誕生日祝われる五条

「あ、ごじょ――」
「――。お前彼氏いんの」
「え?」
「2回も言わせんなよ彼氏いんのかって聞いてんの。医者に耳診てもらった方がいんじゃね?」
「…………」

 五条が横暴なのはいつも通りだから置いといて。いない、っていったら、笑われる。いる、っていったら……、何も問題がないんでは? マジ!? 相手の男趣味わりーな! とか言われるかもしれないけど、架空の人に何言われても大丈夫。実際に彼氏がいたら悲しくなるだろうけど、実際はいないから全く問題ない。……え、私、天才じゃ??

「五条、私ね。実は彼氏いるの! 彼氏いるからあんまり話しかけないでもらえると助かりそう!」
「は?」
「ヒッ」

 怖い。すごい怖い。やばい顔をしてる。さっさとプレゼント渡して帰ろう。そもそも誕生日おめでとうって言おうと思ったのに遮られて彼氏いるの発言本気で意味分からない。やっぱり私に言われたくなかった説ある? 皆で一緒に0時ピッタリに祝うのに参加するの辞退してマジで良かった説ある。うわあ悲しい。でも当たり前だよな、普段ブス激ヨワ最弱ミジンコ呪力汚いとまで言われてる私が視界に入る方が五条にとって悪いな。むしろ何で話しかけてきた? まである。謎極まる五条。本気で嫌われているわけではないと思いたい。でもその顔、圧、怖すぎる。怖すぎて怖すぎて震えそう。とっととプレゼント渡して退散しよう。五条は割とお子ちゃまだから、きっとプレゼントでわくわくしてくれるハズ。

「ご、五条。これプレゼント。ごめん捨ててもいいから。でも折角買っちゃったから一応渡させて欲し、ひっ」
「彼氏いんの。聞いてねーんだけど」
「傑に、五条がほしが、ってる、もの、」

 きいたから、と言葉にならず、体が震えてくる。やばい泣きそう。五条、本気で呪力出して来てる。彼のほんの少しの動きで首が刎ねられるイメージが沸く。吸って、吐いて、と意識しなければ満足に呼吸も出来ない。雑魚に最強が本気出しかけちゃダメじゃない? 五条の前ではあまりにも弱い生き物なので手加減して欲しい。五条がみだりに暴力を振ったりなんだりしない人だということは分かってる(なお口では)。でも生物として、本能で恐怖を感じてしまう。滅茶苦茶怖い。

「携帯出せ」

 こくこく頷いて震える手で携帯を差し出す。私の手から携帯を奪い電話帳を開いた五条は、あかさたな……とボタンを押してページをめくっていく。すごい寂しい私の携帯、何をするつもりなんだろう。

「……どいつ」
「な、なにが」
「彼氏誰。傑といつ連絡先交換したんだよ。あと硝子と、夜蛾センと、……あと親? しかいねーじゃん。彼氏誰」
「か、かれし、いない」
「あ? いるんだろ嘘つくな」
「いない、ホントはいないのに、いるって嘘ついたのごめんなさい」
「は?」
「呪力下げて欲しい。こわい。なんでさっきから怒ってるの」
「そりゃ怒んだろ嘘つくな」

 私に彼氏ができると何か不都合でもあるの? 意味が分からない。私はムカついて真四角ボックスのリボンを引いた。五条が呪力をしまってくれたとも言う。五条は未だに私の携帯をカコカコやっている。

「開けてよ」
「何そんな攻撃的なの」
「攻撃的だったのは五条だよ」
「は? 二番煎じじゃんこの箱。硝子の開けてもう喰らったし。二回も同じ手に引っかかるワケねぇだろ」
「硝子何したの」
「ビックリ箱だって。グーパン飛び出てきた。コレもじゃねーの」
「節穴じゃん」
「ア? ちゃんはそんなに俺を怒らせたいわけ? 六眼節穴? オマエの眼とアタマこそダイジョーブ? 風穴開けて欲しいの? 第一まだ祝われてもないんだけど? 祝えよ。糞みてえな嘘ついてんじゃねえよクソ女」
「ごめんなさい。でもこれグーパンの下にちゃんとプレゼント入ってるもん」
「グーパンはあんのかよ」

 ったく、と言いながら五条はグラサンを少し上げて、私の手元の箱を凝視した。クソ顔整っててムカつく。まあごめんなさい六眼節穴は言い過ぎたけど、でもねコレただのビックリ箱じゃないから。からくりビックリ箱だから!!! グーパンを攻略すると下にちゃんとプレゼント入っててソレが手に入るタイプのなんか凄い箱だから!!

「下に紙切れと何これ、紐?」六眼凄い!!
「バーゲンダッツギフト券! あと、傑がリボン入れとけって」
「ハァ?」

 ハァ? って顔をされている。リボン欲しかったんじゃないの? 真っ赤なリボン5メートルもあれば十分なんじゃない。細いのじゃなくて、横幅は少し太めのやつがいいかな、ってとんでもない注文、五条何するんだ? と思ったけど心当たりないの? ヤバくない? よく分かんないけど、

「誕生日おめでとう五条。じゃあまたね」

 まあいいや。とそそくさその場を後にしようとしたら「オイ」って五条に凄い勢いでなんか投げられた。ギリギリ受け取れたのは私の携帯だった。忘れてた。

「…………あんの野郎」



 数日後、傑が五条の誕プレボックスに何個か入れたっていうゲームをするために、ソフト選びにみんなで五条の部屋に行った。ら、白いレースの女物の上下揃え下着しかも明らかにオトナなやつ、と、私があげた赤いリボンが、お菓子やらなにやらにまぎれながら、その箱の中に一緒にあった。私はドン引きした。硝子はうわって言ってウケてたし傑は頭を抱えていた。謎は解けた。