!』
「っふぁい!?」
『起きろ!データ解析の結果が出た。出動だ、今すぐ起きて出てこい!』
「は、は、はい」

 寝起きの頭が痛い。目はまだ閉じている。宜野座さんは職務上大変横暴だ。



「常守、を連れて行け」
「は、はい」
「やった!秀星がいない!私は自由だ!」
「ひどくね?」

 きゃっきゃ跳ね回っているさんを引っ張って、宜野座さんが近づいてきて、征陸さんの横で立ち止まった。宜野座さんの面持ちはかたかった。

「征陸執行官、を頼む」
「心配すんな。コウもいるさ」
「常守監視官、の扱いも覚えてもらわねば困る」
「は、はい。頑張ります」
「いいか、とにかくこいつが駆けだしたら撃つんだ。分かったな」
「…それはケースバイケースだと思います。さんが撃たれるようなことを何もしていない場合、私は撃ちません」
「秀星!どうしよう!常守監視官が優しい!」
「お前そんな死にたいの?」
「やだ死にたくない」
「…行くぞ、縢、六合塚」

 宜野座さんは私を睨み付けて、…彼らが行ってしまった。
 振り返れば、さんは狡噛さんに腕を掴まれて捕獲されている。狡噛さんが私を見る。

「どうする。常守監視官」
「えっと、ひとまず、さっき宜野座さんたちと打ち合わせたように、突撃しましょう。皆さん、よろしくお願いします」

 さんと任務にあたるのは初めてだ。縢くんのように、些かちゃらちゃらとふらふらしているさんは、はーい、と間の抜けた返事をにっこり返してくれた。あくびをしながら、ぐーっと伸びをして、準備体操をしている。……大丈夫だろうか。少し不安だ。

 廃棄区画に突撃し、薄暗い雰囲気に、いつまで経っても慣れないな、と少しの恐怖心が顔を出す。皆、ドミネーターに手をかけている。狡噛さんが先頭に、さんがその後ろを、そして、私、征陸さん、と続いている。といっても、さんはふらふらしているから、列は乱れている状態だ。

「いいか、。一人で突っ走るなよ。伸元が心配するからな」
「宜野座さんも優しいですね!」

 彼女の髪が、少し、アンテナのようにぴょこんと立っていて、…いつものことなんだけど、多分、所謂、アホ毛と呼んで差し支えないものだと思う。彼女はくるくる回りながらスキップをしていて、…足音を抑えると言う概念は無いようだ。狡噛さんが振り返って頭を抱えている。
 まだ危険度は低いんだろう、皆の雰囲気はあまりピリピリしていない。ふと音が止んで、ああ、彼女の足が止まったんだ。ばっと彼女が壁に顔を向けた。

「――あっちだ!」
「っバカ、常守、撃て!」
「っえ、え!?」

 さんが嬉しそうに笑ったのを見た。彼女はもう、遥か前方を走っている。狡噛さんが焦った顔で一瞬私を振り向き、視線を離しながら舌打ちをして、彼女の背を追いかけて行く。

「嬢ちゃん、俺から離れるなよ」
「で、でも、二人は」
「無理だ。俺らには追い付けん。まず、コウがの手を取れなかっただろ?走りだけってーなら、コウだって追いつけるかもしれんが、今回は怪しいぞ」
「そ、そんなに早いんですか、さん」
「ああ。見てみろ。それに、は早いだけじゃない、身軽なんさな」

 向こうの角を凄い速度でさんが曲がって行って、その後ろを少し遅れて狡噛さんが追っていく。凄い速さだ。…だから撃てと言われたんだ。

「どうしよう、何かあったら、」
「もうどうしようもないさ。しょうがない。俺は前もこの廃棄区画に来たことがあってな。確かあっちに地図に無い近道があるはずだ。行ってみよう。もし迷っても、マップは頭に入ってるな?」
「は、はい。でもどこに、」
「多分やっこさんは上にいるんじゃないかねえ」

 宜野座さんに通信を入れようとしたら、狡噛さんの焦った声が通信機に入った。『すまんギノ、見失った!フェンス飛び越えられた!おそらく犯人は上に逃げ込んでる。俺も別ルートで向かう!』『常守監視官はどうした!』「あー、俺と一緒に居る。こっちは大丈夫だ。俺たちも上に向かってる」、どこに居る、応答しろ、命令違反だ、合流しろ!』「一つにしてやらないか、伸元」『悠長なこと言ってる場合か!』「自分で行っちまったんだ、しょうがないさな。おっと、近くなってきた。一旦切るぞ」

 とっても楽しい。一人、エリミネーターで執行したら、物陰から二人に襲われてしまい、一人の頭を踏みつけながら、形状を変えて行くドミネーターを、片手でぶっ放したわけだけど。更に右手側からなんか盛大に殴られてしまった。痛い。吹っ飛んで、怒声を上げて突っ込んでくるそいつを執行しようと銃を構える。さっき変形したままでよかったのに。とんだタイムラグだ。まあ、殴られても引き金を引いてればいいだけだ。
 何人居るんだろう。何て楽しいんだろう。秀星がいないから好き勝手しても怒られない!捕獲されない!私は自由だ!ああ、どうやって死んでくれるんだろう。

 征陸さんが人差し指を口に当てる。私も頷いて、物陰から出てドミネーターを構える。「公安局だ!観念しろ!」さんの唸り声と、犯人たちのものだろう怒声が響いている。地に伏しながら、エリミネーターの引き金を真っ直ぐと引いた彼女の口角は上がっていた。血しぶきが上がって、向こうに、別の人影が見えた。「さん!」私たちの銃は、さんが執行した犯人を捕らえていた。認証は間に合わない。征陸さんが走り出して、私の金切り声が響いて、さんの右腕が、反動に耐えきれなかったんだろう、ドミネーターを落とした。また、背骨だけが残って、血液が撒かれる。彼女が屍の中に転がっている。!」

「しばらく右腕使い物にならないかも」
「言ってる場合か!」

 狡噛さんが私の服を破って、ちょいちょいと止血していく。「いたいたいったたいたい!」「学習しろ、この馬鹿が!」「ストレス発散ですよ」「大丈夫か、「征陸さん!私は元気です!今日はすっきりしました!」「血濡れじゃねえか。ほら、拭いとけ」



ちゃん。全治2週間」
「えー、志恩ちゃんのケチ。一瞬で治る医療を施して欲しい」
「そういう問題じゃないでしょうよ」
「どうして?」
「今回のはあんたが悪い怪我」
「事故だったら治してくれるの?」
「ええ。あんたね、周りの気持ちになってみなさい。朱ちゃんとか、宜野座くんとか、」「――志恩、は」
「狡噛さんとか?おかげさまで全治2週間です。志恩ちゃんがケチなの!」
「ああいう無茶はもうやめろ」
「別に無茶じゃないです」
「ああいう行動は慎め」
「ああいうって何ですかああいうって。さっきから。勝手にさせてよ。執行官の代わりなんていくらでもいますよ」

 狡噛さんが凄い顔で私を睨んだ。何か言いたそうに口をひらいて、閉じた彼は、そのまま分析室を出て行った。とんぼ返りだ。何しに来たんだろう。目が丸くなる。

「あーあ。、地雷踏んだわよ」
「なんで?」
「さあね」

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