「すぴー……」
「…アホみたいな効果音出して寝てるわね」

 クニっちが俺に引き続き、赤いマジックペンをとった。

「こうした方がいいわ」

 頬にぐるぐるマークが足された。俺が先程黒マジックで描いたネコヒゲと融合して笑えることになっている。額には既に肉と書いている、ぬかりはない。ただでさえ笑えるのに、つーか既視感がある。なんかにこういうキャラいただろ。

「待てよ…」

 の顔にカメラを当て、画像検索していく。

「――これだ!」

 ベコちゃん!頬はぐるぐるマークじゃなかったし全然違うけど。ベコちゃん。ここのケーキ甘すぎんだよな。生クリームはもっとこう、ふんわり仕上げて、甘さ控えめに、思うがままに自分好みな菓子が作れんのは料理人の特権だ。

「…ふ」
「…ぶふっ」

 耐えている腹筋が痛い。ベコちゃんアバターホロを購入して投影したが、微妙にベコちゃんに近い。アホみたいなツナギが中々似合っている。
 俺がアホみたいな睫毛をくるんと書き足したら、クニっちが涎を垂らしているの口元に赤いベロを書き足した。

「GJ」
「そっちこそ」

 (y)れば、クニっちも俺にそう返した。それからクニっちがの髪を慎重にまとめ上げてくれたので、ホロの赤いリボンの位置を合わせた。

「GJ…」
「そっちこそ…」

 再度(y)りあい目を合わせ、シンパシーを得る前に俺たちは即座に顔を逸らし合う。ダメだ。ダメだダメだ。笑うとこいつが起きる。とりあえず、写真を撮る。パシャリ。よし。これでミッションコンプリートだ。とりあえず、とりあえず立ち上がりクニっちとオフィスを離れる。ダメだ。トイレでひとしきり笑ってこよう。これ以上ここにいたら腹筋が裏返って死ぬ。



「何故縢も六合塚も席を外しているんだどこに行った何をしているんだあいつらは全く……――!?」

 …宜野座監視官の声だ。雨で落ち着いて湿度でぐだって久しぶりにぐでぐでに寝れそうだったから死んだように寝てたのに、これは三度寝くらいなのに、どうして。まだ寝てたい。

「どうしたその顔、…っふ、いや、恰好、なんだ貴様そのホロは、っふ、ふ、ふざけているのか?」

 狡噛さんじゃないから寝てても騙せる気がする、悪戯される心配も無いし寝るに徹する!若干涎が垂れている感じがあるし、顔を洗ってこなくちゃならないし、面倒くさいし、でも宜野座さんがふふふふ言っている。どうしたんだろう。そんなに唾を垂らして寝ている人が珍しいんだろうか。絶対違う気がする。

「んー…怒るか笑うかどっちかにしてくれませんか何の話ですか?」

 ぐーっと伸びをしていたら、宜野座さんが珍しくも人の私物――弥生の手鏡を手に取り、大げさに顔を逸らしつつ私に突き出した。鑑よ鑑よ鏡さん、世界で一番おいしいご飯を作るのは秀星。よく分からないけど覗き込む。

「―――っあーーーー!?」
「っうるせ、…何だ、って、…‥っ何だ?っふ、」

 狡噛さんが耳を押さえ、片目を瞑りながら入室してきた。最悪だ!

「狡噛さん!ちょっと!取って!スキンケア、違う、除草剤、除光液、それはマニキュア、スキンケアオイル!?メイク!メイク落とし!」
「クレンジング、だろ、」
「っそれです!志恩ちゃん!志恩ちゃんなら!狡噛さん受け取ってきてください1円あげますから!」
「狡噛、行ってきてやれ、っふ、」
「無理言うな、笑いを堪えるあまり腹が痛くて行けない、っふ、」

 宜野座さんまでもがお腹を抱えてうずくまっている。許さない。許さない!ぜつゆる!!!

「笑わないで!宜野座監視官までちょっと!」
「すまない、だが、似合っているぞ、、っふ、っは、ははは」
「特にその頭のリボンが、なかなかいい味、出してる、ツインテール、可愛いぞ、っふ、あっはっは」

 キャラ崩壊している。そんなに、そんなにクレイジーだろうか。むかつく、絶対可愛いと言わせてやる。絶対にこれは秀星のしわざだ。今度秀星のお気に入りのお皿に唐辛子スプレーかけてやる!



「っはあ、はあ、志恩ちゃん!クレンジングください!」
「なぁに、メイクでもしたの?――っぶ、」
「もういい!もういいから!そのリアクションはもう飽きたの!」

 既に全身ホロになっているので、上からホロをかけられず、どうしようもなくなった私は、顔をどうにか手で隠しながら分析室に全力疾走したのに、目元とオデコが隠せなくて、色んな人に顔を逸らされてきたのだ。秀星ゆるさない!

 笑い悶えている志恩ちゃんからクレンジングオイルをもらい、トイレへ駈け込んで落としてやる。落としきったらそこにはツインテールの超可愛い女の子が居た。でもなんか赤が可愛くない。赤、なんで赤!きらい!赤は志恩ちゃんのために存在するのに!

「ありがとう志恩ちゃん。秀星に請求してね!絶対秀星だもん。…ねえ、いつまで笑ってるの!?」
「ごめんなさいね、可愛くて、ふ、っふふ、そのツナギも中々可愛いわよ、っふ、」
「もー!みんなきらい!!」



「――秀星!」
「お、まともな顔に戻ってる。残念」
「……秀星きらい!!」

 入室して縢くんに襲い掛かっていったさんは、凄く、スーツじゃなかった。既視感がある。何だっけ、ええと、ええと、

「ああ!さん、ベコちゃんですか?二つ結び可愛いです!」
「好きでしてるんじゃないです!秀星のせいです!」
「結んだのはクニっちだ!」
「弥生!?」
「残念ながら、六合塚はさっき上がったぞ」
「~~今度志恩ちゃんと二人の時間邪魔してやる!」
「…何かあったんですか?」
「ああ、写真。常守にも転送してやる」「やめて!」

 さんが狡噛さんに襲い掛かった。わちゃわちゃしている。さんの髪が片方解けた。

「あ、解けちゃいましたよ。さん、ちょっと」

 圧を感じる。

 どうしてこないだから常守さんは圧を出すんだろう。怖い。狡噛さんが普通に私を開放するくらい怖い。背筋がしゃんとして逆らえない穏やかな絶対的な圧なので促されるまま椅子に座ると、もう片方も解いてくれた。だがしかし、これは、これは、再度髪を結ばれている!

「ほら!高い方で結んだ方が似合います。可愛いです!写真撮っていいですか?」
「いやです」
「なんでですか!こんなに可愛いのに!」
「本当だ。似合ってるな」
「お子ちゃまって言ってるでしょ」
「いや。縢、リボンの色変えてやれ。赤が似合わな過ぎて面白いことになってる」
「やっぱり面白がってるんじゃないですかこのこのこの!」

 さんが狡噛さんのところに襲い戻って行った。本当にさんは狡噛さんのことが大好きなように見える。リボンの色が緑に変わった。つなぎがオフにされて、あれ、普通に可愛いことになっている。つなぎも似合ってなかったことは無いけど、ちょっと情報量が多かったから。

「宜野座さーん、見て下さい、さん。可愛くないですか?」
「…何故俺に聞く。別に普通に似合っているんじゃないのか。さっきよりはとてもいいと思う」
「さっきのと比べる方がむかつくんですけど!」

 狡噛さんがちゃっかりさんを捕獲して頭を撫で回していた。

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