「すぐ、る、くん?」
「うん」
「…えっと、あの。…大分怒ってる、ね?」

 ニッコリ笑った傑くんの顔に背筋が冷えた。ダメな奴だ、これ。思ったより凄い、怒ってる時の笑顔だ。

「…やっぱり分かってないんだね」

 …傑くんだって悪いのに、って気持ちと、嫉妬してくれたのかな嬉しい、って気持ちと、これから何されるんだろうって恐怖。……話、聞いてくれるかな。



「っん、や、あ゛っイク、ぅ、イ――っ!!」

 話は聞いてもらえなかった。

 理不尽だ。もう何回イかされたか分からない。身体をベッドに押し付けられ足を絡められ、首なんて強く押さえつけられているから、枕に顔を埋めるしかない。そんなにお尻をふりふりさせたら誘ってるようにしか見えないよって、労わりなんか微塵も感じない寝バック。逞しい彼の体の下に敷かれて体重をかけられる息苦しさにフーフー息を漏らしたって、傑くんは私に構うことなくガンガン腰を打ち付けて私を攻め立てる。

「覚えてるかい?昨日のこと。記憶からすっぱ抜けてたりしないよね、悟みたいに」

 説明しようとした私に、言い訳は聞かないよ、って笑ったくせに。それから直ぐに私の口をキスで塞いで服を乱暴に剥いで、快楽の渦に叩き落としたくせに。いつも優しいから、こんなにひどくされたことなんて無い。口に指を突っ込まれて、舐めておかないと自分がつらいよ、なんて言われて、舐めたらもっとやらしくとか注文つけられて! 胸を揉まれて先端をすりすり可愛がられ、下だってくりくりいじられてるんだから出来るわけないじゃん、って反抗心で、イっちゃうときに目を見ながら彼の指に犬歯を立てたら地雷を踏んだ。全体的な私の態度が彼の怒りを買ったんだろうけど、けど…! それからはもう思い出したくもない。彼は私の口の中に突っ込んでいた指を引き抜いて、わざと私に見せつけるようにやらしく舐めあげて、…弱いとこばっかこすられて、腰がくがくしながら潮ばっかり吹かされた。私のいいところ全部知ってる傑くんに、勝てるわけない。

 なんでもいいから許して欲しくて、ごめんなさいって言ったら、謝れば許してもらえるとでも思っているのかい?って裏返されて、…寝バックで死んじゃうくらい犯されている、今、というわけである。

 ベッドの上にはあっちにもこっちにも、使われたコンドームがぽいってされてることだろう。イくのに時間がかかるタイプの、こちらはその間に何十回イかされるか分からないタイプの、傑くんが。もう何回イったか知らない。中の白濁は、逆さにして飲まされて全部私の胃の中にあって、…胃の底からも彼の精液のにおいに犯されてるの、頭がヘンになっちゃいそうだ。

 話ぐらい聞いてよ。こうされるの、全く望んでなかったってわけじゃないけど、ちょっと激しすぎて、私、今日死んじゃうかもしれない。

「ねえ、聞いてる?」
「あっ、ぅ、んん゛!!」

 奥をこじ開けるような荒い腰遣いに、脳天まで快楽が突き抜けた。そんな風にされたら。快楽でとろけかけてる頭に言われたって。返事なんて満足に出来ないに決まってるのに。

「ほら、イきな」

 体重をかけて圧し掛かられ、耳元に甘い声が落とされる。傑くんの顔が見たくて切ないのに。苦しいのに。傑くんの声が暗示みたいに吹き込まれてイってしまう。
 びりびり快感が脳に届いて、脳天が焼き切れるみたいに絶頂した。枕に顔を埋めたいのに、喉を反らせてしまう。傑くんのを離さまいとでも言うように、体を彼の腰にぴったり合わせて反らせて、彼の言う通りにイく。傑くんのものがナカで質量を増して、悪戯に背中を指が伝っていったり、気持ち良すぎて涙が滲む。しばらくそうして、力なく伏した私の荒い呼吸と呻き声が枕に吸われていった。

「――ぅ~~っ、……」
「こんなに素直な体だからね。本気で攻め寄られたら、直ぐに他の男のものになってしまうんじゃない?」

 繋がったままにぐるりと体を回されて正常位。顔見れて、嬉しい。ぶわ、と広がった私の嬉しさと、傑くんの構って欲しい子供みたいな表情。こんなに繋がってるのに相容れない。…拗ねてるのかな。何か言え、って。目で急かされてる。
 溢れかけている唾液をごくりと飲み込んで、頑張って口を開く。と、キスされた。~~っそうじゃないの!

「っん。もう!っわたし、きのうの。わざと、だもん」
「へえ。そうだったんだ」

 ……言葉を間違った気がする。火に油を注いだ気がする。傑くんの仏のようなブチギレ笑みが深まった。どうしようどうしよう、と思っても、傑くんの大きな手に両頬を包まれて発言権が奪われる。

「例えば悟相手なら。私もまだ我慢出来るんだよ。悟、君のことただの村人Aみたいにしか思っていないし」

 でもね、と間髪入れず、傑くんが私のお腹を指先で優しくなぞった。

「誰も彼もみんなに笑いかけるのはダメだよ。皆君に好かれてるって勘違いしちゃうだろう?」
「そんなこと、っひ、あ、あ、~~っそれ、や!」

 ぐ、とお腹を押されて、ぐりぐり先端を押し付けられて腰が引ける。傑くんは、嫌なの?ってわざとらしく心外だって顔をしながら、片手で私の腰を持って引き寄せて、逃げられないようにしながら捏ね合うようなそれを繰り返した。

「どうしたら分かってくれるのかっていつも考えてるよ」

 不満そうに、怒ってるの、拗ねてるの? 鬱憤の晴らし方が大人すぎておとなげない。押さえ、当てられているだけなのに飛んじゃいそうなくらい気持ちいい。きゅうきゅうナカを狭めてしまって快感が増してしまう。

「ごめ、んなさ、傑、きもちい、やめて、これやだ、こわい、」
「アレ、何が悪かったか分かったの?分かって無いのに謝っちゃダメだろ、信じられなくなるよ。これからの謝罪」
「ひっ、」

 これ以上ないって奥まで穿たれたまま、脚を持ち上げられ彼の肩に上げられた。潰されるってくらい体を折りこまれて、上から思い切り体重をかけられる。だめだ、これ。死んじゃうやつだ。期待するように子宮が疼く。これからひどくされるんだろうなってことが、笑顔の彼が怖いのに。

「そんなに怯えないで。私は君に自覚をつけさせたいだけなんだ」





 彼の胸を押し返していた手は、彼の背中をひどく引っ掻いて、最後はシーツの上に投げ出した。物凄い力で奥を突かれて、まどろみに落ちても引き戻されて、喉はカラカラで声も掠れてる。脚に力も入らなくて、脊椎を登って来る快感に体を躍らせるだけになり果てていた。

「二度と男と酒なんか飲まないね?」
「ほか、のこも、」
「言い訳は聞いてない」

 他の子もいたよって、女の子も、グループで、って言わせてもらえない。太くて硬い、カリ高の彼のものに、気持ちいいところばっかりイジめられて、口が開いちゃって、舌もしまえなくなっちゃって、唾液が口の端から伝っていく。もう、謝るしかない。

「ごめん、なさい、もう、しない、から!っあ、許し、て、すぐる、」
「こら、一人でイかない。これはお仕置きなんだよ?分かってる?」
「や、イきたい、イきた、っあ!も、らめ、イく、イ、~~っ、イっちゃう、ごめんなさ、」
、」

 呼吸を荒くして汗を滴らせている傑くんに、優しく名前を呼ばれて、食べられちゃうって風に唇に噛み付かれて、それだけで甘くイってしまった。勿論傑くんは止まってくれない。でも、もっと。好きだからいいよ。好き。好きなの。こんなに好きなのに、分かんないみたいな態度はヤだ。不安がらないでよ。
 舌を絡め合わせて、力の入らない手足にどうにか言うことを聞かせて、傑くんを抱き締める。飲み会に行っちゃったのは、誘われてで、嫉妬して欲しかったからで、でもちゃんと彼氏がいるって最初に友達に言ってもらったし、もう行かないから。歌姫先輩に人数合わせだからお願いって頼まれた時だって、男の人相手と組む任務だって、怒らなかったのに。たしかに今回は怒るかな、って、ちょっとくらい怒って欲しいなって、言わずに行ったけど。私は傑くんのことしか好きじゃないのに。分かってよ。
 精一杯キスに応え、熱い舌と舌を絡め合わせて傑くんを貪る。傑くんもイきそうなのか、一層大きさを増したそれに容赦なく奥を抉られて、閉じていた目が思わず開く。傑くんも目を開けてて、安心感と幸福感に満たされながら何度も何度も揺さぶられ、酸欠で朦朧としたまま更なる絶頂へ押し上げられていく。

「っん、っは、く、――っ、」

 薄い隔たり越しでも彼が熱を放っているのが分かる。もっとちょうだいって、きゅんきゅん強請ってしまう。傑くんも射精しながら奥へ奥へと先端をなすりつけ押し込めてくれるから、ずっと降りて来られない。
 気持ち良くて、幸せで、あたまがからっぽっていうのは、たまらなくすてきなことなんだと錯覚してしまいそうだ。この体全部で、この頭全部で傑くんのことだけを考えられるの。すき。だいすき。わたしだけあいして。他の誰のことも見るの、ゆるさないし、わたしにもそうだって言ってよ。
 熱に浮かされながら、私は傑くんと目を逸らさない。傑くんと目を合わせながらイっちゃうのは、もう癖になってる。そうしてって、ずっと言われてきた。彼の真っ黒い瞳の中は、いつもより少しだけ悲しそうに見えた。そんな彼を見ていたら、自然に言葉が溢れ出す。

「…あの、ね。傑くん、なんでも、行っておいで、って、言う、から」

 ぽろ、となんだか分からない涙が零れると、ほんの少し目を丸くした傑くんが、親指で優しくそれを拭ってくれた。頬を寄せながら、どんな顔をするのかなあ、って漠然と思う。いつも感情を見せてくれないから、私を気遣ってしまうから、ぶつけて欲しかったの。

「もうちょっとだけでいいから、感情、ぶつけてほしい」

 傑くんは目を見開いてから、気恥ずかし気に目を逸らして、言いにくそうに、口を開けたり閉じたりしている。しばらくして、今までの全部に嫉妬していたよ、って彼は小さく呟いた。その声はしっかり私の耳に届いて、私をたまらない気持ちにさせる。どうしようもないくらい傑くんが好きって気持ちが溢れ出して、胸がきゅんってして、急に締めるな、って傑くんがくぅってした。
 頬に赤みがさしてじっとりとした目になっている彼の顔が下りて来て、優し気な雰囲気になった彼と、ちぅ、と唇を吸い合う。

「……私を嫉妬させた責任、最後まで取ってくれるね」

 …あれ、いま、完全に、終わったあとのいちゃいちゃタイムじゃなかった? …傑くんの表情は和らいだのに、下半身は全然和らいでない。…うそでしょ、あんなに出したのに? ……ごめんみんな、私明日はお休みします。

死に至る病とは嫉妬のことである