五条が出張長いってダダってる
「五条、」
ただいま、って言葉は正面からガバっと凄い勢いで抱き締められたせいで彼の胸の中に吸われてしまった。五条の匂いする。認識すると、ドッと疲れが押し寄せてきた。
ていうか五条、よく毎度毎度出張から帰って来る時間ジャストピッタリに玄関に立ってるよね? 怖いんだけど。
「んんんん」
「おかえり」
「んーん。んんんん!」
「んー?」
ただいまじゃないの。離して!!!
五条の胸板がとても、かたい。ぎゅうと後頭部に回っている手に更に力がこもった。痛い痛い。鼻折れる。さっき胸と言ったけどこれは腹筋な気がしてきた。ばいんばいん感が薄い。あと割れてる。バキバキのフィジカルお化けめ。あれだな、玄関の上に立っている五条と玄関の下に立っている革靴の私で身長差が悪化しているんだな。
靴を脱ぎたい。体を休めたい。広々としたベッドでごろーんと寝たい。疲れた。もう立ってたくない!
無限の中に引きずり込まれて足が浮いたかと思えば床に引き上げられる。首におでこをすりつけられている。まるであれだ、グレートピレニーズとかいう白い大きすぎる犬のようだ。白いし。大きいし。でもキャンキャン跳ね回るところはポメラニアンにも似てる気がする。スピッツよりは丸い。
五条はまたざっくりした薄い服一枚を着ていて、Vネックから出ている素肌、その鎖骨に私はおでこを埋めさせられる。あったかい。彼の手が頭の後ろに回り抱き締められているので抵抗は無理。頭抱くの好きだね。首の骨折らないでね。
「ねえ。帰ってくんの遅くない? 何十日僕を一人にしたと思ってんの」
「しょうがないじゃん。海外案件ざーっとやってきたんだもん。褒めてよ」
「なんでお前なんだよ。別のヤツが行けよ」
「一番適任だから!」
「ウッゼーー」
「ぐぇ」
締まってる締まってる首締まってる!!
ギブギブ! って五条を押し返す。五条は力を緩めてくれたけど離してくれる気はないようで、くっついたまま私をしゃがませ自身もしゃがみ、器用に私の靴を脱がせている。なんでそう無駄に器用なの? 五条悟だから。
靴を脱がせてくれた五条。しばらくすると無限が解けてマットの上に足がついた。しかし。
「いつまでくっついてるの」
「いつまでも」
「やだよ。甘いもの沢山買ってきたから。そろそろ離して。そのうちダンボールも届くけど、今少し持って帰ってきたから。お土産みようよ」
「やだ無理」
ダダっ子じゃん。これ普通に言っても無理なやつだな。五条は変にスイッチが入るとテコでも動かない。へそを曲げたごじょちえんじになってしまう。仕方がない。
要約、五条の主張は寂しいから離れたくないだと思う。傑に抱き締めてもらわなかったの? どんだけ寂しがりなんだこの男。
「手洗ったら、ソファで五条に抱きしめられながらお菓子の紹介してあげる」
「……3秒でやって」
「むり」
やっと五条が離してくれた。
五条はヘヴィーとついてるキャリーを軽くヒョイっと片手で持ち上げリビングに持っていってくれる。……片手で、……片手であのHEAVYを……?
いつものぶかぶか戦闘服からじゃ分かりにくいけど、一枚脱げばピチピチTシャツの中身はムキムキなんだよなあ……。
「ほら早く。3秒で支度しな」
自分勝手五条。
私は後ろを向いた。して靴を揃えようと思った、ら既に揃えられていた。さすが五条。
それから洗面所に移動して手をしっかり洗う。まだーと五条がダダってる声が聞こえてくる。急いで手を拭いてリビングへ行けば、あからさまに頬をぷくっと膨らませて不貞腐れている五条があぐらをかいて座っていた。まだ30秒も経ってないと思うんだけど? あと鍵って概念知ってる?
五条が座る脇には、なんとキャリーが開けられ中身であるお土産の箱がたくさん見えていた。無限万能すぎない?
「早く」
急かされた。仕方ないので彼の開いている足の間に腰を下ろす。
「あ~~……」
ぎゅううううう。大きな腕が私の体に回される。隙間ないくらい密着されてしまうのはいつもの流れだ。
お土産見るって言ったのに動けないんですけど。でも私はお土産を見たい。なんかおいしそうだったお土産を食べたい。
しかし、腕をキャリーに伸ばすと絡め取られ封じ込まれ全く身動き取れなくなった。
「お土産見るって言った」
「無理。ねえ、何十日ぶりだと思ってるの。そっけなくない? まずこっち向いて座ってよ」
「いや後ろから抱き着いてきたの誰?」
「お前が背中向けて座るからだろ」
ごじょちえんじ!!! 五条はいつも俺様理論なんだ。理屈が通っていないんだ!!
「私が背中向けて座っても抱き締めなきゃいいじゃん。しかも自分は出張でいないこと多いのに私は行くなって言うのもおかしい」
「おかしくない。僕は長くても一週間も空けないじゃん」
「教職占めてるのが大きいよね、それ」
「オマエは高専で反転してればいーの。任務なんかもう行かないで」
「うーん、わがまま」
「僕の言葉は神の言葉だよ? 事実最強の言葉なんだけど?」
「でもそれじゃあ、最強が目指す最高の世界にならないんじゃない?」
「ハッア~~???」
の癖にクソ生意気なんだけど。悪いのはこの口か? 頭か? 一発イっとこっか♡
ヤバイ。
思った時には遅かった。勿論私は押し倒され、「一発と言わず一晩中イこうね♡」ジエンドである。
高専の頃から聞いてる言葉だけど、最後だけニュアンスが変わっちゃったや。
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