7  お願いだから校外でやってください我々は関与していませんしたくありませんからと突っ返された色相チェックしたいです書類に若干半ギレで学校に来た私は職員室に乗り込んで全員ぼこぼこにしたい気分だった。いいよ、もう、言われたとおりにするよ。放課後、あの子カラオケにでも誘うもん。幸いにも多分今は私にお熱だろうし。外におびきだしちゃえばこっちのものだもん。あれから全然交流ないけど。断られたらどうしよう。あらまあ。うええん。

 狡噛くんは今のところ問題なく打ち身だけだったそうだが、大事をとって休みらしい。お前は本当に大丈夫だったのか?と廊下で鉢合わせた時に駆け寄ってきてくれた宜野座くんが教えてくれた。彼の中で私への不信は薄れたらしい。私も早退して医療機関を受診したことになっていたのだったっけ。実際早退はしていたけども。大丈夫だったよ狡噛くんにもよかったら伝えて欲しいありがとうね、とお礼を伝え別れたら、ちらほらと騒ぎを知っていたらしい生徒たちが声をかけてくれた。心配してくれたらしい優しいなあ!狡噛くんの方を心配してあげて、私は禾生さんでもないし、そのうちこの事件が終わったらグッバイするだけの人だから。素直さで心が少し傷つくからやめて。なんか悪いことをしている気分になる。別段罪悪感は感じていないけど、なんかこう、なんかその…でもとにかくそのうち平和な日々がやってくるから安心してほしい。

「禾生さん、昨日は大丈夫だった?災難だったね。今日、放課後よかったら、ストレスケアにケーキでも食べに行かない?いいお店知ってるの。少しでも気分転換になるといいなと思って…」

 ラッキーだ!私から声をかけずともあっちから来てくれた!しかも一人だ!やった!

「ケーキ屋さん!今日は天気がいいからテラス席なんかもあったらとっても良さそうかも。色相も少しは明るくなるかな…楽しみにしてるね、ありがとう」

 どうしてそんな発想になったんだろうみたいな返しを無理やりした。だって窓から凄く身を乗り出さないと征陸さんに気付いてもらえない。もし雨だったら、雨だから雰囲気が出ていいね!とか滅茶苦茶なことを言ったと思う。
 でも昨日の今日でストレスケアにケーキ食べに行く災難に遭った女子生徒もめちゃめちゃ強くない?ストレスケアにケーキって些か強引ではないでしょうか、そんなことない?昨今の女子学生はっょぃの? まあふわふわ会話な感じなので私の回答は気にされないでしょう。とにかく窓から顔を出している私はコミッサちゃんを探している。
 あ、居た居た。コミッサちゃんは市民の味方だから、ほら、あっコミッサちゃんみっけーって手をぶんぶん降っても変じゃない。……ああ、だから左腕降り返してくれてるのかも…。筋肉痛になったのかも右腕…。でも付け根とか痛んでないかな、ちょっと心配だ。

「じゃあ、放課後に校門で待ってるね」

 と、私は放課後を彼女と約束することに成功した!ほぼ受動的に!わーい。おいしいケーキ屋さん!って!なんて平和な!教えてほしい!いや本当に!あなたを苺フィリングにするのよみたいなのはやめてねお願い。

***

 放課後、校門を出てぐるぐると例の廃棄区画に近づいていく。なんでぐるぐるって、街頭スキャナを避けるルートを彼女が使っているから。他愛無い話をしつつ、閑散とした裏道へ入ったところで、禾生さんって狡噛くんと仲良いよね、と彼女が私の顔を覗き込んだ。貞子かと見紛った。怖い。顔の造形は可愛い綺麗だけど。美人ほど怖いんだよ、可愛いほど怖いんだよ、綺麗なものは怖いんだよ。宜野座くんも狡噛くんもこんな風になったら超絶怖いのかもしれない。そうだね…。

「他の二人もそうだったの。私と似たような顔して狡噛くんを誑かした」

 小悪魔なのか悪魔なのか。彼女から離れ後ずさって、背中を後ろの建物につければ、まさかの前方から男が一名襲いかかってきたので、やっと俺のスタンガンが火を噴くぜ、と私は努力の結晶である内ポケットからスタ太郎を取り出し、呆気なく仕留めてしまった。いちへけっ! 目を見開いて立ち尽くしている彼女にもスタンガンをお見舞いし終了である。にへけっ! 呆気ない。
 ポケットを作った時、指に針が突き刺さった回数はまだ覚えているし、ドミネーターで犯罪係数を計測するべきでもあったけど、逃げられても嫌だし、まあ八割方潜在犯だろう。そうでなかったとしても、私が身の危険を感じたのでいいの。いいの?なんて勝手な監視官だろう。がさごそ胸からデバイスを取り出す。証明してみよう。ほら、私の監視官デバイスは私の色相はクリアカラーって言ってるから無問題。強引すぎるかもしれない仮説思考だけどまあいいや。帝塚さんに連絡しなきゃ。

「こういう事件はいつの時代も変わらねえなあ」

 後ろから、完全に伸びている男二名を引き摺って征陸さんがいらっしゃった。廃棄区画の潜在犯でも誑かしたんだろうか、あまりに危険だろう。もしかしたら相当男慣れしていたとか、なんなんだろう。なんであれ、人に危害を加えるような思想には同意できない。

「…ただただ被害者の人達に同情します」
「ま、これで学校ともおさらばよ」
「ほんとにもう…狡噛くん本人や他生徒、勿論伸元くんも、危害が及ばなくてよかったですよ」
「ありがとうな、