ギノが休憩に行った、数分後。俺も~と席を立った縢をが鬼の形相で引き留め半ば殴り合いになりかけたところを俺が止めてから、は俺に謎のプレゼントを寄越してきた。心なしか笑いを堪えている顔に見えないこともなかった。
「あげる」
はぁ?と受け取った。コイツらしくもなく、綺麗にラッピングされているそれ。珍しいな、と、思った俺は、もう少し頭を回すべきだった。ラッピングは目隠しでしかなかったわけだ。中身が見えないように包装を頼んだに過ぎない。
「じゃあそういうことで」
「逃げんな」
「っぴゃ――」
の首根っこを掴み逃走を阻止しながら、ラッピングを開けた俺は思い知った。
そう、中には、músculoという文字と、憎たらしい顔で胸をたたいている典型的なゴリラの絵が描かれたTシャツが入っていたのだ。ご丁寧にサイズはあっている。なんでだ。しかも綿100か、素材は悪くないな。
しかし、músculo――筋肉。筋肉ゴリラってか。俺は学生時代、第3言語はスペイン語を選択している。英語も読めない日本語にも弱いにスペイン語が読めるとは到底思えない。ゴリラの絵でチョイスしたのだろう。
「絵で選んだだろ。músculoの意味わかってるか?ムスクロ、筋肉って意味だ」
「私ってやっぱり天才かも!そのままじゃないですか。筋肉ゴリラ!ねえ秀星、秀星も同意したじゃん黙ってないで助けるべき」
黙りこくり俯いてゲーム機をかちゃこちゃやりながら空気に徹していた縢を見ると、ギクリと肩を震わせたのが見て取れた。縢が張り付けた真顔で顔を上げた。目が合った。即座に奴の視線は明後日を向いた。
「やだなぁコウちゃん。俺がコウちゃんに喧嘩売ると思う?もう懲りてるよ」
「目が泳いでるぞ」
「気のせい気のせ、っぎゃ――」
をずるずる引き摺り行って、縢も捕獲し、こいつらの処遇を考える。うえーん狡噛さんがいじめるーとウソ泣きをしてもがいている、ホールドアップし首を竦め、捉えられたウサギのように硬直している縢。全く以てこいつらはガキだ。
縢はハンバーガーとカレーうどんを作る刑に処すとして…、材料は常守に頼めばいいだろ。はどうするか。
「で、着てくれないんですか?折角購入申請通ったのに」
「ギノと常守、どちらに購入申請を出した。言ってみろ」
「宜野座さん」
「ギノ……?」
「っぐ、くび、くびしま、って、う、」
どういうことだ。嫌がらせか? 思わず、ぐぐ、とを持っていた手を上に上げてしまっていた。中々に上腕二頭筋に効いた。――そうだな、は筋トレに付き合ってもらう刑にするか。暴れる人間を片手で持ち上げながらスクワットでもすれば良い負荷がかけられそうだ。――シュン、と扉が開いた。
「――何だその目は。忘れ物をしたんだ」
俺たち全員の視線を受けたギノが、眉間にシワを寄せてそう言い、次にはおおと俺のデスクを見て目を丸くしている。…ギノ。
「。届いたのか」
ギノが、俺がデスクの上にほっぽっていた筋肉ゴリラのTシャツを手に取った。……マジで購入申請通したんだな。自分の目が半目になっていくのが分かる。
「ホロが効く素材らしくてな。TシャツだがYシャツの形にも誤魔化せるらしい。綿100だしお前でも着るだろう。購入申請を通してやったんだ、有難く着用するがいい」
*
宜野座さんがツンツンしている。でも、言ってることは、デレ。こ、これは、ツンデレ!
秀星と目を見合わせた。やっぱり、宜野座さんは、心底、善意から、購入申請を、通したんだ。秀星はマルチ属性だから電波が通じる。
秀星と一緒に、狡噛さんを凝視する。狡噛さんは口を引きつらせヒクヒクさせていた。
「…どおりでサイズがあってるわけだな………」
「そのよれよれのYシャツもどうにかしたらどうだ。お前、こないだ靴下に穴が開いているのを俺は見たぞ。そういう物は積極的に申請を出していいと毎回言っているだろう。身なりにきちんと気を使え。これから、会議や集まりなどにはそのTシャツにホロをかけてこい。全く…」
宜野座さんのぐちぐち説教を狡噛さんはチベスナの顔で受けている。秀星と、にやりと視線を合わせる。今度、会議終わったら、狡噛さんに水かけてやろう。私と秀星の心は通じ合った。宜野座監視官を巻き込めば、狡噛さんへの嫌がらせは成功するんだ!、覚えた!
「……ありがたくもらっとくよ、ギノ…」
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