するすると、狡噛さんが、彼女のぴんと跳ねているアホ毛を撫でている。さんは、眉を下げて狡噛さんを見上げている。

「っや、やだ…そこ、触らないでください、」
「何ヘンな声出してんだ」
「だ、だってそこ、性感帯なんです、っはぁ、」
「は?」「は?」「っふ」「えっ」

 狡噛さんが面食らい、喉をごくりと動かしたのを見た。「ぐっ」さんの蹴りが決まった。

「冗談ですよ」
「変な冗談はやめろ、。風紀を乱すな」
「それ私に言います?風紀を乱してるのは狡噛さんでしょ?どうしてゲーム機の使用は注意するのに私の髪を梳くことは注意しないんですか?ゲームっ子への差別ですよ」
「一理あるわ」
「差別反対!」
「そうね。爪の手入れも許可してもらえませんか」

 さんが六合塚さんに抱き着いて、六合塚さんが鬱陶しそうに振り払った。かわいそう。とぼとぼと彼女が狡噛さんの方へ戻って行って、後ろから、座っている彼の髪を撫で回している。
 どうしたんだろう。今から天変地異でも起こるのかもしれない。さんがデレている気がする。

さん、大丈夫ですか?」
「え?何がですか?」
「……いえ、その」

 狡噛さんが彼女の手首を取った。ダメだ、目に悪い。何だあれは。思わず立ち上がっていた私は椅子に座り込む。

「何してんだ」
「アホ毛立たないかなって思って。立ちませんね、むかつきます」

 あれは完全にいちゃついている。平和だけど、狡噛さんの無駄に優しい声が一係の空気の温度を上げている。あれは危険だ。

「すみません、あの、仕事しましょう、仕事。報告書、報告書出してください」
「常守監視官、慣れた方がいいですよ」
「六合塚さん、だ、だって」
「――。あんたのアホ毛は、潜在犯と、狡噛と、他に何を受信するの?」
「狡噛さんは受信しません」
「嘘こけ」

 狡噛さんが椅子を回して、眉を顰めたさんが、彼の膝の上に座らせられてしまった。もうだめだ。やめよう。私が報告書を書いたらいい。でも目が離せない。なんでだろう。幸せなのに物悲しい。私も少し、恋人が欲しくなってきた。

「あ、秀星のご飯も受信します!」

 にっこり笑ったさんが可愛かった。六合塚さんが近寄って行って、彼女までさんの頭を撫でている。宜野座さんの咳払いが聞こえる。平和だなあ。

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