五条にエビ料理作ってもらう

 今日はエビマヨ。エビチリ。エビオーロラ!
 エビが凄く安かったのでいっぱい買って来た。7パックくらい買って来た。
 るんるんエビの殻をむきながら、1パックむいた辺りでもういいですと心底思ってしまったので、エビをまな板の上にあげたまま私はチリソースの調合を始める。
 エビの殻むくの、ちょっと面倒すぎる。恵召喚しようかな。あ、虎杖くんでもいいかも。

「お前エビの背ワタ抜かないの? 尻尾も取っちゃいなよ。てかキッチンペーパーで拭いた?」
「ヒッ! 五条! いきなり現れないで!」
「大量のエビどうすんの? 僕エビフライがいい」

 音もなく背後に立っていた五条が耳元で喋って来たのでえらい吃驚してしまった。まだ心臓がばくばくいってる。びっくりした。びっくりした。それにしてもエビフライ。エビフライもいいな。でも衣つけるのめんどうくさい。

「私、エビマヨとエビチリとエビオーロラが食べたい。エビフライも食べたい」
「お前そんなにエビ好きだったっけ?」
「普通に好き。安かったの。見て。この値段。五条、庶民にとってはね、このくらいのグレードのエビが普通で、この値段が安いの」
「へ~。刺身で食べたら腹壊しそうな鮮度だね」
「揚げるからいいの💢」

 イラつきながら、「い゛っ」取る予定の無かった背ワタを取る為にエビの背中に包丁を立てたら貫通して指まで刺さった。クソ五条。串でやれば良かった。

「あーあ。相変わらず不器用さんだねぇ」
「誰のせいだと思ってんの?」

 五条が私の手を取って口に含む。ちょ、先にすすがせてよ! 凄いエビ臭だと思うし雑菌入ったらどうするの。ていうか当たり前みたいに舐めないで?

「ん。僕のせいじゃ絶対なくない?」

 ちゅぽん、と恥ずかしい音を立てて私の指を口から抜いた五条があっけらかんと言う。ダメだこの男ふざけてる。
 とりあえずすすごう水を出そうと蛇口をひねったら捻りすぎてジャー!って出たけど構わず指をすすいでやる。ブアーッ!て四方八方に水が飛び散った。水圧め。五条は微塵も濡れていない。

「何してんの。ウケるんだけど」
「吃驚してるの! イライラしてるの。煽るなら手伝って欲しい」
はイライラじゃなくて恥ずかしい気持ちになってるんだよ。僕に指舐められて吃驚しちゃったんだよね。僕もお前の怪我ちょっと吃驚したからね。あと無限で選別して僕の口内で雑菌殺しといたからダイジョブだよ♡」
「ひえぇ……」

 あまりにも怖い。誰でもいきなり指舐められたら吃驚するよ。こっちはただでさえいきなり背後を取られてて指まで刺して吃驚してるのに。
 五条はスッと包丁を手に取って、五条の手に対して小さすぎるエビの背中から、魔法みたいに背ワタを出していく。仕事が早いし的確すぎる。プロの技を見てるみたいで拍手したくなってしまう。

「危ないから僕が背ワタ取ったげようね。エビの殻むくのめんどくさぁ~い☆ ってとこだっただろうけどそれでいい?」
「……うん」
「うん。しょ~がないからこの僕が手伝ってあげまちょうね~」
「ヤッター」
「棒読みやめて?」

 今日の五条は料理がしたい気分なんだろうか。エビフライとコロッケとメンチカツは絶対に買った方が早いのに。でも五条のエビ料理が食べれる。やった!!!



「はい。のことを思って作ったよ♡」

 うまいこと五条のテンションをアゲていった結果、五条は色々作ってくれた。私はエビの殻をむいただけである。まあ7パックむいたから凄い指が疲れたけど。
 目の前には大皿の、エビマヨ、エビオーロラ、エビフライ。あと一品。もう終わりみたいにしないで。あと一品足りないの。ここに私が死守した2パックのエビがある。エビはまだある。私が作ったエビチリ調合ソースも置き去りにされたまま使われていない。

「お願い。五条。ピリ辛のエビチリも食べたいから。あんまり辛くないソースにしたから」
「エビチリ~? 辛いじゃん」
「あんまり辛くないソースにしたから!」
「えー僕もうエビフライ食べたいんだけど」
 私の行動は早かった。大皿からこれまた綺麗に広がって揚がっているえびのしっぽをつまみあげて、
「あーん」
「え、……あーん♡」

 五条が口を閉じて、サクっといい音がした。絶対おいしい。食べる前から分かってる。
 私は五条がさくさくエビフライを食べていくのに私も食べたいのを我慢しながら、食べ切った五条の口から尻尾だけを離脱させた。

「さすが僕。世界一うまいわ」

 知ってる。私は頷きながら五条にエビ2パックとソースを渡して期待のまなざしを送る。五条ははーもうしょうがないなーと言いながらフライパンに油を敷き始めてくれた。やった!!
 少し五条から離れて、私もエビフライをひとつ、つまみぐいさせてもらう。口に入れると、サックサクでふっわふわでプッリプリでおいしさがぎゅって詰まってた。すっごくおいしい。この人なんで普段私の手料理食べてるんだろう。五条ホントに何でもできる。ここ数年十年の私の料理に対する努力の価値が一切見いだせなくなる。比べるのも失礼だからそれはそれでもういいや。
 さくさく食べて、尻尾まで食べて、おいしさに見悶えながらエビを調理している五条にくっついた。エビの行く末を見守る。エビチリになる未来。エビも幸せだろう、こんなに美味しく調理してもらって。



 脇腹にくっついたの擽ったかったかな。ふと五条に名前を呼ばれた。顔を上げると目が合った。

「……オマエ尻尾食ったの?」
「え? うん。さくさくしてておいしかった」
「知ってる? エビの尻尾ってゴキブリの翅と同じ成分してんの」
「え」

 ええ……。



 あれから傑と硝子を呼んで、二人がエビの尻尾まで綺麗に食べるのを、私は微妙な気持ちで眺めざるを得なかった。五条の作ったエビ料理はどれもこれも全部世界一おいしかったし、傑も硝子もおいしいおいしいって食べてくれていて、五条が作ったっていうのに私もなんだか嬉しくて、私も五条の世界一おいしい料理が食べられて嬉しかった、けど。エビの尻尾へのトラウマを植え付けられてしまった。
 私、五条にとって、ゴキブリの翅の概念、……食べたんだ。……もうキスされないかも。