イルミネーション、ツリーに飾りにクリスマスソング。旧時代の宗教的な行事で、ツリーを彩る飾りひとつひとつにすらなんらかの意味があったんだって。赤と白と緑と、金色も交えて華やかにした内装ホロ、私はすっかり浮かれている。

先日は、縢くんと朝早くから街に出て、本物の食材を売ってるお店を梯子してみたり、リースの材料を買ってみたり、それから夜までかけて一緒にシュトーレンを作ってみたり、ちょっと早いけどってサプライズでプレゼントをもらっちゃってみたり。
慎也くんには秘密にしててね、って今日のディナーの相談にも乗ってもらって、来年は俺に頼んでよ!と胸を張った彼が提案してくれた沢山の料理から、一品ずつ選んで、コースみたいに組み合わせるのも楽しかった。食前酒もつけたりして、それぞれ注文して宅配指定にしたのだ、といってもドローン配送で全部一緒に届くようにしてしまったんだけれど。

あれよあれよと当日になって、でもまだ縢くんからのプレゼントへのお返しを考えて、うつ伏せでソファに寝転がりながらショッピングサイトを漁ってみている。それにしても、やっぱり見当もつかないので、こういうのは彼と親しい私の旦那さんに聞いた方がよっぽど早かった。机を挟んで、向こうのソファに座って本をお供にしている彼の方をちらりと窺えば、机上に飾ってあるそれも視界に入って、純粋に嬉しい気持ちがこみ上げる。縢くんの趣味にしては少し落ち着いた雰囲気の小さな卓上ツリー。ちゃんが好きそうなように作れたからさ、そう言って笑った彼はきちんと人のことを考えられる子だ。嬉しくて、ありがとうって彼を撫でまわしたのは言うまでもない。
「どうした、」っと、彼が私に気が付いたようだった。

「慎也くん、縢くんの欲しいもの知らない?」
「…そういえば、アイツはなんだかって店の乾燥ハーブが欲しいって言ってたな」
「ああ、こないだ縢くんと行ったお店のかも、ありがとう、それにする」

お店のページを開いて、少し値段はするけど、コアなものまで入ってる感じのハーブセットがあったから、それ。一部聞いたこともないようなカタカナの羅列に目を通して、でもきっと彼は嬉々としてそれを使いこなすに違いなかった。端末をいじっていると慎也くんが立ち上がったような気配がしたので、足をあげた。彼がそこに腰を下ろして、私はその上に足を降ろす。彼の太腿はかたい。私のお気に入りのソファは大層柔らかいことがよく認知できる。ラッピング指定のギフト配送、追加で料金を支払って明日の朝届いてるようにして、と。彼の手がなぜだか私のふくらはぎの裏を行ったり来たり遊んでいる。購入手続きを完了させて、現在時刻を確認してから端末を閉じる。お腹もすいたし、丁度いいくらいだった。

「今日はもう本はいいの?」
「……お前の気持ちが少し分かった、かもしれない」
「私はヤなのに自分はいいの?勝手だなぁ、もう」

起き上がって足をたたんでソファの上に座り直す。彼の方を向けば、思ったよりも不貞腐れた顔をしていた。

「それになんだ、こないだ行ったって、出かけたのか」
「うん、縢くんと二人で街に。私、事前に言ったよ?」
「聞いてない」
「慎也くんが本を熱心に読んでる時に」

ぐ、と何も言えなくなった彼はどうしようもなくなっている。ふふふ。ふふふふふ。ちょっと楽しくなってきた。でも冗談だよ、あなたがそれを楽しんでるのは知ってるから、

「気にしてないよ、普段。だって一人きりでもいいことなのに、私の部屋で私が居ても好きなことをしてくれてるって、それだけで何か嬉しいし」

ジト目で私の方を向いた彼が深くため息をつきながらそのままくずれてきたから、私も彼の背に腕を伸ばして、二人ソファに重なり合った。あったかい。彼が耳元で呟く。

「…俺の読書は他の奴のためじゃない」
「…そんなに?」
「そんなにだ。俺はお前が思ってるよりずっと、独占欲が強いと思うぞ」
「待って、慎也くん、かわいい」
「お前な…。そんな口きけなくしてやる」

目を合わせて、少し頬に赤みがさしている彼が唇を薄く開く。私は笑いを堪えている。結婚祝いに宜野座くんが贈ってくれたシンプルな鳩時計が時間を告げる。インターフォンが鳴った。頼んでおいたとっておきのクリスマスディッシュたちの到着だった。

「ね、慎也くん。今年は食事頼んでみたの。ワインもシャンパンもあるよ、縢くんと作ったシュトーレンも。プレゼントは最後ね」

おでこをあわせてぐりぐり擦り付ける。覚えとけよ、と彼は負け惜しみのキスを一つ落として腰を上げた。二人きりの楽しいクリスマスの始まりだ。

ベツレヘムより愛を込めて