『親愛なる宜野座監視官へ、より♥』

 出勤すると、デスクの上に、タッパが置かれていた。張られている付箋には、黒い物質を作る天才の名前が、ハート付きで記されていた。しかし、中身は、茶色だ。

「よ、ギノ」
「…狡噛、これはが作ったのか?」
「ああ。食ってみろ、うまいぜ」
「お前に聞いた俺が馬鹿だった。…カレー、か?」

 コウは味覚音痴の天才だ。蓋を開けてみるも、おいしそうな匂いしか漂わない。四隅の一角には、なんと、ポテトサラダと思わしき、黄色い物が存在している。色がある。

「……妙だな。天変地異の前触れだろうか」
「そうだな」

 タッパを持ち上げると、下には白米が敷き詰められていた。

「……どういうことだ?消し炭になっていない」
「伸元。もう少し人を疑うことを覚えなさい。昔のコウみたいだ」
「とっつぁん、そりゃないぜ」

 狡噛がにやついている。どういうことだろうか。しかしきちんと署名がされているのだ、…しかし。縢が作ったものという線が濃厚だが、親愛なる宜野座さん、親愛なる、…親愛なる。

「付箋の裏を見てみなさい」

 親父が近寄って来て、付箋を剥がし、裏返した。乱雑な字だ。『ガミガミメガネの分』

「安心して食え、うまいぞ」

 親愛なる宜野座監視官、の、対義語は、ガミガミメガネか、なるほどな。

「狡噛、お前今日、休憩なしだ」
「労働基準法違反だ。そういや、とっつぁんはなんて書かれてたんだ?」
「俺か?俺は、イケおじ、と、とっつぁん大好き、だったな」
「…類語か?どっちだ?」

12