夏油の髪を結ぶ

 スキマ時間は有効活用するべきだ。主に学生にとっては、青春を謳歌するために!

 傑が教室に来る時間にはブレがある。少なくとも座学5分前には来ることが多いけど、5分じゃ足りない。テレビでヘアアレンジ特集をやっていたあまり、最近どうしても傑の髪の毛で遊びたくて遊びたくてうずうずしている私は、いらないものでカバンを重くして、凄く頑張って毎日ちょっと早起きして、朝15分前に教室にやって来ていた。
 そして今日、傑が10分前に来た!! チャンス到来。五条は10分ないけど微妙にウザい感じの5分以上の遅刻または5秒後とかに来るから、私が持ちうる時間はそれなりにある。機が熟したのである! 私の遊びたい心のための機!

「傑!」
「ん?」

 椅子の横の床にスクールバッグを置く傑が座るのも待たず、彼の机の上に自室から持ってきたものを次々と並べていく。大きめの手鏡、ヘアゴム、シュシュ、バレッタリボンカチューシャヘアバンド、エトセトラエトセトラ。
 結ばせてください。遊ばせてください。結んでみたいです。髪の毛いじらせてください。硝子はボブだから微妙にしか遊べないんです。お願いします。ブラシを装備して傑を一心に見つめた。

「……結びたいの?」

 仕方ないなぁと傑が椅子に腰を下ろした。傑は微妙にノリが良い。



「かわ、かわいい、えっ? 可愛い」

 残念ながら不器用だった私にはヘアアレンジは難しかったため、傑の傑による傑のためのヘアアレンジが目の前で繰り広げられていた。ポニーテール、ゆるめのくるりんお団子、おさげ。私はさっきから写真をぱしゃぱしゃしているだけである。

「キモイ」
「そんなことない」
「自分でもこれはどうかと思うよ」

 以上が、ついに完成したツインテールへの各々の感想である。「ブリキュアみたい!」チャイムが鳴った。ガラッと教室の扉が開いた。

「エッ……何、キモ」
「ひどい。私がツインテールするより可愛いでしょ💢」
「……何も言えねぇわ」
「ホントに」

 アレ夜蛾センいねーじゃん。朝の大に時間かかってんじゃん? やめてくれよ硝子。
 パシャパシャ写真を撮っていると傑がゴムに手をかけた。制止する。

「傑。魔法少女の衣装持ってきたら着てくれる?」

 サイズ合うのねーだろ。想像したくもないんだけど。誰が得すんの? それ。
 可愛いじゃん。みんなしてひどいよ。塩顔の普通にイケメンのイケメンがツインテールしてても目に優しいもん。ムキムキっぽいから服は合うか分かんないけどきっと面白いよ。イケメンだから許されるに違いないんだよ。私は一回見てみたい。五条君がしても普通に可愛くて腹立つだろうから見なくていい。でも二人揃って白黒ブリキュアは絶対いい。無駄にイケメンの無駄にクオリティ高いお笑い芸人デビューできる。

「お前たち席に着……。なんだ、傑。イメチェンしたのか」

 の仕業か。次の呪骸はそんな髪型も悪くないか……と先生が呟きながら授業を始める。あ、あっ!!? そうだ夜蛾先生は人形を作るのが趣味の裁縫狂い!!!

「ハイ先生!! 夏油君と五条君に似合うブリキュアみたいな可愛い衣装作って欲しいです!!」

 先生に頭をはたかれた。