フルコンボだドン! 我々はまたフルコンボを達してしまった。秀星と二人、新しく買ったとかいう太鼓の囚人とかいう太鼓の音ゲーをひたすらにしている。二の腕にきく。なんて筋肉だったっけ。狡噛さんに聞いたら分かりそう。筋肉痛が痛くなってきて大分虚無虚無プリンになってきた。こないだのプリンはおいしかった、奇跡の味だった。
「ふ。フルコンボ。うでいたい」
「情弱」
うきゃー!と襲い掛かりたくなるのをこらえる。今の私はバチという凶器を持っている。いくら秀星といえど頭を殴ったら殺せる。私は今秀星を殺せる。平静を保とう。私は秀星より強い。秀星もバチ持ってる。やだ痛い殴らないで。ぴえん。
「ぴえん…」
「あ?」
「ぱおん」
カッ、まだやったことない曲を選択し、カッカッカッ、カカカカカカカカカカ。ほしMAX!ぴんぽーん。
「おに」
「コウちゃんじゃん」
「おに」
「そういやコウちゃんと音ゲーしたことねーかも」
「太鼓にあい…にあ…にあいそ…うーん……?」
はぁ?という顔で入室してきたおにさんにバチを差し出して持たせた。「あったまってます」「ぬるい」「いかりのはどう」
「ドン」
おにであそぶドン! 秀星がほしMAXを決定した。どうするんだろう。狡噛さんの背中を押してとりあえず太鼓の前に立たせ、後ろから手を取り指導してさしあげる。
「こっちがドン。こっちがカ」
「……」
「おっきいドンはこう。おっきいカはこうです。両腕で全力で叩きます。私も秀星も今のところフルコンボ。ふ」
はじまるドン!
ドドカッカカドッやドドッやドドカカドドドッみたいなやめてよして殺さないで死んじゃうでしょみたいなリズムにすら、狡噛さんはフルなコンボで今のところ順応していた。意味わからない。さすがエリートは違う。既に譜面は高難易度へ移行している。「ああああ!」秀星の叫び声が時折混ざり、フルコンボが途切れたのが見える。かわいそう。でも私もこれは叩けないと思う。さいたま3000。多分この曲には、うどんの力が多分必要なんだと思う。狡噛さんはカレーうどんで出来てるから、今、うどん力を発揮しているのかもしれない。
はっ…!それなら常守さんも出来る気がする。今度誘ってみよう。あの細腕で?私ぐらい細い腕で?私の方が太い腕なのにうどんドーピング、うドんピングができないから叩けない。何を言ってるのか分からなくなってきた!だって譜面もわからない。やっぱり狡噛うどんさんは頭の出来と腕の出来が違うのかもしれない。虚無虚無プリンが加速する。連打を秀星の見様見真似で理解したらしい狡噛さんは、なんなら秀星より凄い連打数を叩き出している。ていうか譜面が早すぎて見えないしついていけないし動体視力の不足を感じる。うどんはピオリムだった?
現実に戻ろう。うどん噛さんの手元を見ると、太鼓の面が激しい打撃を受け続けているのがなんとなく理解できた。高速すぎる。かわいそう。太鼓がぴえんといっている声が私には聞こえる。悲鳴が聞こえる。ドとカという音は太鼓の悲鳴だった。虚無虚無プリン。開いた口が塞がらない。「こんなん出来るか!」虚無虚無プリン。口の中が乾燥してきたレベル。「ぴえん………」私のか弱き鳴き声は狡噛さんの打撃音の前にかき消されていく。今日悪夢見そう!
フィニッシュが近いのを感じる。意味が分からない譜面だった。代わってもらってよかった。明日腕が持ちあげられなくなるところだった!ありがとう狡噛さん!きっと次のドンで999コンボになって素晴らしいフィニッシュになる!今度動画撮ってネットにあげて稼ごう!そのお金でおいしい材料いっぱい買って秀星にお願いしてみんなでおいしいごはん食べる!ありがとう狡噛さん!ド゛ンッ! 凄い音で、狡噛さんが元気よく最後の大きいドン打撃を行った。
「あ」
やっぱり太鼓の断末魔だった。だってなんかすごい音した。こわれてる。太鼓こわれた。中は空洞だ、なんて虚無虚無プリン? 秀星が唖然とバチを落とす音が聞こえた。私たちは絶対的な生物的勝者ゴリラを前に立ち尽くすしか無かった。
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