寝起きがいいタイプじゃない。でも私は散歩に行きたい。台所から鍋とお玉を引っ張り出してカンカンカンカンお目覚めコールだ。一度やってみたかったのはある。

「っなんだ、!?」
「狡噛さん、私散歩に行きたい」
「お前びっくりさせるな、飛び起きただろ!」
「起こしましたよ。でも起きなかったんですよ。一人で行ってよかったんですか。多分だめでしょう、だから起こしたんですよ感謝してほしいですね、四十秒で支度しな」
「そうか。今日は随分いい天気だな。二度寝したい」
「私とお話したいって意味ですか」
「……散歩に付き合う方にする」



「お前、普段から昼飯食ってないのか」

 夕食時、ヒモさんがプレートを二つ持って席に着き、私に尋ねた。勝手に食べろと言ったのに今日は一緒に食べる気らしい。テーブルをもう一つ買えば向かい合って食事を摂らずにすむだろうか。

「頭しか使ってませんもん」
「いつか身体壊すぞ」
「あらまあ浅識ですね。古代は一日二食だったそうですよ」
「現代の話をしろ。それに摂取カロリーが不足しているように見える」
「過去は現在に影響を与えるんです、私は健康です」
「未来も現在に影響を与える、と続くがな」

 ヒモさんは見るからに高カロリーなメニューをつついている。昨日のカロリーが今日の筋肉になり、明日のカロリーが今の筋肉になる。ゴリラめ。そうして維持しているんだろうおまわりさんの体格は特に変わっていないように思える。とにかく失礼だ。私だってそのくらいは考えている。

「別に平気ですよ、時々本物の食材食べてますから。最低限の筋肉はあります。おまわりさんがおかしいんですよ」
「…どこで調達してる」
「はあ?ネット通販ですが」
「かなり値段がするだろう」
「私の作品の価格、覚えてないんですか」

 ヒモさんが手にしていたフォークに刺さっていた肉が落ちた。なんかこの人は、抜けているように見えるところがあるな。

「……そうかお前、金持ちの部類に入るのか」
「羨ましいでしょう」
「俺個人としては、正直そこまでじゃない。人生は金じゃないだろ」
「そうですか。好きなことでお金をもらえるような世の中って幸せですね。シビュラ様様って感じですか」
「そうだな。成しうる者が、為すべきを為すんだ」
「まあ、私も好きなことをして生きている部類の人間ではありますが」


06 (3/7)