「なあ、お前ほんと、馬鹿じゃね?」
「バカじゃない。天才」

 よいしょ、と足元に降ろした普通にデカい青いバケツの中には、デカすぎる卵が二つ?入っている。なんだこれは。

「スコッチエッグ作って」
「サイズ感考えろ?」
「特大スコッチエッグが食べたいの」
「…これどこで手に入れたの?」
「闇オク。9月に産卵するんだって!」
「……怒られっぞ」
「ふ。秀星のご飯のためなら、そんなの怖くない。もう一つバケツ持ってくる。二つはスコッチエッグで、もう二つはバケツプリンがいい!」



 数分後、二人を連れて部屋に戻ると、部屋がバカクソ寒くなっていた。「縢くん、ちょっと寒くない?」「あんまり冷やすと健康に悪いぞ」「俺じゃない」がカウンターチェアで丸まっている。足元には新たにもう一つバケツが置いてある。

さん!…縢くん、面白い物ってこれ?…大きい卵?」

 朱ちゃんがに寄って行って、バケツを覗き込んだ。

「……ダチョウの卵です」
「えー!初めて見ました!」
「…入手経路は黙っとけよ」「うるさいな、なんで分かるの。分かってますよ。ていうか何で二人が…」
「あんまり物珍しかったから見せびらかしたいじゃん。コウちゃんオフィスまで呼びに行ったら朱ちゃんも付いてきた」
「…お邪魔でしたか?」
「別に」
さんが別にって言ってくれる時は、問題ないって私は既に学習してます。残念でしたね!ありがとうございます!」

 朱ちゃんがドヤ顔でに抱き着いた。「っちょ、やだ!触らないでください!」「嫌です!」「なんでぇ!犯罪係数が移りますよ!」「移りません!」そういや、

「なあ、これ有精卵?」
「知らない!」
「えっ」
「無精卵。無精卵です。大丈夫、そうです。ちゃんと商品ページに書いてありました」
「…本当ですか?」
「本当です」
「なら、商品ページを「――常守、よく考えてみろ。もし生まれたとして、育てられるか?責任を持って生涯の面倒を見れるのか?」

 ナイスコウちゃん。俺も、こないだ購入していたとっておきの秘密兵器の電源を付けながら発言する。

「で、これどうやって茹でんの?」
「気合い」
「なーんて言うと思ったか?これを見ろ。実はこないだ回転鍋買ったんだよ。スゲェだろ、カレー1000食くらい作れそうだろ。ふふん」

 そうだな、カレーとか作るときはコウちゃんに掻き混ぜてもらお。がわくわくしている。次の発言は予測できる。

「入っていい?」

 やっぱりな。こいつは猫だか鼠だか、何かの動物のように、ちょっとした隙間に入り込むケがあるらしいことを、俺は最近知った。が靴下を脱いだ。足ちっちゃ。

「茹でてやるよ」
「それはちょっと嫌かも」

 大人しくが足をひっこめた。よし。

「普通の鍋でもいける気はするけど、折角だから使ってみようぜ」



「ふ、ふおお……」

 目の前には私の顔ほどもあるスコッチエッグが鎮座していた。これは縢秀星という偉大な料理人によって作られた偉大過ぎるものである。

「動画の準備はよろしいかね、皆の衆」
「勿論です!」「神様仏様秀星様!」
「コウちゃんは?なんかないの?いらないの?」
「…あーすごいなーうまそうだー」
「コウちゃん、無し」
「悪かったすまん、縢のメシは非常にうまい、世界一うまい。それはひとえに縢の才能や努力の賜物であって、俺には到底真似も出来ない、素晴らしいスキルだ。よって俺は、縢はメシのために全知全能の神であるとすら思っている。頼む、俺の分も確保してくれ」
「よろしい。入刀の儀式を行う」

 常守さんとデバイスを構えながらその瞬間を見守る。デバイスの画面なんか見ていられるか!デバイスを信じて私は私の目で見るのだ!半熟卵の断面を!

「あ、あ、おいしそう…」
「凄い…どうやったら加減が分かるの…?縢くん…」
「勘」

 秀星が器用に4等分してくれたそれを、お皿に盛ってくれる。お皿の上には、狡噛さんが力のままにちぎった残念レタスや、些か残念気味に切られたトマトや、私が置いただけのパセリがのっている。

「よっしゃ、食べるぞ」

 秀星様が一口、カットしたそれを口へお運びになさった。我々下々はどきどきと彼のリアクションを見守る。

「…うまい!」

 許可が出た!カットなんて面倒なことは出来ないので、かぶりつく。

「ん~~!!!」

 独特の風味なとろける黄身、ほどよい弾力の白身、ジューシーな肉汁。さくさく神がかったキツネ色の衣、揚げ具合。なんだこれは。

「おいしい…!」
「縢、、よくやった」



「では皆の衆、明日もこの時間に尋ねてくるがよい。バケツプリンが貴様らを待っておるぞ」
ラジャー!

 皆で秀星様に敬礼をして、本日は解散だ。あの後、食後の運動にもう一度スコッチエッグを作り、タッパに分け、それからデザートを一つ作った我々は、満足気にその場を後にする。

 完璧に冷えた素晴らしきバケツプリンを楽しみとし、今日の残りを生き抜き、明日それにありつくまで、槍が降ろうが天変地異が起きようが地球が終わろうが暴動が起きようがシビュラが終わろうが意地でも絶対に死なないものとする!

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