誕生日祝われる五条

「悟。ちょっといい?」

 コンコンと扉をノックされた。傑の声に、もしかして、と、ちょっとだけ期待しながら扉を開ける。

「なに?」

 パンパンすごい音が鼓膜を震わせて、顔にクラッカーの中身を食らってた。傑と硝子だ。

「誕生日おめでとう、悟」
「めでと」

 俺、友達に、誕生日祝われてる!!?

「やんよ」
「悟のお眼鏡にかなうかは分からないけど」

 ボーッとしていた俺に、二人はあからさまにプレゼントですと包装されている箱を押し付けてきた。
 俺、友達に、誕生日祝われてる!!!

「……あんがと」

 友達って、こんなこともしてくれんだ。呆然と驚き、くすぐったいカンジでプレゼントを受け取る。胸がそわそわする。中身何入ってんだろ。

「今開けんなよ。後で開けろ」
「そういうモン?」
「私はそう」
「フーン」

 硝子の真四角の箱は今開けちゃいけないらしい。傑のはどうっすかな。てかアイツどこいった? 目線を彷徨わせても傑の後ろに埋まってもいない。首を伸ばして見てみても残穢すら無い。いなくね?

は?」

 傑が頭の裏をかきながら困ったように微笑む。

「今日は早く寝るんだって。ごめんね、私と硝子だけで」
「え、や、そーじゃなくて…」
「もだもだしてんな。夏油、コイツ耳赤いよ。誰にも祝われないより私たちに祝われて少しはマシだったんだろ」
「は、イヤすごい嬉しかった。からもいねーのかな。って」
「……そうか。ふふ」

 右見ても左見てもはいない。片手に二つ詰んでる誕生日ボックスを早く開けたくてそわそわする反面、まだもうちょい喋ってたい気持ち半分、もしかしてケーキなんかあったりしねぇかな庶民って誕生日にケーキ食うんでしょの期待半分(硝子の誕生日は甘いモン食わねーってバースデーケーキなるもんの出番はなかった)、いないのなんで。早く寝る? ふざけんな。悟様爆誕の今日は0時から23時59分59秒コンマギリギリまでお祭り騒ぎだろずっと祝えよ何考えてんだアイツ。怒りと嬉しさが混在している。

「……私、来年は誕生日に人は素直になるのかって研究でもすっかな」
「人が素直に答えてんのに硝子ひどくね?」
「来年も私の誕生日に煙草くれよ。そしたら立証できるわ。私も煙草の力で素直になろうと思う」
「どう素直になんの?」
「お前らのことクズだと思ってるけど嫌いではない」
「マジで? 素直じゃん」
「おう。だからは私達に一番に祝われたくないんだよ」
「……」
「硝子、流れるように落としたね」

 ツラ。俺はお前等に一番に祝って欲しいし傑も硝子もそれに応えてくれるのにアイツは違うから俺の誕生日祝ってくれないってワケ?

「だってさぁ、あの子、私の誕生日の時もそうだったよ。人の誕生日付近に、規則正しい生活になる傾向があるみたいだな」
「ぴったりに祝って欲しい人でも他にいるのかもね」
「親とか、彼氏とかな」
「硝子、仮にも誕生日に悟にとどめを刺してあげないように」

 ごほん、と咳払いをしながらンッンーと傑が硝子の肩をポンポンやっている。
 親とか、彼氏。
 彼氏。……彼氏か。

「……アイツ男いんの」
「いない方がおかしい。可愛いし」
「…………すぐるぅ」
「あーあーよしよし悟、大丈夫だよ。今は居ないと思うよ。いつ出来てもおかしくはないけど。だから頑張ってね」