「五条。甘いの食べるよね。いる?」
ずいっと口元に差し出されたアメ玉。コイツが最近ハマってるらしいから傑が任務帰りにわざわざ買ってってた映えるタイプの持ち手のついてるアメ玉だ。『どれが気に入るかな。これなんかどう?』『いーんじゃん』ど~でもよすぎて雑に返事したヤツ。宇宙みたいな水色に、銀河っぽいキラキラが散りばめられてたりしている。俺の六眼みたいな見た目になってるけど傑オマエはそれでいいわけ? けど問題は傑以上にコイツだわ。
「……それ傑がオマエにわざわざ選んだやつだって?」
「なんで疑問形?」
「お前の頭があまりにおかしくて天才な俺の頭には理解が難しいなと思ってんだと思う」
「説明ありがとう、でもそれなら天才って言えなくない?」
「突き出すないらねーから。オマエ傑のことどう思ってんの?」
「夏油だってこのくらい五条にもするでしょ、友達だよ」
「……」
真顔で言い放たれて口から魂が抜けるかと思った。言いたいことがありすぎてさっきから何も言葉が出てこない。
傑がオマエのことになると最近くねくねしてんの知ってる? 傑オマエのこと好きなんだってよ。ニヤニヤ俺に言ってきた顔がホント気味悪くてヤバかったんだよね知ってる? アメショップに俺も道連れにされた挙句それについて説明された理由知ってる? 知らないからそう言えんだよな。俺も知らねぇよ。それにしてもさ。
「オマエの言う友達っておかしくない?」
「何が?」
傑と硝子とオマエは回し飲みしてもオマエは俺と回し飲みしねぇし傑と硝子とはベタベタ触り合ってる癖に俺が手ぇ伸ばしたら避けんじゃん。なんで俺にだけそうなのにここへきてこうなわけ。仲間外れって性格悪くない? 行動に一貫性持てよ??
言いたいことがありすぎて、さっきから長い言葉が出てこない。オッエーフェイスを晒すことしか出来てねえ。すると、いきなり下からガボッと口にアメを突っ込まれた。柔らか! アメは硬いけど。って当たってんだけど! ハ!?
「ひゃめろ!」何考えてんだコイツ!
「口開けてるから欲しいのかと思って」
「んにゃわけにぇーだりょ!」
俺の胸板に寄りかかってベッタリくっついて背伸びしてるの頭をひっつかんで遠ざけ、アメ玉を口から引っこ抜く。しんっじらんねぇ! 身長差考えろよ!!
「オマエおかしくない!?」
「何が?」
「恥じらえよ!? それとも色仕掛けってわけ!?」
「え?」
「傑とオマエとオマエと硝子は友達だけど俺とオマエは友達じゃないじゃん!?」
「えっ」
一般常識とか感情の機微とか、そーいうもんに疎い俺ですら、傑がクネクネしながら『悟はのことどう思ってるんだい? 私は結構気に入っているんだけど。ニブすぎて可愛いよね、』って言ってきたから合点したワケだ。わざとらしいくらいニヤニヤ~って感じの、使い勝手良さそうな活きのいい呪霊前にした時でさえ見たことない表情してたわ。あーこれが恋ってやつなのか、って親友の恋を俺ですら理解したのに。コイツときたら、傑が心込めて選んだであろうアメ玉の舐めかけ俺に差し出すどころか躊躇なく口に突っ込んできたんだけど。意味分かんないんだけど。そういうのはいつも通り傑とやれば。意味分かんねぇんだけど!!
「……五条。五条と私って友達じゃなかったの」
震える声に、ハッとしての顔を見ると、なんか目ェウルウルしてるチワワみたいになってんだけど。え。なに? なんで?
「待って何泣いてんの」
「泣いてない」
「いや泣きそうじゃん。情緒不安定ヤバくね?」
「わかんない」
あーあーあー。待って待って待って、泣かないで。意味分かんないんだけど。こっちが泣きたいぐらいなんだって分かって。
ポケットからわたわたしながらハンカチを出しての顔に当てる。いやに心臓がドキドキして落ち着かない。ってなんで俺が慌てなきゃいけねーんだよ!
「だーーから傑オマエのこと好きなんだって。そもそも許可なく人の口にモノ入れんな!!」
「意味わかんない。夏油と私は友達だもん」
「傑は違うらしいつってんだよ!」
思ったよりデカい声出た。は俺の腕を掴んで顔を拭くのを止めさせる。またかよ。触んなって思うならオマエも俺に触ってくんな。
じわじわ涙を溢れさせながら上目に俺を睨みつけているはげきおこ顔になって息を吸う。
「知らないよそんなの! 初耳だもん!!!」
「どうでもいいから泣き止めよクソ女!!!」
なんでかイライラしてきて激しく言い返すと、は俺の手からハンカチを奪ってぐしゃぐしゃになった顔を滅茶苦茶に拭いて最後に鼻をかんだ。洗ってアイロンかけて返せよ。
「ぐす……」
でも涙は止まらなかったらしくまだ泣いている。ホント泣くのやめて。落ち着かないんだって。
「いつまで泣いてんだよ。つーかなんで泣いてんだよ。そんなに俺とオトモダチでいたかったわけ?」
「……」
は黙って顔を逸らして袖で目元を擦る。あとで腫れても知らねーぞ。
無言に居心地が悪くなり始めた頃、もそう感じたのか、彼女はアメ玉を口に入れて舐めて、あって言ってちゅぽんと出した。……それさっき俺なめてんだけど。
何か言えよ。言いたいことがあんなら言えば。言おうとしてたけど、何も言えなくなった。
「……」
「……」
は口をへの字に、リンゴみたいなほっぺをして俺を睨み上げる。睫毛長ぇな。傑は可愛いって言ってたけど、どこが可愛いんだよこんなクソ女。髪はふわふわしてて犬みてぇだし、顔はぷにぷにで柔らかいし、ちょこまか動く姿は小動物みたいで癒されるし、…………。最悪なんだけど。意外と俺、のこと好きなんじゃね?
「……五条のバカ」
「は?」
「五条のバーーーーーカ!!」
「どう考えてもオマエのがバカだろ」
「五条のがバカだよ。夏油の嘘も分かんないなんてカルシウムとったほうがいい」
「それを言うなら糖分だろこのクソバカ」
傑の嘘ォ? ハァ? って顔してたらスネを蹴られた。テメェと口をついて出たところで腹に柔らかいものが密着する。ねぇだからなんでいきなり抱き着いてくんのおかしくない? 俺は男子高生なの分かってる? 本人にその気が無くても下半身が暴走しがちなわけ。こっちが触れんのは悉く嫌がる癖に何なの? 心変わり? 自分から触るのはセーフとかいうクソ自分勝手ルール? いい加減にしろオカシイだろ。
フゥーと息を吐きながら下を見ると、さっきと同じようにが下から俺を覗き込んでいた。真っ赤な顔して、けどキュッて口角を上げたのが可愛いと思った。思ってしまった。
「すきあり」
無意識にか引き結んでいた唇超えて歯にゴツンとアメ玉をぶつけられた。ゼッテーファーストキスで勢い余って歯ぶつけるタイプだろ。
「おみゃへなあ!」
仕方ねーからアメもらって歯を立てバキィと砕いて、眉間にしわを寄せて煩悩と一緒にバリガリボリガリ飲み込んでやる。唾液付きあっま。なんかもうちょっと恥ずいじゃん。おっぱい結構あるのも分かったからマジでもう離れて。オマエが女ってことは知ってたけどよく理解しちゃったからマジで離れて。男子高校生なめんな。ゴクン。
アメ玉のなくなったアメ玉の持ち手をポケットにしまってから、の顔をひっつかんで腕が伸びるだけ距離を取らせる。精神統一。精神統一をしないとヤバイ。片手での顔面掴んでたのを両手にして、頬を伸びるだけ伸ばしてやる。うわめっちゃ伸びんじゃん。もちもちしてやがる。
「オマエ俺の事好きとか言うなよ」
「手ぇはにゃして!」
「ヤダ」
言ったけど、に両手を触れられてウワッてなったから、すぽんっと抜けた。手ぇちっちゃくて柔らかかった。女子の手、って感じ。待ってなんか俺顔赤くなってきてない? 暑いんだけど。いやこれは同級生が女だという事実をまざまざと突きつけられて動揺してるだけだから。は頬をさすりながら気を取り直して話し始める。
「夏油が私の事好きなんて嘘に決まってるじゃん。五条にこのアメあげてみなって夏油が私に言ったんだよ」
「ならなんだって傑はそんなアホなこと言ってるわけ」
「私が五条のこと好きみたいだからだと思う」
「は?」
何言ってんのコイツ?
「でも、アメくらい私は夏油にでもあげるから」
「…………あーそうですか!!!?」
完全に固まっていた俺をが覗き込んで、へらへら笑っている。彼女が手を添えているだけなのに、掴まれているみたいに俺の心臓はクソうるさくて、ちょっと自分がよく分かんない。
「五条もびっくりするんだ? ドキドキしてる。かわいい」
あ~~~~~!! 何やってんだ俺のバカアホじゃねぇのか完全にバカにされてんだろこれ!! てか無限張ればよくね!? バカかよ!!!
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